##24 パールとウィ―ルと
まだ長くなりそうだったイシャスの1日は、夕食後に寝息と共にあっさりと終わった。
イシャス本人は、ルシスやウィ―ルに聞きたいことがあったようだが、ルシスが告げた、イシャスの一日のスケジュール変更にイリアの様子が不穏になり、あわてたルシスがフォローしている間に――――という訳で、父ルシスに、ベットへウィ―ルと一緒に運ばれたイシャスは夢の中である。
現実の一日は終わったのだが――――――――
(――――あれ? キラキラした草花に囲まれた、キラキラした、庭にあるみたいな泉が目の前にあんだけど。――キラキラしてるけど目に優しいキラキラだなぁ。キレイだし、心地いいし、なんか知ってる感じの――って!)
『パール! 起きたのかー?』
(泉がゆれてパール出て来たよ。今までと変わんないなぁ。ん~で、どこだここ?)
『ううん。まだねてるの。イシャスもねてるのよー』
『――え。じゃあオレの夢? ここ夢の中かぁ……それにしちゃー感覚的にずいぶんリアルだけどー』
『あ、わたしの住み家?だからリアルでいーのよ』
『――――夢じゃないのか? つーかパールの住んでるトコって…オレのデコじゃん。オレのデコの中って、こんなんなってんのかー!?』
『ん~と、魂のほうのイシャス? それで……イシャスの額の印の中ではあるけど、おでこの中ではない、のよ?』
『……疑問形なのは説明がむずかしい、で、いーのか?』
『そうなの! あたりよ、イシャス!』
(パールはオレの周りをクルクル回って、ぽっぺに突撃~……ん?)
『まだねてるって言ったよな? 寝たオレ?がパールのとこ来て?今パールと話せてるってコトは……オレのデコっつーか、印とやらから出られないのか?』
『う、ん。――今はそうなの』
『……今は? 気になるから詳しく――や、話せる事だけカル~く教えて。一番気になってたパールが無事なのはわかったしー』
(それに、ヤバイ事聞かされても困るからなぁ)
『――えへへ。イシャスはイシャス~』
『オレはオレ~? ま、いーか……パール、オレの頬にデコぐりぐりしてないで話し~。軽くな』
(魂?なのに感触すんのはなんでだろ?)
『わかったの。軽く?ね。んーと……私、精霊としての格が急にあがって、暴走しそう?だったからイシャスの額に入ったの。そのあと色々あって、今は落ち着いたの。だけど、創造神様からのペナルティーでまだ外に出られないのー』
『――は、はは。そーなんだ。タイヘンだったなぁ……』
(までしか言えナイ。色々あったって事も突っ込まナイし、ペナルティーには突っ込めナイ。創造神様って! はぁ~。軽くって念押ししといてよかったなぁオレ。軽くてもすでにヤバそーだけど~)
『そうなの! でも、イシャスと繋がり?が出来てたから、がんばれたし無事なのよー! なのに、そのつながりの元の、精霊になった名づけがずるいって緑の大精霊様が~――結局、「我が欠片にも機会を」と、おっしゃって、パポス様が私より「厳しい条件になるが――良いだろう」って。大精霊様の物言いって、その時の私の状況と関係ないと思うの。同じ精霊だけど、意味がわからないのー。水と緑の違い? それとも大いなる方とは何か違うの? パポス様も私に、「我が子たちの熱心な願いならば、機会だけは平等に与える。条件を付け機会を与え――多少大目に見はしたが、願いを叶えしパールよ。世界を構築する我らが直接、人間と共に在ることは特例なのだ――」うんぬん~、って、自重するようにおっしゃるのよ。それで――――』
(――――――――…………って、ヤバイのはパールの口の軽さじゃーーん!! 自重しろー!)
朝の一鐘と同時に、スイッチが入ったかのようにぱっちり目を覚ましたイシャスは、口癖になりつつある、「マジかー」と言い、ゆっくり上体を起こす。
すると、イシャスの左の鎖骨の上で、根の手足を大の字にしてくっ付いていたウィ―ルがずり落ちる。
「朝に――って、おっと……」
言葉の途中で太ももに落ちてきたウィ―ルが転がらないよう手を添えたイシャスだが、ウィ―ルの閉じている目をみて首を傾げる。
「ウィ―ルって寝るんだ…妖精になったからかー? オレのイメージだと精霊はもちろん妖精もねなそーなんだけど」
「――オハヨウ?イシャス」
「おっ、はよーウィ―ル。おはよーっつーコトは、やっぱ寝てたのかー?」
目を開け、つぶらな瞳をイシャスに向けて言うウィ―ルに、どうやって目を閉じ開けたのか、その不思議仕様もスルーし、「オハヨウ?」の疑問形もスルーしたイシャスは普通に会話を続ける。
朝起きてから夜ねる前までの日中の長い一日だけではなく、多分、眠ってから今起きるまで、夢の中でも長い一日を過ごしたのだろうイシャスは、また更に色々と慣れたようだ。
「タブン。 エイヨウ、マワスカラ、ネテルヨウナ、カンジ?」
「ああ、なるほど。ニュアンス的にはねてたのかー」
「ソウ!」
「うん。んで…夜えいよーまわすって、もしかして植物的なアレかー?」
「ソウミタイ。カラダ、ツラレテル?」
「ベースが薬草だからなー。……でも、顔が出来たとか抜きで、ビミョーにオレが落とした薬草とちがうんだよなぁ」
「ソレ、カケラノ、ウィ―ル、マザッタカラ。アト、イシャスガ、コーテイング?シタ、マリョク、エイキョウアル。ウィ―ル、ソダツミタイ」
「へぇー。つー事は……唯一無二の薬草妖精か。カッコイイじゃーん!」
「――……ソ、ウ?」
「ああ。成長も進化みたいで――ん? 育つのに必要な栄養ってなんだ? やっぱ日の光とかかー?」
「キホン、イシャス」
「――オレが栄養源……」
「? マリョク、ダヨ?」
「や、わかってた。わかってたケド、聞いて安心した~」
「キヒヒッ」
「――――まてまてまて、今の笑い声か? ウィ―ル」
笑い声と思われる奇声を発したウィ―ルに、イシャスは一瞬固まったあと、両手でウィ―ルを自分の顔の前まで持ち上げ目を合わす。
「ウ、ン。タブン…ヘン?」
ウィ―ルはイシャスの、嬉しそうでもあり、嫌そうでもある複雑な表情を見て、首を傾げるように葉を傾ける。
「あ、う~ん。ぶちゃけヘンだな。――って、ウィ―ルが笑った事はスゲー嬉しいぞ!」
ぶちゃけたイシャスに、葉をくたっとさせ、しゅんとした様になるウィ―ル。
それを間近で見て、慌ててイシャスはもう一方の言葉を続けた。
「ホント?」「ああ」「ヘン、ハ?」「んー、キモいけど気味悪くはナイな。キモカワくらいか?」「――」 等々、やり取りを続けたイシャスとウィ―ルは――――――
「――んじゃあ、他の笑い方探すのはいーけど、一番ウィ―ルがしっくりくる笑い方でな。もちろんキヒヒッも含めてだぞー」
「ン、ワカッタ。 キヒヒッ」――――――と、結果が出た結果で終わった。




