8話 運命との対話
―明日風見さんに話を聞こう。
そう思って寝たのだが幸い、と言うべきか最悪の事態にはならずに夜が明け、目が覚めた。
そして俺は準備を終えて、何事もなく、学校へついた。
「おはよう、康大」
修が眠そうに言う。
「ああ、おはよう、修」
「あの……」
後ろから突然、歌葉に話しかけられた。
「うおっ?ど、どうしたの?風見さん?」
ー何か歌葉がおかしいな……
「昨日……大丈夫だった……?」
歌葉が不思議そうな顔で聞いてくる。
「うん、大丈夫だったよ、ありがとう、風見さん」
ー一つ……一か八か聞いてみるか……
「な、なら良かった……」
歌葉が顔を赤らめながら言う。
ーよし……いくぞ
「あのさ、風見さん一つ聞いてもいいかな?」
「うん、何……?」
歌葉が可愛らしく首をかしげる。
「風見さん、その、間違えだったらいいんだけど……別の世界のような所にに行ったことはない?」
「……っ!?」
歌葉が珍しくビックリしている。
ー図星……か?
「風見さん、ある?」
歌葉が困った顔をしている。
「わ、わからない……でもね?不思議なことはあったよ……?」
「どんなことがあったんだ?」
「ちょーっと、悪いねお二人さんホームルームが始まっちまうよ、座った方がいいぞ」
修が申し訳なさそうに言う。
言われて周りを見渡すと、周りの人たちはほとんど座っていて前後で会話している者や、こちらを見ているものもいる。
「わりぃ修、風見さん、今日昼は平気?」
歌葉が考えるような仕草をして、
「美癒ちゃんがいてもいいなら…」
と、了承してくれた。
「大丈夫、じゃあ昼で」
それを伝えると、先生が入ってきて
「お前ら~座れ~、雨原、早く座れよー」
と怒られてしまった。
席に座ると、修がこっちを向いて「お前大胆だねぇ、昼誘うなんて」
ニヤニヤしながら言ってきた。
「仕方ないだろ、パラレルチェンジが起こった時の参考にさせてもらうんだから」
「ふーん?」
「信じてないだろ修……」
その会話を最後に昼まではあっという間に過ぎていった。
―昼休み。
「うたはー」
「美癒ちゃん……今日はこの二人も一緒なの……」
「つ、ついにうたはに私以外のともだちが…?」
「み、美癒ちゃん⁉︎」
すると突然修が、
「えーと、そこの君。」
「みゆでいいよー」
「美癒、この限定メロンパンをあげるからお話ししないか?」
「め、めろんぱん…?しかもげんてい…?」
「そうだ、さぁ、話をしよう。」
「いいよー!!」
交渉が終わると、修がこっちを向いてウインクをしてくる。
ーあいつ……子供あやすのうまそうだな……
「さ、風見さん、何があったのか教えてくれないか?」
「う、うん……」
―運命との対話が始まった。
「わ、笑わないでね……?」
「うん、笑わないよ」
歌葉は恥ずかしそうにうつ向きながら語り始める。
「この高校に入って結構すぐの話なんだけどね……突然夢の中に目の前に私が出てきたんだけど……」
「……っ!!やっぱりか……⁉︎」
「なに……?どうしたの……?」
歌葉が心配そうにこちらを見てくる。
「悪い。続けてください。」
「じゃあ……それで何かと思ってたら話かけられて……『ふーん、これがそっちの私なんだ、まぁ、焦らないで頑張ってね?うたはちゃん?』って言われて……私、何の事か分からないままそのまま学校に行ったの……そしたら……知らない子達から話かけられて……」
歌葉が泣きそうになりながら話す。
ー見てられないぐらい傷ついたのか……?
「か、風見さん嫌ならいいんだ」
「いやじゃないの……ただ……」
「ただ?」
「また……あったらやだなって……」
歌葉がもう泣きそうである。
「そう、だよな……」
「ごめんね……?続き話すね……」
悲しそうな顔をしながら話そうとしてくれる。
「頼む……」
「それで……『歌葉今日静かだね~珍しいね』って言われて私は『あなたは誰?』って聞いたの…そしたら『どうしたの?今日歌葉変だよ?』って言われて……こんな会話をお昼ぐらいまで続けてたら……」
「続けてたら?」
「何にも音が聞こえなくなって……世界から色がなくなってね……?もう一回私が目の前に出てきたの……」
―信じられないよね…と、歌葉が苦笑しながら言う。
「聞いてくれ、風見さん、俺も同じことがあったんだ」
「……え?」
歌葉がこちらを見上げてくる。
「昨日、倒れてただろ?」
「うん……」
「あの前まで、俺は……俺は、別の世界……いや、別じゃないな平行世界パラレルワールドにいたんだ。」
「パラレル、ワールド……」
「分かるかな……?」
「うん……一応分かる」
「その世界の修が教えてくれたんだよ、この現象パラレルチェンジについて」
「パラレルチェンジ……」
歌葉が噛み締めるようにパラレルチェンジとはっきりと、だが怯えるように言葉を発する。
そして歌葉が、
「原因とかは分かってるの……?」
おそるおそる聞いてきた。
「心の揺らぎ、らしい。」
「心の…揺らぎ…」
歌葉が再び噛み締めるように言う。
「うたはー、おひるおわるよー」
「ごめんね美癒ちゃん……」
「だいじょーぶ、たのしかったからー!」
「ならよかった……」
「じゃあ、風見さん聞きたい事があったら、また」
「う、うん分かった……ありがとう」
と言って歌葉は美癒に別れを告げて自分の席に戻った。
それを見届けて俺たちも席に戻った。
すると、修が耳元に小声で
「どこでパラレルチェンジに気が付いたんだ?」
と、聞いてきた。
「ほぼ勘だったんだけど、性格が風見さんだけおかしかったから」
「へぇ、そんな見分け方が……そんな事で分かるもんなんだな」
「勘だけどね」
「そうか……おっともう授業始まるぞ、康大」
「そうだな」
こうして運命との対話は終わった。
―放課後。
とりあえず、すぐに家に帰ろう。と、思ったのだが、美癒と歌葉に「いっしょにかえらない?」
誘われてしまった。
「分かった、帰ろう」
修がそう答えるのでいっしょに帰ることにした。
そして、仲良く話をしながら帰ったのであった。
そして帰り際に、美癒に
「こーだい、連絡先教えてー!」と、言われたので教えてあげた。ちなみに修は昼に教えていたらしい。
さらに家の前で歌葉に
「あの……私も連絡先教えて?」と、言われた。
「も、もちろん!」
そう俺は答えた。少し興奮してしまったが。
そして夜になり、寝る前に、
―今日楽しかったまた明日ね、おやすみ
というメールがきた。
そしてそのすぐあとに
―私、嬉しかった。
と、送られてきてしまった。
顔が赤くなる。
ちなみに俺はそのあと、
―俺も仲間がいて、嬉しかった。おやすみ。
と、送っておいた。
このまま平和に終わる、と俺は思った。
だが、運命はそう、甘くはなかった―。