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またいつか

「くふぅ、だいぶ泳いだなあ」


「まあ泳いだっていうか浮かんでたっていうか」


「まあ浮いてた時間の方が長いけどね。ちょいと休憩」


「あい」


パラソルまで戻ってくる二人。


「ほら」


「ありがと」


千夏にジュースのペットボトルを渡す優美。


「まあこんだけ暑かったしそろそろ中身溶けてるだろうと思ってね」


「うん、もうほとんど液体ですね」


「飲んだらちょうらい」


「あい」


パラソルの下で寝ころぶ優美。


「どうでもいいけど、ビーチのパラソルの下ってなんか寝心地いいんだよね」


「そうなの?」


「暑いはずなんだけどな。風あるせいか普通に寝れるっていう」


「へえ。あはいこれ」


「ん、さんくす」


千夏からペットボトルを受け取る優美。

いかんせんクソ暑いので、

飲み物は欠かせない。


「どうよ、初海」


「うん。楽しい。塩辛いけど」


「まあ海だしな」


「クラゲとかは嫌だけど」


「たぶん好きな奴はいねえと思うがね」


「まあ友達と来てるから楽しいってのはあると思う」


「まあそりゃそうでしょうな。俺らだし」


「気の置けない仲」


「あい」


千夏は座ったままである。

髪の毛をあんまり下につけたくないらしい。


「体が乾くまでちょっとここにいようかなあ」


「いるんですか?」


「ちょいとふやけ気味だったもんで」


「ああうん、確かに。しわしわ」


「でしょ。まあどうせ時間はあるからゆっくりしよやあ」


「そうですねえ」


しばらく休憩である。


「…んあー、波に揺られる感覚が寝ててもくるー」


「くるものなんですか」


「流れるプールとかいたときってさ、その日寝るときになると流されてるみたいな感覚になりませんでしたかね。それの海バージョンってことさ」


「どんな感じ?」


「まさしく波に揺られている感じですわ。若干気持ち悪いぞこれ」


と言いつつも寝ころんだ体勢のままの優美である。

まあもう慣れたもんである。


「ちょっと私波打ち際いってくるよ」


「いてらー。って何するのさ」


「暇だし、ちょっと砂遊び的な」


「さいですか。ナンパに気を付けてねー」


「お、おう。ありえそうなのがなあ」


「実は周りはずっと狙ってたり」


「…無いといいなあ」


「じゃあまあなんかあったら起こせよし。寝とるでたぶん」


「りょー」


千夏が太陽光の下に出ていくのを見る優美。

それを最後に目を閉じる。

寝る気満々である。


「…まあ寝不足だし、いいよね」


そのまま意識が闇へと落ちた優美であった。


「…ちゃん。優美ちゃん」


「んあー?」


「まだ寝てるんですか?」


「あり、どんだけ時間立った?」


「一時間くらい?」


「おっぷ寝すぎた。お前もういいの?」


「十分遊んできたですよ」


「そうなのかー」


「あとやっぱり視線が気になって逃げてきた」


「また目からビーム浴びてきたのか」


「あい、やっぱり浜辺だと目立つんですかね」


「そうじゃないの。美少女が砂遊びしてれば」


「そういうもんなんですかね」


「というか近くを通った時に砂遊びとかしてる人がいると、性別とか関係なしにちょっと見ちゃうのはあるよね。で、お前の場合はそっからさらにあるから」


「見られると」


「しょゆこと」


「それでーまだ寝てるんですかあ?」


「ん、もう起きるよ。なんか砂飛んできたのか砂まみれだし海行かねば」


「じゃあ私もー」


「ひと泳ぎ行こうぜー」


「おー」


というわけでもう一回海に入っていく二人。

ただ今回は浮き輪類は持っていないので泳ぐ気なのであろう。


「そうして今さらだけど沖合にゃ出れねえな俺」


「足つかない的な意味でですか」


「うん、プールなら別にいいんだけど海はやっぱちょっと怖いわ」


なので泳ぐ範囲は一応足が届く範囲に限定しておく。

まあ、そうなるとかなり近い場所になるのだが。


「がほっ!ちょ、泳いでる最中に横から波は反則だって」


当然岸に近づけば波も強くなるので、

波に押されてひっくり返ったりと大変である。


「あぶー、足つくって言っても立ち泳ぎしねえと頭の上くらいしかでねえという…あれ?千夏ー?」


ぶつぶつ言ってたら千夏がいない。


「ぷはー!」


「あ、また潜水してたのか」


「あい。潜水してました」


「突然いなくなるのやめてくれーよ。沈んだかと思うだろ」


「沈んだという点では間違ってないけどね」


「自分からもぐってるから沈んだとは言わない」


「まあねー」


「というか一応お前頭でるのなここ」


「まあうん。呼吸できるくらいには」


「俺もそんくらいは身長欲しい」


「もうちょっと浅いとこ行ったら?」


「それだと波が強すぎてあれだしなー。もういっそ千夏の上に乗って泳ぐか」


「何その状況。っていうかそれなら浮き輪使いなよ」


「ああ、確かに」


「なんでそっちに発想がいかないんですかねえ…」


その後も泳ぎまくった二人。


「じゃーあそこまで競争な」


「近くないですかね」


「海って波で流されるから以外と距離あるような感じになるんやでー」


「へー」


「じゃあ、よーいドン!」


「ちょ、早いって!」


ただ適当に泳いでみたり。


「ぷはー」


「優美ちゃん、なんか乗ってるけど」


「え、うわ、わかめ。きも」


たっぷり数時間泳いだ二人である。


「…そろそろ上がるべか」


「そうだね」


「というか日が落ちてきたしそろそろ帰るべきだなこりゃ」


「あれ、もうそんな時間」


「楽しい時間はあっという間だぜ」


というわけで海から上がる二人。


「…あれ?なんかパラソル近いね」


「満潮になったんかね」


「そういえば最初いた位置もだいぶ深くなってたもんね」


「意外と満ち引きってでかいからな。ここはそこまで大きくないみたいだけど」


「そうなの?」


「最初は幼児向けプールくらいの深さだったのが、最後には大人の頭がすっかり埋まるくらいの深さになるようなとこもあったな」


「そんなとこあるんだ」


おそらく太陽を見る限りじゃそろそろ五時過ぎであろう。

着替えにも、

帰るのにもそこそこ時間がかかるので、

そろそろ行動を起こさないとやばい。


「さてと、ちょっとビーチサンダルの砂落としてくるわ」


「あ、私も」


波打ち際でサンダルの砂を落とす二人。


「あ、さっき私がつくってた砂の城のようなものが波にのまれてる」


「やっぱりだいぶ満ちてますなあ海」


「ですねえ」


「さてと、足元綺麗になったら行くですよ」


「ああうん。オッケーって駄目だ。波のせいでまた砂ががが」


「波が来る前に逃げるのじゃ」


というわけで荷物まとめてシャワーを浴びに向かう二人。


「これを持て」


「これは?」


「中に500円入れといた」


「え、シャワーって一回100円じゃないの?」


「一回って一分だぞ。お前絶対足りないだろ」


「あ、うん。無理。ありがと」


「ん。あ、そこ開いたっぽいよ」


「いってくるでお」


「いってらー。俺外で浮き輪洗って空気抜いてるべ」


「あい」


「あ、あと、もう面倒だから中で着替えてこいよ。洗った後に水着着てたら意味ないっしょ」


「まあそうだね」


「つーわけで着替え」


「あんがと」


「じゃあいってら」


シャワールームに入っていく千夏。

しばらくでてこないので、

浮き輪の空気を抜きにかかる。


「む…力があんまりないせいかあんまり勢いよく空気が抜けんな…それともやり方悪いだけ?」


一応出ているのだが、

すこぶる勢いが悪い。


「…まあ、あとで千夏出てきたら一緒にやってもらお」


そうこうしてるうちに数分経ち、

着替えも済ませた千夏が出てきた。


「終わったか」


「うん」


「じゃあちょっと荷物見てて。俺もやってくる。後浮き輪の空気抜けたらぬいといてー」


「りょー」


シャワールームに入る優美。


「…男の時代は100円で足りたが…いけるかなー?」


100円を投入してシャワーを浴びる。


「…やっぱ髪の毛塩水浴びてるなあこれ。ごわごわやでえ」


優美も髪が長いので、

やっぱり洗うのは大変である。


「…もう100円使うかなあ」


結局200円使って体を洗い終えた。


「着替え―っと。ここでの着替え濡れるからあんまりしたくないんだよねえ…まあしかたないんだけどさ」


当然更衣室ではないので、

シャワーの水でべたべたなわけで。

着替えが濡れると面倒ではある。


「よっと」


とはいえどもう慣れたもの。

ぱっと着替える。


「…ポニテは無理だな。ちゃんとシャワー浴びてからにしよ」


髪の毛が塩分を含んで

ひどいことになっているので、

結ぶのはやめておく。


「お待たせ―」


「お帰り」


「つーわけで…帰るか」


「そうだね」


「あ、というか空気抜いといてくれましたか。ありがと」


「ほい」


空気の抜けた浮き輪を持ってきたカバンに押しこむ。


「じゃあ帰ろうぜ」


「はい」


荷物を持って海の家を後にする。


「というかお前もツーサイド無理か」


「んー、まあやるならちゃんと髪の毛洗った後で」


「だよね。ごわごわする」


「すっごいする」


「ある意味珍しいな。外いるのに二人とも髪下ろしてるって」


「確かに。基本的に二人とも結んでるもんね」


「な」


駅の方へと向かう二人。


「で、楽しかったか?」


「さっきも言った通りですわ」


「ならよかった。来年も来ようぜ」


「うん」


「まあ別に来週でもいいけど」


「まあそこらへんは予定と相談です」


「ま、そうか」


まだ夏は長い。


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