35話 杏華の想い その2
そうです、佐七さんのあの優しさはグッと来るんです。
しかもさりげないというか、天然な感じでいきなりガツンとやられるんですよ。
久しぶりにあえた時の、あの頭ポンポンは凄まじい破壊力でした。
まだクリスさんとセフィさんは気づいていませんが!あの優しさを見せてくれるのは、佐七さんが身内と認めた人だけなんですよ。
いわゆる特別ってやつなんです。
この事実を知ったときは、それはもうヘッドセットしながら身悶えしました。
佐七さん自身もあまり気づいていないようで、それがまた特別感を際立たせてくれるんです。
夜のあの時もなんというか佐七さんの優しさ爆発でした。
こちらの反応を感じとりながら優しく対応してくれて、しかもその感じ取ろうとしている空気が。
もう、私のために全力って感じでたまらないのです。
はあ、幸せです。
「はあ、幸せです」
「そうでスネ。モウここが別世界とかどうでもイイデス」
「だね〜、ボクもまさか左の字とこうなれるとは思ってなかった」
「古くからの知り合いとのことだが、過去にはこのようなことがなかったのか? 私が言うのもなんだが、三人とも初々しいというか、あちら方面の積み重ねがあるようには見えなくてな」
「ないですね。というか直接顔を会わせたのも、昨日がはじめてですね」
ゲームのキャラクターが本人の姿に近いから、あまり初対面て感じはなかったですけどね。
「なんと。だがそれならば、そこまで惚れているというのはなぜだ? 昨日まで顔を会わせたことがなかったのだろう?」
「巴とルルはわかりませんが、私は憧れぐらいは持ってましたよ。ただここまで気持ちが大きくなったのは、こちらの世界に来てからですね」
「ワタシも同じ感じデス」
「ボクもかな」
この世界に来てから、日に日に想いが強くなったんですよね。
冷静に考えると不思議ですね。
「それは多分、旦那さまが言っていた欲求のブーストが原因だと思います」
欲求のブースト?
「なんでも神々の空間にいる間は、色々な欲求がないというか止められている状態だそうです。それが外に解放されたときに、そちらの欲求も解放されるそうです。そしてその欲求、旦那さまの場合は性欲だったみたいですが、拘束されていた時間が長ければ長いほど強くなるそうです」
なるほど私達の想いも、10年分のブーストがかかってこんな風になっている可能性があるってことですね。
まあ、ブーストだろうがなんだろうが関係ないですけどね。
それよりも佐七さんのブーストの話のところで、クリスさんとセフィさんが赤くなったのが気になります。
「もしや、お二人が佐七さんのブーストを受け止めたのですか?」
「それは、まあ、そうですね」
「まあ、多分あれがそうだったのだろう」
佐七さんの性欲ブースト。
く、どれだけのブーストだったのでしょうか。
このなんとも言えない表情の二人。
それほどですか!?
「あのさ、話が全然変わるんだけど、さっきの第一夫人とかって話。ボクよくわかってないんだけど、折衝とかってなにするの?」
「そうですね。まずは旦那さまを誑かそうとする女性を消し炭にします。あとは不用意に近づく不貞の輩を消し炭にします。あとは旦那さまを騙そうと近づく者も消し炭にします」
第一夫人というのは、なんだか殺伐としたポジションなんですね。
「ちょっと待てクリス。巴たちも、今のクリスの話はおかしいからな。そのまま信じるなよ」
「おかしくありませんよ。セフィたとえば旦那さまが町を歩いていて、そのお姿に見惚れて、見るからに人の良さそうな旦那さまを誑かそうと近づく女性がいたとします。セフィならどうしますか?」
「サシチ様を誑かそうとするなど万死に値する。その場で吹き飛ばしてくれる」
巴もルルもうなずいています。
たしかに許せませんね。
私なら弓で急所を撃ち抜いてやりますね。
?
クリスさん?
「ただドラゴンである私は、旦那さまのお子を身籠ることができないでしょう。それだけはやはり悔しいですね」
「なるほどな、それは私も一緒だ。我ら飛天族も長寿であるが故に元々子どもができづらい種族。ましてや同族以外となるとかなり厳しい」
「私たちも同じような感じですね。聞いた話ではエルフという種族もセフィさんと同じで、子どもができづらく、同族以外となるとほぼ不可能らしいです」
それが全てだなんてもちろん思いません。
それでもほぼ不可能とまで言われてしまうと少し、いえかなり悔しいですね。
「ん、ちょっと待て」
「どうかしましタカ?」
「いや、サシチ様とルド殿の会話が私の警戒用の集音魔法に」
「それがどうかしたんですか?」
「あははははは」
セフィさん?
?
涙?
「大丈夫ですかセフィ?」
「ああ、大丈夫。さすがはサシチ様だ。いま聞こえた会話をみんなも聞いてみるといい、ほら」
セフィさんの手のひらに魔法式が展開しました。
この内容は……
クリスさんが天幕の外に向かって走ります。
私たちもそれに続きます。
ああ、今日はなんて良い日なんだろう。
昨日も幸せでしたが今日はもっと幸せです。




