第二話
僕は【スタズ・バーナード】
剣の名家、バーナード家の次男。
僕には、剣にしか生きる意味がなかった。
父さんも、兄さんも、剣の達人として帝都で活躍している。
僕も早く父さんや兄さんに追いつかないといけない。
だから、いち早く帝都の学園に行くための課題の、祖父を倒さなければならない。
だけど強い。まだ6才だが手も足も出せない。
兄さんは10才で帝都の学園に行ったのに。
僕は才能がないのか、となりのシノンは魔法をどんどん覚えているのに。
魔法は凄い。シノンに教えてもらったが僕には何がなんだか。
魔法は覚えなくていい。
だけど、シノンには会いたい。
「そうだ、シノンに剣を教えよう。そしたら毎日会えるし、僕の修行にもなる」
そうして、シノンに剣を教える日々が続いた。
最初は良かった。シノンに教える優越感、まるで僕がシノンの先生みたいだ。
だけどそんな日は長く続かなかった。
三年でシノンに負けた。
たった三年だ。9才の僕には信じられなかった。
僕は恥ずかしくて、悔しくて、情けなかった。
その次の日は一緒に修行しなかった。できなかった。
だけど、夜にシノンが来た。
だけど、僕はなんとも言えない気持ちになって、ヒドイことを言ってしまった。
本当はそんなこと思ってないのに。一緒にいたいのに。
(言い直す言葉は頭にあるのに、言い直した言葉が喉から出ない。)
そしたら、シノンが泣いた。僕も泣いた。
「「一緒にいたい。」」
二人とも笑っていた。
そこからは二人が仲直りするのに、言葉はいらなかった。
次の日からはまた一緒に修行。
そこからは、シノンには勝てなかったが、僕は剣の腕はどんどん強くなるのがわかった。
祖父にも勝ったが、シノンと一緒にいたくて学園を行くのを断った。
僕たちはもう愛し合っていた。
プロポーズの言葉などはなかったけど、自然と二人の心は一つになっていた。
このまま結婚すると思っていた。
たけど、シノンが13才になった年、彼女は勇者となって、旅に出た。
僕も必死になって旅につきたいとお願いしたが、彼女のとなりにいるのは兄さんだった。
兄さんは帝国一の剣の使い手、聖騎士となっていた。
僕はいらない。僕はまたいらないのか。
また僕は悔しくて情けない気持ちになった。
会いに来てくれたシノンは泣いていて、僕もまた泣いていた。
そして、覚悟を決めて言った。今度は間違えないように。
「「魔王を倒して戻ってきたら結婚してください。」」
二人はまた笑っていた。
僕はシノンが旅に出た日から自分を鍛えた。
彼女が帰ってきたら、となりにいれるように。
そのために学園に通いはじめた。
学園は凄い。僕と同い年や年下、年上の剣や魔法の使い手の子供がいっぱいいる。
友達もできたし、告白も何度かされた。
もちろん全部断ったけど。
楽しかった。強くなるための修行も一人や二人でできないこともできた。
そして、16才。
シノンが死んだ。
そのことを知らない人は帝国内では一人もいない。
聖騎士の兄さんや、賢者、聖女は生きているのになんでシノンだけ死なないといけないんだ。
「どうしてなんだ、魔王が悪いのか。それとも無理やり行かした帝国、教会が悪いのか。」
「いや、どっちも悪い。」
僕の中のなにかが消えかけて、作りはじめられていた。