とれた
前回最後が気に食わなかったので編集したらまた続きが…
というわけでプール回ラストです。
「んじゃー俺はこっちのプール入ってくるけどお前らは?」
浮き輪に空気を入れつつ言う優美。
今から行く予定のプールは優美の身長からいけば
かなり深いので、
一応保険である。
単純に乗って遊びたいのもあるが。
「私たちもまずはそっち行くよ」
「そうかいな」
というわけで流れてないプール、
もとい50mプールの方にやってきた四人。
一応泳ぐための場所もちゃんと用意されているようである。
「よっと」
膨らませ終わった浮き輪を水面に放り込む優美。
続いて自身もプール内に入っていく。
「うわっ、やべ、深」
沈みそうになったので慌てて立ち泳ぎで上に上がってくる優美。
やはり今の背では少々深かったようである。
「優美ちゃん大丈夫?」
「大丈夫ではあると思うよ。たぶん」
千夏の呼びかけに答えるくらいの余裕はあるのでたぶん大丈夫であろう。
泳げるので溺れることはたぶんない。
「ふー」
浮き輪に乗って一休み。
さすがに常時泳ぎ続けていたらいつか体力切れになるので。
「くくく、優美ちゃん捕まえたぞー!」
「うおい!どこ触ってんだお前は!」
後ろから入ってきたのであろう、
佳苗が優美を捕まえる。
色々と機動性が低い浮き輪では逃げるのも不可能である。
あっという間に浮き輪から引き抜かれる。
「ちょ、なにこの抱っこ状態」
「一回やってみたかったんだよねー。おーなんかもちもちしてる」
「つっつくのやめてくれませんかねえ…いや全身でもむのももっとだめだからね?」
「まあーよいではないかー」
「よくねえ!…あーというか浮き輪流れてるし。千夏―ちょっと浮き輪お願いー」
「あ、うん分かったー」
流れるプールではないとは言えど、
人の動きでいやでも水の流れはおきるのである。
当然それにのまれれば浮き輪が流されるのは明白である。
「じゃあ、入りますか?」
「う、うんそうしよ」
というわけでプールにインする千夏と茂光。
「よいしょっと。これでよし」
浮き輪をひっぱって自分で乗る千夏。
「…」
さりげなく浮き輪の紐部分を掴む茂光。
「あ…だ、大丈夫だよ?別に泳げるから」
「それでも、流されてったら大変ですから。これならどこかに行ってしまうこともないでしょう?邪魔になったら言ってください。離しますので」
「う、うん」
というわけで浮き輪の紐を持ったまま泳ぎ始める茂光。
当然、浮き輪に乗った千夏はついてくる構図になっている。
さながら馬車馬に姫様の状態である。
「…あの、俺も泳ぎたいんだが」
「だーめ、もうちょっとこのまんまでいるの」
「プールに何しに来てんだよ…」
「優美ちゃんを捕まえる絶好の機会を今か今かと待っていたのだよ!」
「こええから!」
こんな感じでとらえられてしまえば、
優美側からの脱出はほぼ不可能である。
いかんせん体格差がありすぎるのである。
「むう…」
「へへ、可愛い」
「連呼すな」
「こんなに可愛いのに神社回してるのってほとんど優美ちゃんなんだよね?」
「いやまあそうだけど」
「やっぱり神社の仕事って大変なの?」
「んー?まあ確かに年末とかは地獄だったけど…普段はむしろ暇?」
「そうなの?」
「何を想像しとるか知らんけど今のところ俺は掃除して、ちょっと御札作ってーくらいだぞ。ああ、あと子供の相手とかはすることあるけどこれ仕事じゃねーしな。あとは販売所での売り子とか?」
「え、こうなんか迫りくる妖怪とかをぶっ飛ばしたりはしないの?」
「アニメの見すぎだ。現実にんなもんあってたまるかよ。…まあたまに霊関係のことにも手え出さなあかんことはあるけども…」
「そういうのはあるんだ。いやー優美ちゃん偶に刀みたいなの持ってたし、ちなっちも弓道してるからこうなんか来るのかなーと」
「あるにゃあるけどあれ模造刀だし。千夏も弓道やり始めてからそんなに時間立ってないっていうか今の学校に転校してからだしな。やり始めたの」
「あれ?そうだったんだ。いやーちなっちの事だからもう既に完璧なんじゃないかなーとか思ってたけど」
「あいつお前らの間でどんなふうに見られてんだ…?」
「え?女子力のとんでもなく高い女の子?」
「弓関係なくねーか?あといい加減開放せいや」
佳苗の腕から脱出を図る優美。
というよりかは出してもらったが正しいが。
「しっかし足がぎりぎりつくかつかないかのラインってきついなこれ。プールサイド近くにいないと下手したら沈むぞこれ」
「遠慮せずに私の下に来てもいいぞ優美ちゃん!」
「いかねーよ!また色々やる気だろ!」
とかなんとかやってたら近づいてくる影。
茂光と千夏コンビである。
「どうかしたかー?」
「ちょっと私達スライダー行ってくるよ」
「あ、そう。じゃあ浮き輪貸して」
「はい」
というわけで浮き輪に乗る優美。
「しっかしあのスライダーによく行く気になるな?」
「まあ、あれぐらいならね?」
「ほとんど縦に落ちてる時点でぜってえ行きたくねえわ」
プールサイドに上がる千夏。
「おい、茂光。離れたくないからって一緒に抱き合って滑ろうとかするなよ。あぶねえから」
「さすがにしない!というかそんなことしたら俺が…」
「ああ、うん。爆発しちゃうか。どことは言わないけど下の方が」
「優美ちゃん本当にそういうところに羞恥心ないな」
「悪いがそんなものは無限のかなたにさあ行こうしちゃってるんでね。まあ怪我はしないようにな」
「ああ」
というわけで階段を上る千夏と茂光。
「うわ、思ったよりもここ高いや」
「確かに、けっこうありますねえ高さ」
下から見るのと上から見るのでは結構な違いである。
「というか並んでるね結構」
「まあ休みですしね。人自体はいっぱいいますから」
「ちょっと待ちかあ」
それから数分。
上まで上り詰めた二人。
「あっつー…干からびますねこれ。数分で」
「今からもう一回水に浸かるから大丈夫だよ」
「恵みの水ですか」
「干上がったお肌に水分が」
というわけで先に並んでいた茂光が滑ることに。
「じゃあ千夏さん。下で」
「うん。行ってらっしゃーい」
「行ってきます…うわっ!」
猛烈な流れに押されて一瞬で消えていく茂光。
見てるぶんにも相当な勢いである。
「あ、飛沫上がった。落ちたっぽい」
なかなか盛大に水しぶきを上げながら落ちた茂光。
小さくなった人影が水場の外にゆっくり出ていくのが見えた。
「…私か」
後ろには列が続いているので、
後戻りはできなさそうである。
まあする気はないのだが。
「よーし…」
というわけで流れに入る。
まだ横を掴んで流されないようにしているのだが。
「…?」
謎の違和感が体を襲う。
なんだろうか。
不明である。
「いくぞっ…!」
勢いよく流れる水流に身を任せ、
そのまま下へと落ちていく千夏。
思った以上の速度で下へと落とされ、
盛大に水の中へと消える。
「ぷはっ!」
外へ顔を出す千夏。
なかなかすがすがしい顔をしている。
楽しかったらしい。
そんな千夏の目に映る、
なにやら布状の物が水面に。
「…!?」
ばっと胸を押さえながら水面下へと沈み込む千夏。
当然というかこんなところに浮いている布状の物とか一つしかないわけで。
端的に言えばブラである。
千夏の。
とりあえず手を伸ばしてそれを掴みとり、
水中で付け直す。
もうこれくらいなら慣れた。
「げほっ!げほ…はあ…危ない」
そうして外に上がろうとした千夏。
そんな千夏の前に一つの影があった。
千夏が来るのを待っていた茂光である。
「あ…ああ…」
「…」
「…み、み、見た?」
「…え、え、えーっと…その…すいません」
「…ああぁぁ…」
結局帰るまでなんとも言えない空気が抜けなかった二人であった。




