160話
この家が目的の場所みたいだな。
しかし、命をかけてまで紹介したい人ねぇ。
ん、なんか聞こえてきたな。
「そんなにゴロゴロばかりしていては、体に良くないですよ」
「ならこうするー」
「背中に乗り掛からないで下さい」
「んー、養分補給ー」
「ちょ、こんな時間からなにするんですか！」
「どうせ誰も来ないんだ。時間なんか関係ない！ だから養分補給ー」
「って勝手にベルトを外さないで下さいよ」
「大丈夫、大丈夫」
「いい加減にしてください！」
「んべっ」
「もっとしっかりしてくださいよ」
「いいんだよ、もう。私は長い間しっかりしていたんだ。やっとその役目から解かれたんだ、いままでできなかった分をダラダラと謳歌するんだー」
「家では以前からダラダラとしていたでしょう」
「細かいことは気にしないー」
この声、もしかして。
だが雰囲気が……。
「失礼します。中の者と少々話をしてまいりますので、こちらでお待ち下さい」
「わかりました、どうやらお取り込み中のようですしね。出直しましょうか？」
「いえ、直ぐにお呼びしますので。少々お時間をいただければ」
「わかりました、ではここで待たせていただきます」
「ありがとうございます。それでは失礼致します」
……。
「げっ、ゼラマセン！ ま、まて。話せばわかる！」
……。
「お待たせいたしましたヒダリ様。どうぞ中へお入りください」
やっぱりこの人だったか。
しかし、最初にあったときとえらい違いだな。
元々はさっきのが素なのかね？
「規則正しい生活、生活の乱れは心の乱れ。規則正しい生活、生活の乱れは心の乱れ。規則正しい……」
だ、大丈夫なのか？
ゼラマセンさん、なにしたんだよ。
「ザーバレナ様、ヒダリ様をお連れしました」
「はっ、な、貴様はあの時の！」
「ザーバレナ様」
「ひ」
「お客様です」
「ん。そ、そうだな、よし……。お見苦しい所をお見せし、申し訳ありませんようこそいらしてくださいました」
うん、まあ、うん。
素晴らしい変わり身だね。
「ヒダリ様、ご紹介したいと方というのはこちらのザーバレナ様なのです」
？
ザーバレナさんてここの統括だろ？
「ザーバレナ様はヒダリ様のいらっしゃった件で、前職を解任されまして」
街もそれなりに破壊されたし、結構な金額の金も踏んだ繰られてるからな。
最高責任者という立場上、あり得ないことではないわな。
「解任されたとは言え、あれだけの組織の最高責任者まで勤めた方がこのようになにもせずゴロゴロとしているのは……」
「な、ゼラマセン。何を勝手に」
確かにもったいないってのはわかるんだが。
当人がゴロゴロしたいっていうなら、しょうがないんじゃね？
