263話 とある機兵乗り達の困惑
「先輩？」
一体奴は何者？
一体何をしたの？
ウェバスが押さえつけられて動けなかった。
「先輩？」
魔方？
魔方具？
それともウェバスと同じクジラの遺物？
「先輩！」
「っと、ありがとうパルシラ。助かったわ」
「大丈夫ですか先輩？」
「ええ、大丈夫」
「なら指令のところに報告に行きましょう」
「そうね、新たなクジラの遺物と余計な邪魔もの。報告しないといけないことが山ほどあるものね」
そうだ。
考えるのは指令に報告してからだ。
「指令、ラーヴァとパルシラです」
「開いてるよ～」
「失礼します」
「お疲れ様、二人とも。大変だったみたいだね」
「申し訳ありません、不測の事態が発生したため、作戦を破棄して撤退しました」
「いいよ、いいよ。二人がいた上で、それでもラーヴァ君が撤退を判断したんだ。よっぽどのことだったんでしょ」
「はい」
「その顔、余程の事ということか。わかった、後で報告書をお願い」
「わかりました」
「そんなに深刻な顔をするもんじゃないよ。少なくともあの音と歌が、クジラを誘導できることがほぼ証明されたんだ」
「ふーん、歌の意味がわかってるわけじゃないのか」
！？
「な、貴様」
「お前は、あの時の」
「道案内、ご苦労様」
……。
泳がされていたということか。
だが転移した私達を、どうやって追いかけた？
「えーと、君は？」
「司令、こいつがガウンティでの作戦の撤退理由です」
「へー、君がね。見たところただの普人族のようだけど、君は一体何者なのかな？」
なんだ？
こいつ、私達を見ていない？
「よし。貰うものはもらったし、お暇しますね」
は？
こいつは、何を言っている？
「うーん、よくわからないけど、ここまで入ってきてしまった君を、はいどうぞとは帰せないかな」
「それでは失礼しますね」
「だから帰せないって、言ってるでしょ！」
司令の投げナイフが、空中で？
まさか防いだというのか？
魔動機兵の装甲すら容易く貫く威力だぞ！？
「どうやらただ者じゃないみたいだね、だけどここは僕たちの基地だよ。そう簡単に逃げられると？ ってあれ？」
き、消えた？
「ど、どうやって？ 転移？ いや、そんな魔方具が使われた気配はなかった」
「司令、それよりもこの基地の場所がばれてしまいました」
「ふむ、困ったね。確か彼はガウンティにいたんだよね」
「はい」
「ならもう一回出てきてもらうだけさ。二人とも帰ったばかりで申し訳ないが、もう一度ガウンティに向かってもらえないか？」
「わかりました」
「わかりました」
「すまないね、気を付けて行ってくるんだよ」
奴が何者なのか知らんが、次は遅れをとらない。
「ドゥナラルーガ！」
……。
「あれ？」
「どうした？」
「ドゥナラルーガが出てきません」
「？」
「ドゥナラルーガ！」
……。
「駄目です」
どういうことだ？
「先輩のウェバスは大丈夫ですか？」
「ああ、試してみよう。ウェバス！」
……。
「出てきませんね」
そんな馬鹿な。
もう一度だ！
「ウェバス！」
……。
「ダメみたいですね。一体なにごとでしょうか？」
「わからない。兎に角、一度司令に相談だ！」
