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氷の世界

「…かぁー」


「どうしたの優美ちゃん」


「いやーね。なんだかんだ最近外行くこと多かったから家いると暇だなーと」


「まあうん。確かに」


「お前は暇じゃないはずだけどな。宿題あるっしょ」


「な、なんのことかなー。というか今やってるけどね」


座布団を並べたうえで寝転がる優美。

その横で宿題する千夏である。


「しかしクーラーの中にずっといるとだるいな体」


「切れば?」


「死ぬ」


「私は大丈夫だけど」


「俺が死ぬ」


「貧弱」


「うっせ」


昔っから暑いときは何も考えずにエアコンの電源を入れていたのが優美である。

今さらエアコンなしとか無理である。

扇風機は熱風だし。


「またどっかいくべきかな」


「どっかでどこに?」


「冷気を浴びれる場所にこう」


「何処に行くです」


「さあ…氷あるところ?」


「この前食べてなかった?」


「食った。だから今度は物理的に氷に覆われた場所なら涼しんじゃねえかなと」


「どこ行く気ですか。ロシアでも行きますか。それともマイナスうん十度の世界の体験できるところにでも行きますか?」


「さすがにそんな遠い所はいやだな。ロシア海外だし」


「いや真面目に答えなくていいからね」


「一番いいのはオーストラリア行くことだな。季節逆だし」


「そのためだけに飛行機乗るんですか」


「舞空術でも使えねえかな」


「どこのスーパーうんたら人ですかそれ」


「もしくは瞬間移動」


「もはやなんでもありですね」


「実際できたらとんでもなく便利だと思うんだけどな」


「それは思う」


「学校行くのも超楽になるだろうしねー」


「始業のチャイムきっかりにワープする」


「極限まで寝てられますな」


「放課は家に帰ってくるんですね分かります」


転がったまま頭の下に手をやりつつ天井を見上げている優美。

突然起き上がって千夏の方を向いた。


「そうだ。スケートとかどうですよ」


「いきなりですね」


「涼しそうじゃね?氷だし」


「いやまあそうだけど」


「けど?」


「あるの?近所に」


「こういう時にネットですよね」


「なんで既においてあるのさ」


「いや暇だったからPCやろうかなと思って持ってきてたんだけど」


「けど?」


「喋ってたらやる気失せてそのまんまみたいな」


「成程」


「というわけで検索かけるよー」


「というか今日いくんですか」


「ん、お前が嫌ならやめとくけど」


「行くなら行くです」


「ならば問題ないな」


というわけで知らず知らずに身についたブラインドタッチで検索かける優美。

継続は力なり。

伊達に六年間毎日PC触ってない。


「おーあるよあるよ」


「あるんですか」


「ありますね。予想外です」


「予想してなかったんですか」


「いやさすがにないかなーってさ。あったけど」


「ここら辺なんでもありますね」


「多すぎねーか。娯楽施設的にもスーパー的にも」


「手の届く範囲に全部あるよね」


「なんつー好条件立地」


「しかもここって中心に近いからどこ行ってもわりと近いとかいう」


「マジで立地いいなここ。石階段に目をつぶれば」


「50段は結構多いよねえ」


「まあ山の中だししゃあないっちゃそれまでだが」


「まあねー」


「じゃあいくかな」


「ちょっと待って―これだけ終わらせたらー」


「りょ」


というわけで外に向かう二人。


「優美ちゃん相変わらずラフいね」


「暑いからシンプルイズベスト」


「オシャレしよーよ」


「知らん」


「やっぱり私が選んだ方がいいのかなー服」


「やめてくださいお願いします」


「着せ替え人形不可避」


「やーめーてー」


というわけで検索かけた場所にたどり着く二人。


「というかスケートシューズどうするの?」


「借りれるんじゃね」


「調べてないんですか」


「忘れてた」


「おい」


「てへっ」


「その見た目なら許す」


「女ってお得ね」


というわけで中に入る二人。


「俺に合う靴あるんかね」


「ちっちゃいもんねー」


「小学生ですからねほとんど」


一応あったらしい。

というわけで靴はいて中に入る。


「おわっとっと…久しぶりにはくとバランスとるの大変ね」


「確かにちょっとふらつく」


二人とも一応経験はしているので滑れる。

が、最近来ていないという点では同じである。


「というか思った以上に人いっぱいいるね」


「夏にあえてスケート」


「意外といいかもしれんな」


というわけで氷のフィールドへ。


「すーっとね」


「久しぶりだわーこの感覚」


やっていなかったと言えど、

一度体に染みついた感覚と言うのは忘れないものではある。


「…なんというか髪が後ろになびく感覚が謎いな…」


そりゃまあ男の時代にゃそんなもん当然なかったわけなので。

滑って後ろに髪がなびく感覚は初めてではある。


「く、これでスピンできたらいいのにな。そしたら映えるだろうに」


残念ながらそういう技能は備えていない。

というかぶっちゃけ怖くてやりたくないが正しい。

失敗した時の事を考えるとやりたくない優美である。

痛いのは嫌だ。


「あいつはよく滑りますねえ…」


基本的に直線を普通に滑ることと、

せいぜい曲がるくらいしかできない優美であるが、

反面千夏はわりと色々やっている。

まあスピンとかは無理らしいが。


「にしし、眼福眼福。美少女が滑ってるのっていいよね。しかも知り合いだからがん見しても平気だし」


実際ただ滑ってるだけでも結構映える。

千夏は何やら色々やっているので余計。

まあそうやって滑りながらみている優美も当然見られているわけだが。


「優美ちゃーん」


「んー何」


ある程度滑って、

端の方でちょっと止まっていると千夏がやってくる。


「なんか視線がぞわぞわする」


「今に始まったことでもあるまいよ」


「そうだけどーそうなんだけどーやっぱ気になるよ」


「目立つんやでしゃあない」


「なんで優美ちゃんはあんまり視線受けてないのさ」


「そりゃ幼女だから投げかけられる視線が別物なのさね。微笑ましいもの見る目が結構飛んでくるぞ」


「あ、一応感じてはいるんだ」


「そりゃ感じるよ。視線ってすっごいよく分かるもの」


実際後ろから見られていると

悪寒を感じたりするのですぐわかるものである。


「お前は大変ね。性的な目もあって」


「言わないで―」


「まあむだに発育いいからしゃあないな」


「嫌味ですか」


「嫌味だ」


「嫌味なんかい」


「まな板幼女からしてみたら嫌味も言いたくなる」


「でもひんぬーの方が好きって言ってたじゃん昔」


「好きだがやはり自分がなるのであれば多少胸はあってほしかったという願望。もめんし」


「そこかい」


「そこだ。つーわけで帰ったらもませろ」


「どうしてそうなる」


若干千夏が羨ましい優美であった。


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