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##16 増やしてたべたい 前

 イシャスのお目当ての山菜は、ロザリアの好物なだけあり数種あるが、一ヶ所にまとめて植えられている訳ではないので、どの山菜にしようかとイシャスはプライベートエリアを見渡す。


 サロンと違い、石でもレンガでもない乳白色の素材で出来た床と、やはり乳白色の花壇のような仕切り。

 薬草類は、通常より高く作られた仕切りが、種類別になるように区切られていて、そこに植えられている。

 その高さはイシャスの肩ほどなので、イシャスからすれば見渡す限り緑になる。

 機嫌がよさそうな顔になるイシャスを見るに、それがこの場所を気に入っている理由の一つでもある様だ。


『ロザリアこないのー』


「あー、リリーとあの調子で話してるかー、アレじゃね?魔力効果っーか、表情の方かなぁ……持ち直したけどショック受けてたじゃん。オレが居たからか極力流してたみたいだけど、居なくなったからー、ちょっとブレイクとか」


『イシャスはふたりに気を使って、こっちに走ってきたの?』


「や、純粋に座ってんのあきた。魔力(あの)話の後くだけて素が出たからか、根掘り葉掘りきーてくるし、話もとぶし、ちょー長かったじゃん。どーせ長いならオレ的に錬金術の話しきくか教えてもらうかしたかったなー」


『心配してたのにイシャスはけっこうドライ?なの』


「えー、だいじょぶそーだったろー……まぁ、ロザリアもリリーも若干状態異常(ぱにっく)だったケド、オレも昨日の夕方からずーーっとそーだから問題ナシ?」


『――えっ、と。じゃっかん……プチパニック? ずっとプチパニックって問題ないの?』


「時間がたてば慣れるたぐいのだからなー。なんか薄ソワソワして落ち着かない的な? オレもゆっくり考えたり、パールとじっくり話したりしたい気はあるんだけど……」


『――だけど?』


「考えた方がパニくりそー」


『あっそうなのね……わたしとじっくり話す方は?』


「オレのパニくる燃料ぶっこみ続けてんの、ぶっちゃけパールだからなぁ」


『うっ』


「――ま、今はだけどー。……それに、わざわざじっくり話す時間とらなくてもさぁ、ふつーに話すだけでも、そのうちじっくり以上になるだろ。オレの一生分時間あるんだしー」


『―ん、うん。そうね、そうなの』


 泣き出しはしなかったが、罪悪感と嬉しさに泣き笑い状態でこらえているパール。

 イシャスはそんなパールに、言葉にするのが難しかったのか、優しいエアー()()()()で意を示す。

 それを受け、にこっとしたパールは調子を取り戻す。

 二人にしか通じない何かが、すでに出来つつあるようだ。


『――イシャスは山菜なにとるのー?』


「やっぱ王道にわらびとか? ―や、リリーが教えてくれた中にわらびなかったっけ。ん~、確かゼンマイと、それに似たふたつ…わたがない赤と青? の~チジミじゃなくてー……思い出せないのはいーか。あーあと、しっかりした大葉みたいのと、ウドと、タラの芽と、なんだ? タラの芽みたいな木の芽、の7種類だったかな」


『イシャスー。チジミじゃなくて()()()なの。()()()()()()()()ね。大葉みたいなのは()()()で、最後のは()()()()()なの』


「あーそうそう! こごみだった。なんで赤と、しかも青?って口に出して思ったけど、区別する呼び方かぁ……後のはイマイチ耳慣れないからコッチの山菜か? それか前のオレが知らなかったとかかな」


 イシャスは少し前に自分で言った通り、刻が経ち()()()来たのか、オレ魂から前のオレへと言い方が変わっている。

 パールがイシャスの記憶――――いま読んでいるのか、当初パールに流れ込んで来たものを、イシャス(いわ)く検索しているのかはパールにしか分からないが――――それを使っても、当たり前のように受け止めてもいる。

 これからも少しづつ慣れ、パール共々変わっていき、()()()()()()()()いくのだろう。 パールもまた――。


『んーと、イシャスが覚えてないだけで、一回は間接的?に見聞きしてるの。こごみは数回なの』


「ああ、そーいやパールが最初に言った山菜、アッチの言葉だったもんなー」


『なの。あ、でもね、わらびとゼンマイは採りに行ってたみたいよ』


「へー。あー、なんかうっすらそんな気する……だからゼンマイ見てリリーに聞いたのかなぁ。――にしても、ロザリアの好物がアッチのと同じ山菜とか~って、アレ? 山菜ってメンド~なアク抜きすんじゃなかったっけ。特にゼンマイ……世界違うとチガウのか?」


『灰汁がどうかはわからないの。でも、パルポルス(こっち)の自然物は基本的に魔力もってるから、あっちとまったく同じじゃないと思うの』


「そーなんだ。…魔力――うん。ほわほわな()キラキラってカンジ」


 パールと話しながら、なんとなくゼンマイの前に来ていたイシャスは、ゼンマイはもちろん周りの薬草を見て、ふわっとした魔力の感想を言う。

 どこを見てもキラキラしていて(まぶ)しかったのか、イシャスは無意識に()()のをセーブしていたようだ。


「まーロザリアが来たらわかるし、来ないと採れないんだし、いーかー」


『――――お庭でもそうだったけど、約束事があるのね』


「約束事っつーと、なんかカタそーだなパール。オレが約束したのって、要はオレの安全のためだったり……後は人のもの勝手にいじらないとか当たり前の事だぞー」


 そのイシャスの言葉を聞いたパールは、『ん~と……』と、何か考え込み始めた。

 それを見てパールに話しかけようとしたイシャスだが、丁度やって来たロザリアに声をかけられる。


『パール、あとで聞くからな』


『――ん~……』


 初めて念話を意識したイシャスの言葉はだが、パールに上の空で答えられる。そんなパールを横目に、イシャスはロザリアへと振り返った。






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