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144話 嵌められて

 ドラヤナンさんは無事に帰れたのかね……。


「どうかしましたか?」


「いえ、何でもありません。それよりもエチゴラさん、毛糸や糸の苗か種はありますか?」


「ええ、ございますよ。色や種類はどうされますか? いかほど用意いたしましょうか?」


「適当に」


「ヒダリさま、そんないい加減な注文の仕方は駄目です!」


 おおう。


「ケイト様に確認はとられたのですか?」


「いいえ」


 なんか。


「レイラ様かナルディスナ様には?」


「いいえ、確認していません」


 説教されてる。


「その植物の特性やヒダリさまの村の土との相性は?」


「知りません」


 子どもみたいだな、おい。


「それでは多くの種が、無駄になるかもしれないではないですか」


「はい、その通りです」


 ナセルリナさん、商売の話になると豹変しすぎだろ。

 エチゴラさんは何で嬉しそうなんだよ。


「ではエチゴラさん、今の話はケイト達がいる時にと言うことで」


「わかりました。それでナセルリナ、いつからヒダリ様の村に行くつもりですか? 奥様達からは是非にと言われていたそうじゃないですか」


「会頭、その件なのですが。ヒダリさまからの提案で私と会頭を、ヒダリさまの村に招待していただけるそうです」


「ほう」


「そこで村を見て私自身が判断しろとのことです」


「ナセルリナ。私の言い付けには従わず、あなた自身が選択すると?」


 エチゴラさん、なかなかの圧力だねぇ。

 流石、大きな商会の会頭だ。


「はい!」


 それでも気にしないのか。

 ナセルリナさん、ただの天然なのか案外大物なのか。


「ものとコトの善し悪しは己を信じろと、教えられましたから」


「そうですね、その通りです。ですがあなたは商会の会頭である私の指示に逆らっているのですよ」


「たとえそうだとしても、私は自分のこの目で見て自分で決めます」


 いや、ちょっと待とうか。

 ナセルリナさん、熱くなりすぎじゃね?

 話の展開がおかしなほうに行ってるような。


「わかりました、ではあなたは今を限りにネルバ商会の人間ではありません」


 は?

 いきなり解雇通告かよ。

 なんなのこの展開?


「わかりました。いままでありがとうございました!」


 いや、わかんねえって。

 ちょっと冷静になろうか。

 なんなのこの暴走っぷりは。


「ではそういうことなので、ヒダリ様。私の大切な姪をよろしくおねがいしますね」


 は?


「現地を見て、やらないという選択肢はあの子にはないでしょう」


 今までの展開はなんなんだよ。

 なんで色々言って解雇にしたんだ?


「この街でネルバ商会に睨まれた者を雇う場所など、ほとんどありませんからね。戻るところのなくなったかわいそうな姪を、まさか放逐したりはしませんよね?」


 なっ!

 くそ、ナセルリナさんの天然に翻弄されてるうちに。

 このオヤジ嵌めやがったな。


「別に妻として迎え入れてくださいなどとは言いませんよ。ただ側に仕えさせていただければ十分です」


 側にねぇ。


「身内の贔屓目と思われるかもしれませんが、ナセルリナの商才は私を凌ぐものがありますよ」


 レイラさんとナディも認めてたし、そんなもんなのかね。


「まあ、若干天然なのと鈍感な所は有りますが」


 若干?

 かなり天然ですげぇ鈍感だったぞ。

 ドラヤナンさんなんか天然と鈍感の会わせ技くらって、放心してたからな。


「叔父さん、ヒダリさまなにをお話されているんですか?」


「いえいえ、なんでもないですよ。それよりも折角招待されたのですからヒダリ様の村へ向かう準備をしましょう」


「はい!」


 なんにしても、お気に召してもらえるといいけどな。

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