依頼
数時間前に遡る。
「もしもし」
「こんにちは、グレイ探偵事務室、オペレータールームです。ご用件をどうぞ!」
「ああ、そちらのニコラスさんを呼んで欲しいのだが。依頼を引き受けてもらいたくて。」
「かしこまりました!」
応対したオペレーターの一人がニコラスを呼ぶ。
「ニコラスさん、依頼ですよ!」
「ありがとう、変わる。もしもし?
はい、わたしがニコラスですが…」
次の日
ニコラスは指定された喫茶店で依頼人を待ち続けていた。
「まだか?」
腕時計とにらめっこをしながらせっかくならとコーヒーとオススメのシフォンケーキを頼んだ。
朝からなにも食べていないため、さっきから腹の虫がおさまらない。
待っている間も針は1分ずつ時を刻み、頼んだものが届いた後も終始時計を見つめた。
「すみません、おまたせしました」
数分後、自分の前に現れたのは自身より年上の、
鋭い眼光の男であった。
「どうも」
おじぎをすると男に座るよう言う。
向かいにドスッと腰掛けると男は「言い訳を」と前置きし、
「実は連れが急に用事ができたと。いやあ、若いもんはわかりませんな。とくにあいつは入ってからそんなに経ってませんし、運転手を任せているんですがどうもこうも」
ーああ、わかる。
言い訳もとい愚痴を聞きながらニコラスには思い当たることがあった。
自身の部下であるあの二人。
ホワイトはちょこまか動き、ブラックは危ないことも平気でする。
なにかと世話を焼いてしまう。
「で、依頼のほうですが…」
「え、ええ、実はですね」
思い出したように話を戻し、依頼内用を話し始める。
「行方不明の少年が現在この街に住んでいると聞いて我々捜査員が派遣されたのです。」
「あの事件のですか」
「はい。魔本も彼が持っているのではないかと前から言われていましたが、その魔本から術霊が召喚されたらしく、今はその少年と契約しているのではと。ただし当時は非現実的だとあまり本格的に捜査されてはいなかったらしく、資料集めは難航しましたよ。そして、彼」
すっと取り出された写真に一人の少年、そして筆記体で名前が書かれていた。
ずいぶんと色あせたものである。
「スティーツ、それが彼の名だ」