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寝る前のひと時

「うう…なんでお風呂でこんなに疲れて…」


「あははーそんなに疲れた?」


佳苗に向かって、

優美級のジト目を送る千夏。

そりゃ風呂でさんざんいじって疲れさせた張本人は佳苗であるので。


「ちょ、そんな怒らないでよー」


「誰のせいだと思ってるんですかね…」


「ちょ、千夏ごめんってー!あー先行かないで―!」


というわけで大浴場から退散する二人。

時刻は9時をまわっている。

とは言えどこれでだいたいの作業は終了。

あとは消灯時間になったら寝るだけである。

まあ部屋長会はあった気がするが。


「ああ、終わりましたか」


大浴場を出て自分の部屋へと戻る途中に居たのは茂光であった。


「早いねしげちゃん」


「まあ頭と体洗うだけですしね。10分もあれば終わります」


ここで千夏の頭によぎるのは以前の自分の姿である。

だいたい30分以上、下手すると一時間以上も風呂に行っていた自分はなんだというのか。

ちなみに、優美にこのことを話したら何してたらそんな長くなるんじゃとつっこまれた。


「というか布団もう敷いてくれたんだね。私たちがいない間に」


「ああ、さっき敷きに来てくれましたよ」


ここの布団敷くのは、

ホテルの方でやってくれるので楽である。

まあ別に千夏的には毎日やってるので

やらされても特に問題はないのだが。


「寝るまで何する何するー?」


「トランプくらいなら持ってきたけど」


「おー!いいねいいねやろやろ!」


「あー、ちょっと俺部屋長会あるんで」


「あ、そうだった。私も行かなきゃ」


「えー、早く帰ってきてよ」


「それは先生の話の長さによる」


なお当たり前だが男女別室である。

でもって茂光は他の部屋の部屋長である。

じゃあなんでこの部屋にいるんだという話だが、

遊びに来ているだけである。


「じゃあどうせだし一緒に行こうか」


「そうさせてもらいます」


というわけでまたもや茂光と一緒に目的地に向かう千夏。


「なんか今日一緒いること多いね?」


「そうですかね?」


「うん、いやまあ学校でも結構一緒にいるけど」


いっつも千夏が一緒にいるのは一番仲がいい相手となので、

結果として佳苗と茂光と一緒にいる割合が高い。


「まあ、俺は一緒に居られてうれしいですけどね」


「またまたー、そんなこと言って」


「いや、別に冗談じゃないですからね」


なお茂光も、

出会い方が少々特殊だったが、

千夏に告白してきた勢であることを忘れてはいけない。


「でも私もしげちゃんと一緒にいると楽しいよ?」


「え、マジですか」


「うん。しげちゃんのことは好きだしね」


「…!」


「あ、友達としてね?」


「…あ、ああ、はい」


「あれ?どうかした?」


「あ、いや、なんでも」


千夏本人は今の発言が茂光の心を揺さぶりまくってることには気づいていない。

良くも悪くもこっち方面には鈍感である。

その後部屋長会を無事に終えた二人はそのまま帰還する。

まあ内容はだいたいわかってるような内容だったので。


「あ、お帰り―!意外と早かったね」


時間的には15分くらいだろうか。

そこまで時間は経っていない。

なお茂光は一応部屋仲間に部屋長会での話を伝えるために

一旦部屋に戻っている。

たぶんすぐ来るが。


「えーっと。とりあえず部屋長としての連絡です」


「あ、うんうん」


こっちも一応報告である。

まあ仕事は仕事である。


「あ、しげちゃんお帰り」


「あ、ただいまです」


「なんかしげみっちすっごい自然に来るね」


「部屋の他のメンツ放置でいいん?」


「いや、なんかむしろお前行ってきていいからな?とかにやにや顔で言われたからお言葉に甘えて」


「あー…まああんたの千夏スキーはもうクラス全員知ってるもんね?」


特に公言したわけではないのだが、

普段の言動がまあそう言う空気を醸し出しているので仕方ないと言えば仕方ない。

別に当人たちもそう大して気にしているわけでもないし。


「とりあえずトランプしましょー!」


「お前疲れないのか、そんなにハイテンションで」


「むしろヒートアップして疲れなんて吹っ飛ぶね!」


「私も楽しいことやってれば疲れないなー」


「普通に疲れる俺がおかしいんすかね…」


そのまんま流れでトランプし始める三人。

手近なババ抜きから初めて、

大富豪だの、

神経衰弱、

ダウト等々。


「ふー、さすがにもういいかなトランプは」


「結構やったもんねー」


「ぐぐ…ほとんど負けたぞ…」


「しげみっち弱い」


「う、うっせ。運が無かっただけだ」


というわけでトランプしまいこむ。

時間も消灯時間に近づきつつあるだろうか。


「うわ!二人とも、星綺麗だよここ!」


ベランダに出た佳苗が声を上げる。

ここは宮島。

車が少なく、排気ガスとはほとんど無縁。

昼間こそ人が多いが、

夜の今は静かなものである。

普段住んでいるところも、

そこそこ綺麗に星も見えるが、

ここには劣る。


「おー綺麗」


「星よく見えますねーここ」


上を見上げれば満天の星空である。

快晴なのも幸いした。


「カメラカメラ―」


「…なんというか普通にカメラ使ってる高校生って珍しい気が…」


「やっぱなんか修学旅行の写真くらい本物のカメラで撮りたいって言いますか?」


「…それはよく分かんないわー」


千夏も携帯写真である。

茂光も機械音痴らしいが携帯写真である。

佳苗も携帯持っていないわけではない。

彼女の無駄なこだわりだろうか。


「ちょっと別の部屋からの風景撮ってくる!」


「え、今から?」


「もうちょっとしたら部屋から出れなくなっちゃうから!いつ行くの!今でしょ!」


一人でどこぞの先生をやりながら部屋から飛び出ていく佳苗。

もうちょっとで部屋ごと点呼になるので、

それ以降は他の部屋に行けなくなるのである。


「うーん。なんというかこういう修学旅行もいいね」


「こういう?どういうです?」


「いや、私が前経験した修学旅行ってみんな携帯ゲームとかカードゲームとかばっかやってたから。なんかトランプしながらしゃべるだけの感じが新鮮」


「へえ。そうだったんですか」


当然ここでいう前の修学旅行は、

千夏がここに来る前、高校二年生の記憶である。


「…明日も楽しみだな、このメンバーなら」


「あはは、そうですね。…まあ、川口に振り回されるのは変わらなさそうですけど」


「まあ、楽しいからいいんだよ。それに…」


「なんですか?」


「なんかあったらしげちゃんいるしね。しげちゃんと一緒なら安心だよ」


さらっと言ってのける千夏。

そんな千夏をみる茂光。


「そろそろ点呼だってー!」


「あ、そろそろ行かなきゃ」


「あ、そうだね。それじゃあまた明日。しげちゃん」


「はい。それじゃあまた。お休みです。千夏さん」


そうして夜は更けていった。

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