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_____夢の浮橋3____

「むう…ここは、ってもういいかこのくだり。いい加減慣れたわ」


ふわふわふわっと漂いながら。

明るいような暗いような、

そんな靄の中を漂うのは優美である。

もはや何度目とも分からないこの空間。

慣れっこも良いとこである。


「さーてと、どこにいるかなー」


辺りをキョロキョロしだす優美。

ここに呼ばれたということは、

例の人(?)がいるのは間違いない。


『優美よ…聞こえるか』


「なにっ、こいつ直接頭にっ!」


『いや、毎度そうであったろうて。何を今さら』


目の前の霧が割れたかと思うと、

そこからスッと出てくるのは、

もはやおなじみとなりつつある、

神社に祭られている神である。


「おっすおっす。神さん、久しぶりやあね」


『何か回を重ねるごとにフランクになっておるなそなた』


「神がフレンドリーすぎるが故致し方なし」


『もはや今さらであるか…』


神が手を上げれば、

霧が動いて前まで使用していた部屋が現れる。


「そういやこの部屋消してたのね」


『出しっぱなしだと邪魔になったのでな。しまっておいた』


「え、つーか普段からここ住んでるん神さんって」


『住んでるという表現が正しいかはさておき…基本的にはここにいる』


「なるほど。夢かと思ってたけど、実際に神の家みたいなとこだったのねここ。驚き」


『驚いた雰囲気がかけらもないぞ』


「いやいやー驚いてんのよこれでもー」


『もうよいわ…』


呆れた顔をする神様。


「神社の神様本人を呆れさせる巫女っていったい」


『自分で言うか。自分で』


そういうとスッと部屋の中へと侵入していく神。

続いて優美も中へと入っていく。


『…慣れすぎであろ。そなた』


「まあこれ来るの何回目よだって。もう庭よ庭」


『庭って…』


慣れてしまえば案外どんな場所でもこんなもんなのだろうか。


「それでー、今日呼んだ理由はー?」


『暇であったのでな』


「はっきり言うね」


『話す相手もおらんでな』


「そうすか」


そのままいつも部屋でやっているような体制になる優美。


『そろそろ一年であるな』


「せやねー早いもんじゃわ。色々ありましたでござんしたけどもね」


『どうだったか?楽しんだか?それとも疲れたか?』


「んーふふ。まあとんでもなく楽しかったのは確かだね。疲れもしたけど、それでもおにゃのこの生活も十分堪能したしな」


『そうか。それならばよい』


「まあね。心のどっかでちょっと日常とかけ離れた何かを求めてたのは確かだからね。最初の日こそ混乱したけどその後は結構ノリノリだったのも事実だし。いやまあ結局今じゃこれが俺らの日常と化してるんだけど」


変わらないルーチンワーク。

変わらない日常。

はっきり言えば飽き飽きしていた優美であった。

そんな中に突如舞い降りた人生そのものを大きく変換した神社への召喚。

そりゃテンションも上がる。


「なんだかんだ言って俺は、いやたぶんあいつもだな。だから俺たちはさんざん楽しんだね。二人一緒だったしさみしさとは無縁だったしな。一人だと帰りたい症候群発生してた可能性はなきにしもあらずって感じだけど」


『そうなのか?』


「俺そんなにつよくないで。一人じゃ無理だわ」


見知らぬ土地に一人。

しかも以前とはかけ離れた己の体。

楽しむ以前に色々問題が発生しそうである。


「だから二人同時に来れたから一年楽しめたかなーってのはあるね。相手のことはよく知ってるから気を使う必要もない。元を知ってるから素で接して大丈夫だしな。自分の素が解放できないって辛いと思うのよね」


『やはり二人連れて来て正解であったか』


「大正解だと思いますね。少なくとも俺らは。二人の方がテンション上がるし。はしゃげるし、なんかあった時の相談もできるし。利点しかない。あとは外見百合もできるね!あいつが逃げるからしてないけど」


『そっち方面は知らぬ』


「マジでやる気はねえよ」


それでも軽くは何度か襲い掛かっている優美ではあるが。

まあお遊びではある。


『そなたらも今のその体にだいぶ慣れたようであるしな』


「つーか慣れすぎた。元がそろそろ分からんなってきとる」


『そうか?ならば用意しようか』


「用意?何をってうぇ」


横を見ると、

見知らぬようで見知った人影があった。

動かないのを見るに、

人形のようなものなのだろう。

だがしかし、

その姿に問題があった。


「これ俺じゃねーか!しかもここに来る前のやつ。パジャマのまんま」


『以前の姿を忘れかけているようなのでな』


「いや出さなくていいからね?」


と言いつつも久しぶりに見る、

かつての姿である。

上から下まで全部見渡してみる優美。


「…うーむしかし見れば見るほど今の姿と違いすぎてやばいな」


『体をだいぶ小柄にしたものでな。それに合うようにだいぶ顔とかもいじらせてもらった』


「なーる。まあこの体にかつての顔とか考えたくないね。完全に異形の化け物不可避ですわ」


そういうとかつての体に触れる優美。


『…どこに触っておるのだ…』


「いやー、今は無きあれっすわ。こんなだったけ?もうなんか忘れちまったなー。つーか無駄に再現率たけーなおい」


『ここに送る際にとっておいたそなたらの姿の記憶から構築しておるでな。…ではなくてとりあえずその手をどけよ。見ておれぬ』


「あれ?神様初心?」


『目の前で見せられたくはないわ…』


ふっと人形が消える。


「あー消えた」


『何故名残惜しそうなのだ…』


「いやーかつての自分に浸ると言いますか。あとはそのうちこれと似たようなもの受け入れるのかなーと」


『だからと言って服の上からと言えどあそこにふれるか?』


「自分のだから問題ねえ」


『わけが分からぬ…』


そういうと座りなおす優美。


「まーなんだかんだ言ってももうこの体に慣れちまったなあとは思うね。昔の自分見てても他人っぽく感じるっていうか?まあ自分なんだなってのはあるんだけどさ」


さすがに一年もの間、

別の体で生活してればそんなことにもなるというものである。


『ということはそろそろ恋愛対象の方も…』


「あーんーえー、…まあ、実際千夏も受け入れちゃってるし、正直言うと俺もそこまで抵抗心も無いかなーっていうのが正直なところ。まあ可愛い女の子は今でも好きだがな!」


『意外であるな。もっと時間がかかるかと思ったが』


「いやまあもうなんかいいかなっていうね。そこまで嫌悪することも無いじゃない。千夏見てたらなおさらそんな気分になってきてさ。付き合うくらいならもうそこまで抵抗ないね。後はまー相手がいればって感じ?」


『…もうおるのでは』


「えー?聞こえんなあ」


『聞こえとるではないか』


「まあまあ、あの子はまだよ。ちゃんと約束の期限が来るまではってね」


『…なんだ、ちゃんと分っとるのか』


「そりゃそーさね。自分から言い出したことだもの。最近よく会うし?」


『そうか。安心した』


「安心する要素あった?」


『ずっと独り身かとな』


「相手が出てこればそれはない」


『そうか。…さてと』


「そろそろ時間だ」


『…それは我のセリフでは…』


「だってそれしかないじゃない。じゃあまた会おうぜーべいべー」


『軽すぎであろ…まあよい。それではな』


「うっす」


辺りが光りに包まれる。


□□□□□□


「…ん、朝か」


がばりと起き上がる優美。


「…むう」


唸る優美。


「…恋人とかって実際どうなのかねえ…千夏に聞いてみようかしら」


呟く優美であった。


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