勘弁して下さい女神様-2
少し休憩を挟んで心を落ち着かせて話を続けた。
つまりシーズンとは発情期みたいなので、この世界は一年に一回と言うか、一月程月の出ない時期があって、それが一年の区切りだそうだ。
で、そのシーズンで最強の個体が女性化して子供が出来ても出来ていなくてもそこで解散。
子供が出来てたら女性化した個体が育てるけど、独り立ちする頃にはその個体は亡くなるそうだ。
戦いで酷使した身体が作り変えられて出産して死んじゃうとか、最強とかならない方がいいんじゃ無いの?
で、独り立ちした純血種は戦闘能力を親から継いでて、親には無い知性も持ち合わせると。
ならその純血種が纏めれば良くない?
態々何百人も集めて召喚とかしなくても。
シルジットさんに聞いてみたら頭の痛くなる答えが返ってきた。
「純血種の方々は弱い者に興味が無いそうです。
強さを求めて最強になっても行き着くところは死なら、興味のある事を楽しみながら静かに過ごす事にされているそうです」
悟りを開いた世捨て人かよ!
気持ちは分からなくも無いけど、親とのギャップが。
何でこんなにチグハグなんだろう。
しかし気になるのが…
「シルジットさんとても詳しいんですね」
「ええ、知り合いに純血種の方が居ますから教えていただきました」
薬草採りに夢中になって森の奥まで入ってしまい途方に暮れた時、一人の純血種に出会い、敵意が無かったので色々聞いてみたら、相手も他種族に興味があったそうで、そこで情報交換して交流が生まれたそうだ。
「その方に人族を襲わないように出来ないかと伺ったところ、
一瞬なら良いけどずっと束ねるのなんて面倒くさいからムリ、自分より強い奴の言う事なら従うだろうから、自分達より強い奴をトップにすれば?
とのアドバイスを頂き、それを王に報告しコウイチ様を招く事となりました」
その純血種の気持ちわかる、ずっと学級委員とか、ずっと生徒会長とか考えただけでも面倒だよね。
結局トップって皆を纏める雑用じゃん。
権力欲のある人なら良いけど、一般人としては面倒だよね。
その面倒ごとを押し付けられるのか…。
『俺様魔王だせ!黙って俺に従いな‼︎Fooooooo‼︎』
とか思えるわけないし。
これ人選ミスだよ、そんな人を連れて来るべきだったんじゃ無いんですか、女神様。
*****
「いえ、それじゃあダメなんです」
うおぅ!びっくりした。何でいきなりこの空間?
「心の中で強く私に呼びかけたので、それが祈りとなりこちらへ呼ぶ事が出来ました」
勝手だ。非常に勝手だ。
「この際色々聞かせていただきます。
何で権力欲がある人ではダメなんですか?
そもそも純血種が纏めれば済む事なんじゃないですか?
何で雄が女体化するんですか⁈」
「え?そこ大事?」
「大事です!女性は大事です!綺麗なお姉さんは大事です‼︎綺麗なお姉さんの元が戦闘狂の男なんて以ての外です‼︎‼︎‼︎」
「え?この世界に連れて来た時より凄い反応?これって地球で言うヒクワーって状態?」
「なんですか、ゴブリンが進化して他種族とか。
つまるところ綺麗なお姉さん魔族が居ても元はゴブリン?あり得ないですよ!」
いや、その後ついつい熱く語ってしまった僕でした。
「権力欲のある者だと人族と戦争が起こる事もあり得るので絶対にダメなのです。
純血種は確かに力と知恵が有りますが、他の種や人族を支配する様な考えを持つと、今の力試しの戦いから戦争になる恐れも生まれますので、純血種の方々には支配欲が気薄になる様にしています」
ある程度落ち着いたので話を進めて貰った。
「とにかく戦争だけはダメなのです。魔族、人族だけではなく、動物や植物、星にまで負担がかかります」
「言いたい事や考えは分かりますけど、もう少しバランス調整とか、戦争にならない様上手く導くとか出来ないんですか?」
よくやってたアプリゲームだって、偏りが出て来るとバランス調整のアップデートとかよくやってたんだし、上手いこと調整すれば良いんじゃないのかな。
「まだ私の経験が足りないと言うのも有りますが、力、知恵、支配欲、権力欲などを与えると戦争は避けられないのは他の神々も頭を悩ませているのです。
どんなに経験を積んだ神でも戦争の無い世界は作れていないと言っていい状況なのです。
貴方の居た地球の神も新しく生まれる命からは欲を薄くする様にしてバランスを取っていますので、参考ににして種族毎に知恵と力を振り分けてみたのです。
でも結果は力の無い人族は協力して生きていますが、知恵の無い魔族が纏まらずこう言う結果になっています」
何だかちょっと聞き捨てならない様な事が…まぁもう地球に居ないし、戻れもしないからいいか。
「まぁ、引き受けていますから魔王目指しますけど。戦争反対は同意できますし」
魔族の人や純血種が纏めてうっかり支配欲などを持つと戦争になるかもしれないから、人である異世界を召喚したと言うのが正解なのか。
神様だけあって色々考えているんだってのはわかる。
わかるけど何だか色々納得いかないと言うか納得出来ない事が…
まぁ言っても仕方ないか。
この女神様が残念なのは最初からだし。
「それではそろそろ元の場所へ戻します。
この世界の事をよろしくお願いします」
「はい、出来る範囲で頑張ります」
脱力してがっくりしている僕の耳に最後に聴こえて来たのは…
「あ、純血種は最終進化なので女性もいますよ」
え?ちょっ!それ大事な事‼︎
「詳しくーー!」
「⁉︎何をですか?」
どうやら寝ていたらしい僕が叫びながらガバッと起きたので、シルジットさんとスケエリアがびっくりした顔でこちらを見ていた。
「あ、いや、その、何でもないです。寝ぼけたのかな?あははは…」
ヤバイ、恥ずかしくて顔が赤くなる。詳しい事なんて言いたくないから寝惚けた事にしておこう。
いや、本当にもう色々な意味で勘弁してくださいよ女神様。