プロローグ
オレはなんでここにいるんだ?
窓の外に未だ降り続く雨を眺めながらそんなことを考えた。
確かオレはずっと寝てたんだ。
それなのにあいつらが勝手に起こして。
それだけならまだいい。まだよかったんだ。
あいつらの中でどっしりかまえてるクソ野郎が
あの人の悪ぐちを言わなきゃ。
バラバラ床に落ちて動かなくなった。
もちろん、いばってばかりのやつはたくさん殴ったさ。
えらいグロテスクになってっけど。
ああ、でも怒るかなあ。
あの人はケンカが嫌いだから。
それでどうしようと思ってたらなんか物おとがして…。
「ただいま。」
「・・・ノックくらいしろよ。びしょぬれだし」
「ごめんね、のんびりしてるところ」
面みたいな笑顔をそいつは向けてきた。
いつも笑ってんのな。一回鏡見てこいよ。
お前さんには似合わんよ。
「雨、やまないな」
「ああ」
いつまで降るんだろうかこの雨は。
もしかしたら永遠にやまないかも。
そしたらこの街の住人は一生外に出られないな。
「そんなことはないさ。この街には雨が好きな人だっているさ。毎日晴れだったらつまらないだろ?
晴れてばかりじゃ、世界は干からびちゃうさ。」
そうだな。いろんなやつがいるからこの街は成り立っている。
いや、世界中?
「それに雨はいつかやむものさ。」
オレはちらっとやつを見た。
いつもと違う寂しそうな顔だ。
「コーヒー飲むか?」
「ああ、ありがとう。」
お、笑った。やっぱりそうでなくちゃ。
いくら似合わんていってもそっちのが断然いい。
オレも少しだけ笑ってみせるとキッチンに赴いた。
あんたも言ってたよな。たったひとつの笑顔で幸せになれる人もいるってよ。
あいつがあちらを向いているのをいいことにオレは手で両目を覆った。