消した色と消えた色
「今、君達が見たのは記憶。君達が何をシタのか……それが分からなきゃ、自分をミルこともできないデショ? どうだった、君達の記憶ハ?」
目が覚めると、そこにはレイと司がいた。今まで見ていたものが俺の記憶……茜との思い出。
「そうだ……僕は裕香との約束を守れなくて。目が覚めたら、ここにいて……」
「そう。それが君のキオク。君はどうだった、巡也?」
「俺は茜と遊園地に行ったことを思い出した」
俺がそう言った瞬間、司の表情が曇ったように感じた。
「ぼんやり……。それは、君がまだ自分を認めようとしていないカラダネ。運命の時はだんだん近づいてくるヨ? 今度こそ進まなきゃ、そうデショ?」
「俺は……」
「……じゃあ、見せてアゲル。今の茜と裕香ヲ」
そう言うと、レイは再び俺と司の花に触れる。
「君達のせいで、茜と裕香がどんな思いをシタカ。君達は知らなきゃイケナイ。どんな形でアレ、どんな経緯でアレ、ここに来てしまった君達のせいダカラ……」
『お兄ちゃん……』
『お兄様……』
突然、真っ暗な世界に2人の女の子が浮かび上がる――。
「茜!」
「裕香!」
1人は茜、もう1人はどうやら司の妹と言っていた裕香ちゃんらしい。真っ赤なワンピースを着た茜と真っ白なワンピースを着た裕香ちゃんは俺と司の花を見つめている。
「裕香!裕香、ごめんね!」
司は裕香ちゃんの傍に駆け寄る。2人はまるで目の前にいるかのようだった。しかし、裕香ちゃんが司を見ることはなかった。
「茜?」
俺も茜に話しかけてみるが、茜がこちらを見ることはない。
「無駄ダヨ。君達がいるのは世界の間。話しかけても聞こえナイシ、何も見えてイナイ」
「裕香……」
『お兄様、どうしてですか。どうして……! 約束守ってくださるって仰ったじゃないですか! なのに、どうして私を1人にするんですか……。お兄様、答えてください!! お兄様……」
「裕香、ごめんね。ごめん……」
あちらに俺達の声が聞こえなくても、こちらには2人の声が届く――。それは嬉しくも、胸を締めつけられるような言葉だった。
『お兄ちゃん。私、そんなに頼りない妹だった? 何か言ってほしかった……! どうしてあんなこと……。私のせいなのかな? ねえ。お兄ちゃん、答えてよ!! お兄ちゃん!」
「茜……」
司は裕香ちゃんに聞こえないと分かっていても、ずっと謝り続けていた。司も裕香ちゃんもその場にしゃがみ込み、声を殺して泣いていた。それは茜も同じだった――。しかし、俺は司のように謝ることも、茜に声をかけることもできなかった。いつも元気で明るい茜をこんな風にしてしまった自分が本当に情けなかった。
「コレガ今の茜と裕香……」
レイが花に触れると茜も裕香も徐々にぼんやりして、そのまま消えてしまった。
「……こ、これは、本当に裕香なの?」
「本当ダヨ」
「裕香は僕のせいで……」
子供のように泣きじゃくる司の側にレイが近寄る。
「そう、君のセイ。君のせいで裕香はこうなっタ。裕香は何も悪くないノニ。裕香だけがこんな思いをしテイル」
「おい! そこまで言うことないだろ。司だって、きっと色々あったんだろ……」
「良いんだ。それが本当のことだから……」
「でも!」
「そうダネ。2番よりも、22番……君の方がもっと悪いもんネ? 茜がこうなったのは君のセイ。君が君の道を勝手に決めたカラ。君の道は君だけのものじゃないノニ……」
レイの冷たい視線が俺に刺さる。俺の側に近寄ってくるレイに恐怖さえ感じた。
「そして……今でも気づいてイナイ。君は……君を認められないからって、自分を消しタ……! 消えちゃった2番とは大違いダヨネ?」
自分を消した……その言葉だけが頭から離れない。
「茜も裕香も君達に謝ってほしい訳じゃないデショ? 君達が進まなきゃ茜も裕香もずっとコノママ……」
さっきまで大粒の涙を流していた司は真っ赤な目で、レイをじっと見ていた。俺と司は違う……。茜の言葉を聞いた今でさえ、俺は何をすれば良いのか……何を見つければ良いのか分からなかった。
「僕はどうすれば良いの?」
「それは君達が見つけるコト。このままが嫌なら見つけて進むしかないネ……」
「このまま……」
司は何かを見つけようとしている。俺の知らない自分が少しずつ見えてきそうで、その先に踏み出せない。司はこんなに側にいるのに、遠くにいるような気がした。その時――。
「このまま……という選択肢もある」
突如、後ろから聞き覚えのない男性の声がした。そこには背の高い男性と、男性の後ろに隠れている小さな男の子が立っていた――。
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