表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

俺と雨 赤と青

水色ふうせんの初作品です。タイトルは、「二三ヲ二六」と書いて「罪を摘む」と読みます。これは私が演劇の舞台用に脚本として書いたものを2015年に小説にし、2018年に改編した作品です。花言葉を使った作品を書いてみたくて、小説にしました。大切なキャラクター達の選択を見届けていただければ幸いです。

 雨の唄   天宮晴子あまみやはるこ


 もしも 雨に思いがあったら

 雨は 悲しい気持ちで溢れている

 だから人々は雨を 悲しい色で描くのかな


 もしも 雨に記憶があったら

 雨は 悲しい思い出が溢れている

 だから人々は雨を 悲しい気持ちで見るのかな


 雨は 雨は

 降って 空に昇って また降ってくる

 ぐるぐるぐるぐる雨はまわる


 出会いと別れを繰り返し

 ぐるぐるぐるぐる雨がまわる


 雨は死を繰り返して生き続ける

 雨は 死を知り 生を産む



 淡く滲んだ雨の絵。そこには青い雨の中、赤い傘を差した女の子が立っている。教科書を開くと、俺はついこの絵を見てしまう。特別好きとかではない。ただ……何となく見てしまう。あくまでも何となく。今の俺にできるのは、この絵を見ることぐらいだ。

 顔を上げると、先生という名の大人が生徒という名の子供に向かって何かを言っている。大人も子供の何となく話して、聞いているだけなのに聞く意味なんかあるのか。そんなことを考えるより、今日も窓の外で生き続けている雨が何を思っているのか考える方がいい。ただ何となく考えているだけだ。ここにいる他の人間と何も変わらない。何となくそうしているだけ。あ、そういえば傘持ってくるの忘れたな。雨は好きだが、今日ばかりは雨がやんでほしいと思ってしまう。


 ようやくチャイムが鳴り、皆が立って礼をする。ああ、やっと終わった。そう思って、俺は座ろうとした。

「よっ、巡也」

 巡也、霧谷巡也きりたにじゅんや――。それが俺の名前だ。俺の名前が聞こえると同時に体が揺れ、窓に肩が当たる。

「わりい、巡也。大丈夫か」

 たけるはそう言って笑っていた。痛いのは俺だけで、不公平だなと思う。

「まあ、大丈夫」

 そう言いながらも少し大袈裟に肩に手を当てて立ってみたが、健はそれに気付くはずもない。健は顔も性格もそこそこ良いとは思うけど、少し抜けてるところがある。それが女子にはうけているらしい。

「今日さ、カラオケ行こうぜ。隣のクラスの真美まみちゃんも一緒。行くだろ」

 やっぱり、健は女子にモテているらしい。学年で1番の美女と言われている真美をカラオケに誘える程に……。

「いや、行かない。帰るわ」

「さすが、クールだねえ。じゃ、俺が真美ちゃん独り占めしよっと」

「はいはい」

 適当に返事をして俺は教室を出たところで、傘を持っていないことを思い出した。雨宿りがてらカラオケに行っても良かったかと迷ったが、今更言うのも面倒だからそのまま帰ることにした。



 青い雨の中、赤い傘を差している女の子。俺がいつも見ている雨の絵と同じ女の子が立っていた。すると、赤い傘が振り向き、こちらに向かって走ってくる。

「はい、相合傘」

 彼女みたいに言ってきたのは、俺と同じ高校に通う、妹の霧谷茜きりたにあかね

「やだよ。それなら、濡れて帰る方がまし」

「嘘、嘘。冗談だってば。はい、お兄ちゃんの傘。わざわざ待っててあげたんだから、私に感謝してよね。茜様、ありがとうございますって」

「やだ」

 茜は子供みたいに頬を膨らませていたが、そんなこと気にせずに俺は傘を取る。俺の開いた真っ暗な傘からは雨が見えず、ポツポツと雨の生きている音だけが聞こえる。これは雨の生きている音であると同時に、死んでいる音でもあるのだが――。

「どうしたの、お兄ちゃん。ぼーっとして」

「別に」

「あっそ」

 2人とも適当に返事をしたから、静かになってしまった。雨の音だけが聞こえる。これが雨の唄かもしれない。

「あのさ」

 静寂に耐えられなかったのは俺の方だった。

「なーに」

 しかし、俺は何も話題が思い浮かばず、また少し静寂が続いた。

「雨ってさ。生きてると思う?」

「雨が?」

 どうやら、俺の頭は雨のことでいっぱいらしい。話題を変えようと必死で考えるものの、何も出てこなかった。静寂を破ろうとした雨が、また静寂を生み出す。

「私は、生きてると思うよ」

 急に、茜が答えたので俺は少し驚いた。

「どうして?」

「だって、雨があるからお花は咲くでしょ。ほら」

 茜の指差す先に、白い小さな花があった。コンクリートの割れ目から小さく咲いている。

「この花も、雨のおかげでここで咲くことができたんだよ、きっと。雨は雨の命を、花に渡した。そして、雨は花として生きてる……みたいな?」

 冗談っぽく言っているが、茜はたまに鋭いことを言う。

「何か、茜は詩人みたいだな」

「私が? あははっ。詩人かー。お兄ちゃん 黒い傘差し 雨の中 茜、心の一句」

「それ、俳句だし。やっぱり、茜みたいなバカが詩人になれるわけないな」

「バカっていうほうがバカだし」

「茜よりバカな奴はいないだろ」

「何それ、ひっどーい」

 俺と茜はいつもこうやって、どうでもいい話をする。でも、俺にとっては唯一のちゃんと話す相手だったりもする。茜はいつも、こんな俺と一緒にいても笑っていた。それがなんとなく嬉しくて。つい話してしまう。決して、シスターコンプレックスとかいうものではない――。



 そう、俺はいつも、どんなことでも何となくだった。何となく話して、笑って、生きている。昨日もあかねと一緒に帰って、何となく終わった。今日もこのまま、何となく終わるのだろう。俺が考えているのはそんなことと、雨のことくらい。今日も雨を見るために屋上に来た。ここは誰もいなくて落ち着く。つまり、ここにいるのは俺と雨だけ。太陽は眩しいから嫌いだ。俺が惨めに思えてくる。しばらく薄暗い空を見上げていると、雨と俺は何か似てるとさえ思えてきた。雨も何となく降って、昇って、また降ってくる。「俺も雨になりたい――」、唯々そう思った。


 ――雨は死を繰り返して生き続ける――


 次第に似ているというより俺が雨なのか、雨が俺なのか分からなくなってきた。俺の体に降る雨は俺なのか、雨なのか。雨と一緒に降る俺は雨なのか、俺なのか。そんなこと、どっちでも良い。どうでも良い。俺はただ、何となく雨になってみた。



 俺は、今日何となく雨になったらしい。悲しい雨に。誰かの悲しい声が聞こえた。俺は本当に雨になれたみたいだ。これが雨になって降るということ。雨に思いがあれば、記憶があれば、雨は悲しい生き物だ。でも、悲しい声が聞こえなくなってきた。俺はうっすら目を開けてみた。俺は、雨にはなれなかったみたいだ。雨は悲しく、青い生き物。俺は悲しく、赤い生き物。ただ1つ聞こえたのは、あの絵の赤い傘の女の子の声。俺と同じ色をした赤い傘が、俺と同じように地へ降り、女の子だけが俺の方へ走ってくる。俺はそっと目を閉じ、雨の唄を思う。


 ――雨は 死を知り 生を産む――



 俺が目を開けた時、そこにいたのは赤い傘の女の子ではなく、真っ白な女の子。真っ暗な世界に佇む女の子の姿は光り輝いているように真っ白だった。その周りには色とりどりの花々が小さな鉢に植えられている。真っ暗な世界、真っ白な女の子、赤・青・黄色……色とりどりの花々――。それはまるで1つの絵画のようだった。そして、彼女は俺の目の前まで歩いてくる。


 「あなたは22番」


 彼女はそう言って、花のように優しく、小さく微笑んだ。

ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございます(#^^#)

処女作です。至らない点もあるかとは思います。しかし、私は二三ヲ二六という作品が大好きです(^^♪

もし、お気に召して頂けたなら、是非最後までお付き合いください!


当作品と同じく花言葉や真っ白な少女をテーマにした花言葉×恋愛小説『コトリヒメ』がAmazonにて販売されております。良ければチェックしてみてください(^^)/

販売URLはこちらです→http://amzn.to/2DBAeKt

Twitterは「水色ふうせん」で更新中です。こちらも良ければフォローしてください( *´艸`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ