いきなりの初戦闘
光に包まれ、思わず目を瞑るアキラだったが再び目を開けるとそこは一面緑色の広い草原だった。
「ここが、異世界…なのか…?」
アキラはポツリと呟いた。
「僕はここからどうすればいいんだ…?」
とは言ったがとりあえず町がある筈だと思い、アキラは手近にあった枝を拾いそれを倒した。
枝が指した方向はアキラから見て左。
「左に行ってみよう。」
と、石橋を叩いて粉砕してしまう様な性格のアキラらしからぬ曖昧な決め方で行き先を決めた。どうやらそれほど混乱していたらしい。
暫く歩くと多少舗装された街道のような場所へ出た。
(ふぅ、結構歩いたなぁ…けど舗装された道があるってことは町は近いのかな?)
と思っていると、道の向こうから何台もの馬車が走ってきた。そして馬車の行列はアキラの目の前に止まった。
「オイ、あんた町へ行こうとしてんのかい?見たところ別の国から来た感じだが、乗っていくかい?」
と先頭を走っていた馬車に乗る男がアキラに話しかけた。
(この世界で初めて人との会話だ!あ、でも言語は分かるんだ、良かったぁ)
「い、良いんですか?」
と内心少し焦っていたアキラだったが異世界でのファーストコミュニケーションは成立した。
「あぁ良いぜ、俺達は商人の護衛で町まで向かうからそのついでだ」
そう男は笑顔で言った。
(悪い人じゃなさそうだね)
と思い
「ありがとうございます!」
そうアキラは言った。
「まぁ町までの付き合いだが、よろしく。俺達はD級冒険者グループの〝餓狼の牙〟そんでそこのリーダーのレントと言う、よろしくな。あんたの名前は?」
男、レントはそう言った。
「僕の名前は宮本アキラです。よろしくお願いします」
するとレントは驚いた様に
「あんた、家名があるなんて貴族か何かかい?」
アキラは
「貴族ではないですけど、その何というか僕、異世界から来たんです」
と言うとレントは更に驚き
「あんた迷い人だったのか、こりゃ珍しいな。まぁ町に着いたらギルドにでも行ってみな色々教えてくれると思うぜ」
そう言った。
(ギルド、か、何があるんだろう?)
アキラは今後のことに悩みながら馬車に揺られた。
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暫く揺られてると突然馬車が止まり、大きな音と人の悲鳴が聞こえた。驚くアキラだが、そんなアキラを他所に馬車の外から
「ば、バカな!!こんな街道で亜竜だと!?」
とレントの声が聞こえた。
(え、何が起こってるんだ!?ワイバーン!?魔物!?とにかくヤバイだろ!?)
とアキラは馬車の中で固まっていた。
「ワイバーンはB級相当の魔物だ!!俺達じゃ手に負えねぇ!積荷捨てて早く逃げるぞ!!」
レントの叫び声が聞こえた!
(は、早く僕も逃げなきゃ!)
とアキラは慌てて馬車の外に飛び出した。
そしてアキラとワイバーンの目が合った。
ワイバーンは一直線にアキラに突進して来た。
「ヤバイ!ヤバイ!死ぬっ!死ぬって!」
アキラは本能的に真横に跳び、その直後アキラが乗っていた馬車の荷台が木端微塵に砕けた。
「アキラ!!早くこっちの馬車に乗れ!!」
とレントがアキラに向かって叫ぶが既にワイバーンはアキラ目掛けて再度突進して来た。
死物狂いで走るアキラだが、体格が違い過ぎる故にもう差はほとんど無い。
そしてアキラは足が縺れその場に転倒した。
「アキラぁーーーー!!」
とレントが叫び、目をギュッと瞑るアキラ。
その瞬間アキラを中心に紅いオーラがゴウっと音をたてて吹き出した。更にオーラがワイバーンの突進を止め、後退させた。
そしてそのオーラが僅かに収まり中心に立つ人物はアキラだった。しかしその外見は先程までのアキラとは大きく離れていた。
純日本人のアキラの黒髪黒目は真紅の髪になり、瞳の色は金色となっていた。
そして変化したアキラはワイバーンを見つめ呟いた。
「さぁ戦うぜ」
と
まず動いたのはワイバーンだった。
アキラを噛み殺さんと鋭い牙を剥き出しにし襲いかかってきた。
アキラは向かってくるワイバーンに獰猛な笑みを浮かべ、拳を振りかぶり、その鼻面に拳を叩き込んだ。
ズドンっ!!
と凄まじい音がして、ワイバーンが仰け反った。しかしアキラの拳による連撃がワイバーンを襲った。
「ヘイヘイヘイ!!トカゲよぉ!?どうしたよオラァ!んなもんかぁ!?アァ!?」
と地球にいた頃のアキラとは似ても似つかないような言葉と拳の連撃でワイバーンを殴りまくった。
そして、突然ラッシュを辞めると
「魔剣創造」
そう言うと自身の周囲に迸るオーラからその真紅の色をそのまま映したような刀が一振り現れた。
そしてその刀を大上段に構えると一刀の下にワイバーンを切り伏せた。
アキラはつまらなそうに
「これで終わりかよ、足りねぇなぁオイ」
そう言った途端紅いオーラが霧散し元のアキラが現れた。
そして
「う、うわぁぁぁ!!何だよコレ!」
と情けない悲鳴を上げ、腰を抜かした。
こうして異世界でのアキラの初戦闘は終わった。