おかえり
これにて修学旅行完。
「…」
うろうろと神社の石階段下でうろつく見た目幼女、実際年齢高校生なのが一人。
落ち着かない様子で数分間うろうろしている。
もしも上の神社に一度でも来た人間ならきっと知っているだろう。
ここを切り盛りしてる巫女の一人。
優美その人である。
「…むぐぐ、着いたら連絡するように言っとくべきだったか…」
通過していく人がちらちら見ているが
当人は気にしていない。
まあ相変わらずの巫女服なので目立つっちゃ目立つが、
別におかしいことではないので。
「まーだかなー、まーだかなー」
今日はいつも持っている箒すら持っていない。
ただ待ってるだけである。
「…お、あれは」
うろうろふらふらしていた優美の足が止まって道の先へと目が向けられる。
ここに来てから無駄によくなった視力をフル活用して
道の先に点みたいな人影を見つめる。
「全くやっときたか。いやこれは学校側が遅れたんかな?」
遥か彼方から大きめなキャリーバッグを引きながらやってくる人影。
いつものツインテールが風にたなびいている。
優美が大きく手を振れば向こうもそれに気付いたのか手を振りかえす。
千夏である。
突然優美が笑顔で手を振り始めたので
さっき以上に周りの目を引いているが
やっぱり当人は気にしていない。
そんなことより千夏が帰ってきた方が大事である。
「ただいまー!待っててくれたの?」
「ふ、ふん!あんたのために待ってたわけじゃないんだから!勘違いしないでよね!」
「ぷっ、なんでいきなりツンデレ」
「いや、なんとなく?くく。まあ、お帰り。遅かったじゃないか」
「いや10分くらいは許容してくださいな」
「いいや許されない。お前が10分遅れるのは十分犯罪が関与する可能性がありうるからな」
「いやさすがにそれは」
「美少女とは罪深き存在なのだよ」
「それ罪なんですかね」
「罪じゃねーの?周りの男どもを容易に狂わせる」
「いやサキュバスじゃあるまいし」
「ま、別に無事に帰ってきてくれたから構わんけどね」
久々に話せて嬉しいのか優美もにこやかである。
「とりあえず家帰っていいですかね。荷物おいてきたい」
「ん、ああせやね。じゃあまあ地獄の50階段頑張って」
「うええ、そうだったこれもって登らないといけないんだった…」
「まあ俺も鬼じゃねえから手伝ってやろう。光栄に思いたまえ」
「やけに尊大ですね」
「わざわざ美幼女が手伝ってやってやるのです。感謝しやがれなのです」
「ついに自分で幼女言い出した」
「前も言ってた気がしなくもないけどな。どのみち見た目は幼女よ幼女。さあとりあえず運ぶぞー」
「おー」
そこそこ重たいが、
持ち運べないほどでもないので
二人で運んで行く。
「初めての共同作業ってね」
「違います。というか初めてでもないし共同作業」
「まあな」
ようやっと上へと運び終える。
こういう時は家の前の石階段は相当つらい。
これを毎日上り下りしている千夏の足腰も結構鍛えられてそうである。
「ふー」
「はー神社だー」
「全く、お前いないと大変だったぞ」
「なんかあったの?」
「夜が超絶こええ。もうなにここ超怖い」
「びびりすぎじゃないですかね」
「もうなんかね、風でどっかが揺れる度にびびるびびる」
「まあ立てつけ悪い所もあるしねここ」
「なんかの足音が聞こえたような気がしたりね」
「それは気のせいだよ」
「気のせいであってほしいですな…」
若干その手のスキルが上がってきているせいで、
偶にその手の事に遭遇することもあったりする。
滅多にないのが幸いだが、
毎回気絶しかけるのでやめてほしい。
「ま、ともかく、これでようやく枕を高くして眠れるわ」
「私は魔除けか何かですか」
「いやまあそういうわけじゃあないけどね。見知った仲の相手がいるのはやっぱ心強いからね」
「まあね」
「ま、何はともあれ…」
「ん?」
「…お帰りっ!」
「…ただいま!」




