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_____夢の浮橋2_____

『おい、起きろ。起きろ優美よ』


「んあ…あと5分…」


『典型的すぎる回答しておらんと。本当はちゃんと聞こえておるのだろう?』


「ばれたか」


優美が目を開けて体を起こす。

目の前にいるのは美少女である。

ただし狐の耳としっぽつきの。


「夢の中で起きろって言われるのもなかなかねえんじゃねーかなと思う」


『そなたを呼んだらちょうど机の上につっぷした状態だったのだ。起きろと言うほかあるまい』


今優美がいるのは夢の中。

目の前にいる狐娘は神社に祀られている神である。


「というか、今日ははじめっから部屋あるのね」


『消すのももったいなかったのでな。そのままにしておいた」


そうして優美がいるのはいつもの家のリビング。

ただし現実のものではなく、

部屋もここしかない。


「そりで、なんの御用でひょーか」


『まあ…その、用らしい用は今回も無いのだが…』


「ということは、また人肌さみしくて呼んだんですかい?」


『…まあそういうことだ』


「神との対話の理由軽くね?」


『今さらであろ。それに最近色々あったからな』


ただの友達みたいな関係になってる二人である。


『しかしまあ…案外早かったな。千夏は』


「えーっと、早かったって言うとやっぱりあれか?」


『言うまでもなかろ。ここまで早く相手を見つけるとはな。普通ならこうはいかんだろうに』


「まああいつにとっても想定外だったと思うよ?本人もまだまだ無理―ってずっと言ってたし」


『のわりには乗り気に見えたが…』


「乗り気ではあるんじゃないかな?結果論だけど受け入れたわけだし」


実際、千夏とて、

こんなに早くあんなことになるとは思っていなかったわけで。


『しかし、そなたはあんまり驚いてはいないようだな』


「んー、そう見える?」


『そう見えるな』


「残念、不正解。実際めっちゃ驚いてるよ?」


『のわりにはあっさり言うな』


「いやね、正直言うと、あいつが付き合うって決めたことはそんなに驚かなかったよ。なんかそうなるんじゃねえかなとか思ったし」


『では何に?』


「あいつにまた告白されたーって聞いたときかね。良い雰囲気だなとは思ってたけどさ」


されるにしてももう少し先じゃないかとか思ってた矢先のあれだったので、

まあ驚いた。


「まあその後はなんかもうそうなるんじゃないかって思ったさ。あいつが真面目に考え始めてたしね」


『ふむ…まあ確かに千夏はその手の話をされてもあまり真剣に耳を傾けようとはしていなかったな…』


「厳密に言うと、どうやって断るかを考えてたが正しいな。華麗なるスルーを連発してたわけだし?」


告白自体はされても、

伝家の宝刀、

まずは友達から―、

でだいたい撃退してきたわけである。


「まあ、俺も後の方は若干あいつらの仲が進展するように手伝ったりもしてたけどね」


『まあ、千夏が最初に何かしら聞いてくるのは大概がそなたであるからな…』


「信頼関係は最強だと思うのね」


まあそれでもせいぜい最初に告白されたことを聞かされた時と、

夏祭りの時くらいしか手伝ったことは無いが。


「まあ俺はあいつらの仲は普通に祝福するよ?普通に嬉しいことじゃん」


『そうか?千夏が取られたとかそういう感じはないのか?』


「ナイナイ。いやまあ、無いと言えば嘘にゃなるけどね?」


『やはり、あるのか?』


「そりゃーね?なげえ付き合いだしな?性別違ったら付き合えるくらいには仲良いと思うしね?」


『なんなら今から片方だけ戻しても…』


「さすがに今さらやられると困るって。今のあいつは幸せそうだからそれでいいの」


実際、

今片方がもとに戻ると、

いろいろ大変なことになることは想像に難くない。

生活面でも精神面でも。


「あいつらあのまんま行くとこまで行っちゃうのかなー」


『それは分からぬ。相性は相当良さそうではあるが』


「なんかそういうこと出来ないん?未来予知的な」


『我の力とて、できないことはある。仮にできたとしてもやりとうない』


「ありゃ、そりゃまたどーして」


『仮に未来がのぞけるとして、見てしまってはつまらんであろう?』


「まーそりゃそうだけど、未来は変わるものとか言うし」


『仮に変わるとするならば、もはや見る意味など無さそうではないか?』


「…まあそりゃある意味そうか?可能性の一個なら、別に見なくても一緒かもね」


知らないうちに用意されてるお茶に手を出す優美。

もはやこの不思議空間での行動も慣れたものである。


『それで、そなたはもう相手は見つけたのか?』


「ぶっ!?げほっ、げほっ」


その言葉に反応してお茶を吹き出してむせる優美。

噴出したお茶が空気中で光の粒子となって消える。

後には何も残っていない。


「おお、すげえ。…じゃなくて、いきなりそんなこと聞くなよ。むせるだろ」


『むせたな』


「だから言ってんだよ」


そこらへんは夢世界なのでどうとでもなるのだろう。


「というかなんだよいきなり」


『いや、千夏が相手を見つけたというのなら、ふつうに考えれば次はそなたであろう?』


「なんでさ。俺は相手いねーよ」


『本当にそうか?』


「本当もクソもあるけえ。この見た目でよってきたやつとか全員ロリコンじゃねーか」


『まだ成長期であるが故、心配は無用』


「そこは成長させてくれたりしねえのな」


『さすがに背がいきなり伸びていたりしたら違和感しかないであろう』


「いなかった人間をはじめからいたことにできるくらいの力はあるのによく言う」


『本当に望むのであれば考えるが…』


「いんや、別に今のまんまで俺はいいよ」


『やはりな』


「なにその知ってました候感」


『なんだかんだ言ってそこそこ気に入っておるであろ。その体』


「まあね?幼女なのは置いといても普通に可愛いし。客観的に見て。あと髪の毛ストレート」


『最後のは重要なのか…?』


「とんでもなく重要だぜ」


元々は天然パーマ勢だった優美である。


『それで、そなたはどうするのだ』


「どうもしねえ。相手がいたらそりゃありえるかもだけどね?」


『そういえば将来を約束した仲の子が一人おらんかったかの』


「あ、あれは別に、将来約束したわけじゃねーし。たぶん、他の子見つけるでしょ」


『分からんぞ?案外、約束を本当に果たしに来るかもな』


「…ま、まあ、その時は…うん、前から言ってるけど、考えるよ?うん」


『そうか。楽しみだな』


「楽しみだなって…楽しんどるんかい!」


『そなたらの生活は見ていて楽しいぞ?』


「かー!そういやこの人どんなストーカーよりも性質悪い覗き魔だった!」


『いやあれは、そなたらを見守るっていると色々勝手に目に飛び込んできてだな…』


「言い訳無用!おまわりさーん!」


『神に人間の法で裁けるとでも?』


「く、ならばこの手で裁いてくれるわ!」


ふざける二人。

神との戯れ。


「まあ、俺もどうなるか知らんけど、流れでなんかなるんじゃねーかな。今は無理だが」


『そうか。まあそう言っていた千夏はもう相手がいるようだが』


「俺はそうはならないからね!」


周りの空間が薄れだす。


「おっと、もう朝か?」


『ああ。そなた、この空間に慣れてきておるな?』


「だってこれ何回目よ?」


意識が遠のいていく。


「じゃーな。また呼んでくれ」


『その言葉に甘えさせてもらうぞ』


そのまますっとすべてが白く染まり…


□□□□□□


「…朝か」


布団で目覚める優美。


「…俺って成長してるんかね?これ」


ふと自分の体を見て思う優美であった。


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