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異界渡りシリーズ

だって、ほら、ね?〜イケメン御曹子の隠密記〜

作者: 星宮雪那

影の薄い気弱そうな転校生は、実は国の極秘異界貿易会社のイケメン御曹司。

変装して色んな学校を転々と転校の日々が終わる。

「異世界召還され、帰還した姫巫女様が、その神の加護の力を持ったまま帰還なされた。

次元の歪みに再び巻き込まれてしまうかも知れないから守りなさい。」

祖母の鶴の一声で決まりました。

女達が姦しく騒いでいる。

ボソボソと初めは小声。

ヒートアップすると大声で騒ぐ。

まさに口害。

「だって、ほら、ね?」

こちらをチラチラ見ながら、悪口談義ですかい?

暇だねえ。

誰かを罵り蔑んで。

下が居ることに安堵して。

自分の不安定さや駄目さを隠したがる。

まさに、青い春の生贄に選ばれたのは。

猫背で地味な髪型の、前髪で目も隠れた平凡眼鏡君がこの俺だ。

あの彼女達は、静かな図書室の端で先程から騒いでいた。

今日は図書の司書先生が居ない。

五月蝿くしても怒られないからフリーダムこの上ない。

いつも静かなこの場所が好きなので、避難しよう。

そう思って本を閉じ、立ち上がってから棚に戻す。

そして、図書室を出ようとした所で誰かに声を掛けられた。

「ねぇねぇ紐川君、いつもだいたい図書室に居るね。」

「一人で寂しくない?ボッチなら、うちらのグループ入れたげるわよ?」

言ってる事は好意的。

でもその目は獲物をロックオンした捕獲者の目だ。

「あー!あたし今フリーだから彼女になったげようか?」

「ギャハハウケルー!」

溜め息をついて、静かに答えた。

「申し訳有りませんが、一人が好きなのでお気になさらず。

それと俺婚約者が居るので謹んでお断りします。」

それまで騒がしかった女達が、ぴたりと黙った。

その隙に図書室から俺は出て行った。

裏で何か五月蝿く罵られているけど、予定調和だ。

誰もいない旧校舎の男子トイレに入って、鏡の前で眼鏡止め事眼鏡を外し。

猫背を止めてスッと綺麗な姿勢に、前髪をオールバックにする。

すると、平凡な男子が消えた。

碧色の切れ長の瞳、印象的な少年が現れた。

「まったく、社会勉強とは言え、下らん。

金持ちも庶民も貧乏人も、ほんと碌なのがいねぇ。」

紐川陣は偽名。

本名は天照淡海あまてらおうみ

一年置きに身分を偽装させ。

庶民の学校と貴族の学校を転々とし。

自分の人を見る目を養い。

配下に相応しい者を探す。

取りあえず中学生になった今は、人を見る目位は出来たと思う。

しかし、信頼出来そうな者は在学期間が短すぎて難しい。

勉強は家庭教師の元、既に大学生レベルの教育を受けて居るから転校した所でさしたる苦労は無い。

むしろ目立った高成績を、ぼんやり叩き出さないように、する方が苦労する。

ため息をついて、髪型を戻し眼鏡を付け直してトイレを出た。

教室には戻らずに、そのまま旧校舎を歩く。

ガラッと扉を開けると、一人の少女が読書をしていた。

風変わりな特異点、姫巫女。

彼女にわざわざエンカウントしたのは、この学校に入った理由でもある。

次元歪みの大発生ポイントのこの街は、異世界に繋がりやすく。

安定したポイント以外は埋めるのが俺の家の役目。

というか、祖母は異世界人なので少々特殊能力を備えており。

祖母の直系にあたる僕の家族は、その力や魔力を異世界との次元移動魔法を使いこなし。

元々祖父の家系は国の中枢や裏側に関わる財閥家系で。

祖母との出会いの果てに、国の極秘特殊事業を起こした。

因みに祖父は祖母に一目惚れして、熱烈アタックしたらしい。

そして作ったのが、異界渡りの貿易会社である。

祖母曰く、

「姫巫女様は、その強い加護と破邪浄化能力を備えたまま帰還なされた。

多分放置して置けば、頻繁に異世界との歪みに引きずりこまれる可能性が高いじゃろう。

彼女に危険及ばぬよう注意せよ。」

鶴の一声。

これで暫く転校の日々が終わりを告げた。

まぁ、退屈はし無いだろう。

何せ歪み埋める作業は結構キツイ。

まだ若くて能力練度が足りない俺では、軽めの補強と家族の会社へ報告して、休日か夜に動いてもらうしかない。

しかも誰かを護りながら、とかほんと婆さん無茶言うよな。

「?」

不思議そうに、こちらを向く少女。

まぁそうだよな。

ここは普段人が来ないからサボるにはうってつけだが、常駐したい者は少ないだろう。

ここは彼女のお気に入りなのか、他の教室と違って埃っぽくはなく、綺麗に掃除されて居た。

「あぁすまん、図書室が騒がしくなって静かな所探してたらここに来たんだ。

邪魔して悪かったな。えーっと。」

わざと覚えていない様な困ったフリをする。

「あ、ううん大丈夫よ。

良かったらそこに座りなよ。

高原榛名たかまがはらはるなだよ、転校生の紐川陣君。」

へにょっと笑う顔は毒気がない。

美少女とかでは無いが、心がホッとする様な温かみのある可愛らしい子だ。

姫巫女様と呼ばれただけあって。

オンボロ教室なのに、不思議と清浄な空気をまとっている。

多分抑えコントロールしてこれなのだから、神の加護持ちは末恐ろしい。

力を抑えず放置すれば。

何処でも輝く燐光を纏い、見たものは魅了に近い状態にされるだろう。

「司書先生今日休みでしょ?

あの人が休む時は、ちょっとガラの悪い子達がたむろするから逃げて正解だよ。

ここは普段私しか来ないから。

好きに使ったって問題無いよ。

あ、私はさ、私の幼馴染が読書してもワンコみたいに構ってちゃん状態で、文句言っても五月蝿くてさあ。

しかもあいつイケメンだから、ファンが多くて、女の怖い集団にも絡まれるし。

面倒で、ここに逃げ込んでる訳ですよ。」

やれやれと肩を竦めて居る。

確かに彼女の幼馴染は良くまとわりついていて、邪険にされても楽しそうについて来ていたのを見かけた事がある。

それなりにイケメンで、有能そうだったから女子が放置してくれないのだろう。

「紐川君も、綺麗な魔法の宝石見たいな目してるし。

前髪あげたらモテそうだよね。」

「え?」

目が見られて居る?

ビクっと肩を震わせ反応してしまった。

髪に隠し、色変えの眼鏡で誤魔化したのに。

見抜かれた?

魔法の宝石見たいな目…異世界なら魔眼持ちの比喩だ。

どう見ても無意識で言っただけだが。

多分姫巫女の本能で読まれたのだと思った。

チート恐るべし。

「あ、俺クオーターなんだ。

あまりバレたくなくてさ。」

異世界人との混血だしあながち間違ってないよな。

「そっか、まぁ確かに他の人と違うと子供は騒ぐからね。

綺麗なのに勿体無いけど、仕方ないね。」

うんうん、と勝手に納得してくれた。

うわ、こいつ天然だな。

綺麗綺麗と連呼され、流石にちょっと照れて顔を反らせた。

そしてもう一つ気付いたのは、高原はとても話しやすい。

こちらの話も気持ち良く聞いてくれるし。

彼女の独特の雰囲気とおっとりした口調が、何処か心地良かった。

ああいかん、魅了されかけてる。

頭を軽くふって、暫くここで本を読ませてもらった。

それから半年程して、旧校舎にもう一人闖入者が来た。

高原の幼馴染。

草薙響くさなぎひびきだ。

途中でつけてくるようになったのだが、高原は幼馴染のストーキングぶりに激怒。

来ても無視して居る。

恋愛対象にされず、さらにどれだけ嫌がられてんだこいつ。

ちょっと哀れになった。

流石に困ったらしく、始めは敵意バリバリだったのに。

いつしか俺に泣きついた来た。

わかりやすく、彼女が草薙の取り巻きやファンからの威嚇や嫌がらせに困ってここに逃げ込んでる事や、俺は図書室で不良に絡まれて偶然ここに居させてもらって居る事を、かなりわかりやすく告げた。

ファンからの嫌がらせは草薙が口を出すと悪化するのと、草薙の近くに居ると高原は監視され敵意を向けられる為離れたとかも言っておく。

かなり鈍感でも流石に理解したのか、その日からここには草薙は来なくなった。

その代わり。

「お気に入りに嫌がらせする女とかキモくて嫌いだし。

最低だと思うし異性としてはタイプじゃ無いよな。

思い遣りの出来る物静かな子とか。

落ち着いて大人の対応出来る子とか。

あんまりケバく無い清楚系とかいいよな。」

的な事を男友達に良く言うようになった。

多分あいつなりの牽制だ。

女は直接言うと発狂モードになるから。

やはり鈍感天然も長いと多少学ぶのだろう。

まず取巻きやファンは、大体騒がしくイジメる位思い遣りの無い。

ケバくて慎みも無かった。

ようは尻軽にしか見えない粗忽者は、タイプじゃ無いから出直せって事だろう。

少しして、高原への嫌がらせは減り、鎮火して行った。

「別に、頼んだ訳じゃ無いけど。

まぁ許してあげる。

でも、ここにはあんまり来ないでね。

あんた煩いから読書の邪魔!」

少し照れながらのツンデレキタコレ。

ごめん、おれもちょっとこれは見ていて悶えるわ。

成る程、仲直りはツンデレで来るのか。

幼い頃からこれ見せられたら、確かにヤバイな。

高原も人が良いのか、ワンコ幼馴染切り捨てられないみたいだし。

草薙は草薙で、最終的に許されるの分かって居るのか暴走するんだろうな。

結論、こいつら面白えや。

もう少し様子見て大丈夫そうなら、おれも本名明かして、側近組にスカウトするかな。

あ、抱きつこうとして腹パン食らってる。

厳しいデスな姫巫女様は。

てかあの動き、異世界で護身術習ったな。

構えが安定し過ぎてプロいわ。

格闘技やったら上段すぐ取れんじゃね?

でもあまり派手な運動はやりたそうなタイプじゃなさそうだな、うん。

そんなやり取りを眺めながら彼らとはのんびり過ごし。

歪み埋める作業の為の修業もしながら時が過ぎ。

俺は高校生になった。

あの日、俺は実家の年一度の会議に出て学校を休んでいた。

本当にしくじったと思う。

まさか、召喚陣が発動し。

俺がそばに居ない時に、異世界に草薙が勇者召喚され。

巻き込まれて高原が異世界にトリップしてしまったんだ。

なんで分かったか。

召喚陣警報が議会場である実家には備わったいて。

親達が慌てて場所を特定。

俺の高校だった。

祖母が溜息を吐いた。

「やはり、姫巫女様は巻き込まれてしまいましたか…。

召喚陣からの正式呼び出しですから。

神の加護持ちである姫巫女様は、別の神の加護が与えられるでしょう。」

「多重加護持ちですか?」

「そうです、これで神格が上がってしまいましたから。

最悪、人であった記憶を失う可能性があります。」

俺はあからさまに動揺して居た。

そんな、とか、なんで、とかバカみたいな事しか言えてない。

自分では気付かずに、高原達を懐にいれて居て、だからこそ動揺が酷い。

俺は彼女を護れるとずっと思い上がり。

結果このザマだ。

草薙が勇者召喚されたと言う事も問題で。

あいつらは命に関わる戦闘を体験する。

行った世界が真っ当な連中とは限らない。

自分たちの代わりの駒変わりに使い潰す世界もある。

召喚は召喚される側からしたら実際誘拐だ。

異世界人でないと倒せない、解決出来ない事ならまだわかる。

でも、単なる便利な戦闘道具扱いで、本来保護すべき召喚者に、バカやらかす違法召喚もあるから怖いのだ。

「正式召喚だから、キチンと守護されるわ。

だから、彼らを次元移動して追いかけようとしてはダメよ。」

祖母の声に厳しさが乗る。

「正式召喚された時代や場所に、次元移動で正確な位置まで辿り着ける練度が、まだ淡海には足りません。」

反論するまでもなくきっぱり言い切られ。

俺は肩を落とした。

そんな事俺が一番分かっている。

「ふふ、余程その姫巫女ちゃんが気になるのね。

そこまで動揺する淡海初めてみたわ。」

母が、場を和ませるようにからかう。

ビクッと肩を揺らし、顔を逸らす。

「…少し、頭冷やしてきます。

騒いで申し訳有りません。」

母の言葉に肯定も否定もせず。

俺は席を立って、専用の休憩室に立ち去った。

「あらあら、からかいすぎたかしら?」

「初めてあいつが気に入った者達だ。

心配なのだろう。」

「ヤレヤレ、厄介なのを気に入るのは血筋かの?」

「ほらほらあなたたち。

転移先ポイントの異世界サイドとコンタクして。

あっちの現状調べなさい。」

バタバタ指示を出す祖母。

「あ、あと次元移動出来る連中で臨時部隊、最悪にも備えて。」

淡海は叱りつけたが、内緒で勇者支援部隊を密かに編成させるあたり、孫馬鹿だ。

他の親族も異論が無いあたり、かなり淡海は愛されている。


そんな甲斐あって、こちらで言う一週間。

あちらで言う一年後に二人は帰還した。

どう言うわけか、二人の両親は海外赴任が多く。

家にいなくてバレておらず。

学校には俺達が上手く情報操作しておいた。

何故かますます草薙は高原に拒絶されている。

見知らぬ異世界は二度目で、もう慣れで寂しがる様子の無い高原。

折角2人っきりで、寂しがって甘えて欲しかっただろう草薙の期待を見事粉砕。

さらに、召還先でもモテまくるため、ウザガラレ。

彼にまつわる色恋トラブルはやはり高原へと被弾。

ブチギレた高原のほうが勇者より強くて。

結果、無双したのは姫巫女高原のほうだった。

フラグが立てたい相手以外に立てまくる。

可哀想な、自業自得なような草薙マジ不憫。

しばらくその後は落ち着いたんだが。

母から爆弾とびだした。

「あ、淡海。

なんかね、姫巫女ちゃんが召還された賢者さん?みたいな仕事の人が。

家に就職決まったから。」

「え?」

「なんでもー、一目惚れとかでぇ、女神様に交渉してこっち来ちゃったらしいわよ?

愛よねぇ。」

「あの、母さん、確か高原はあの時中学生一年生だったと聞きましたが。」

「うんそうね。賢者さん?見た目若いけど、獣人だから高齢かもね?」

ロリロックオン?!

あいつ良く変態相手に貞操大丈夫だったなぁ。

幼馴染といい、変なのにモテるんだな。

と妙な思考に遠い目になった。

「あら妬いちゃうの?」

「ち、違いますよ。

まったくもう、俺は学校行ってきます」

プリプリ怒って出掛けてから。

母が、ポツリ。

「あんなに一喜一憂してたのに、自覚なしナノね。

朴念仁で鈍感な所パパそっくり。」

クスクス笑って呟いた。

学校に着くと、挨拶してきた高原を妙に意識して。

挙動不審大会絶賛開催中。

逃げるように、旧校舎トイレに駆け込む。

まあ何だ、嫌いでは無い。

側にいても落ち着く。

会話もしやすい。

可愛いほうだ。

たまに目で追っている。

なんか放っておけない。

ん…あ、あれ?

思考整理してるハズが、ドツボニハマル。

既に籠絡されていた事に気付くのは、有能なマーズと言う異世界人が来てからだった。


はい、榛名ちゃんの同級生、モブのふりしたちょっと腹黒気味のチート御曹司君です。

お婆ちゃんが異世界人の聖女さまで、召還されたお爺ちゃんに熱烈プロポーズされ、こっちに来ちゃいました。

そんな二人の孫なので、魔力神力ともに高い魔眼持ち。

天然と鈍感と変態に愛される榛名ちゃんマジ不憫。

あ、ちなみに淡海君は婚約者は居ません。

絡まれた時用のハッタリです。

だって祖母の代から自由恋愛家系だし。

余程犯罪者的な思考者や考えなし以外はあまりとやかく言われません。

まあ、目が肥えてるのでヤバそうなのは血筋的に避けるみたいです。

又気が向いたら何か書きますね。

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