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旅行先

とことこと。

いつも以上に無駄に気合の入った格好で、

千夏が駅の中へと向かっていた。


「あ、ちなっち―!こっちこっち!」


「うん、今いくー!」


千夏から人の波を挟んで向こう側。

そこにいるのはもはやおなじみ、佳苗と茂光である。


「ごめん、待った?」


「ううん、今来たとこだよー」


「俺もです!」


「嘘つけ!あんた一時間くらい前からちなっち来るの待ってここにいたでしょーが!」


「うわっ!川口っ!それ言わない約束っ!」


「あははは…まあまあ二人とも」


本日は何を隠そう、

修学旅行初日である。

集合場所は別の駅なので、

そこに行く前に三人で集まろうという話になっていたのである。


「それじゃ行こっか。まーまだ時間はあるけどー」


「…つっても一時間くらいだけど」


「佳苗ー。集合場所までどれくらいだっけ?」


「んー、20分!余裕ですね!はい!」


「まあ喋ってればあまり時間なんてすぐに過ぎちゃうから大丈夫だよね」


「俺はむしろこんだけじゃ足りないですね!千夏さんと喋るのに!」


「なんであんたはちなっちに対してだけはこう宣言文みたいな話し方になるのか…」


「普通でいいんだよ?普通で」


「え、あ、いや…こう、千夏さんの前だと緊張するというか…」


「そんなに緊張する必要ないのに。友達でしょ?」


「く…千夏さん。俺のことちゃんと友達だって思っててくれたんですね!感激です!」


「そりゃ私から言い出したことだし…あと、普通でいいからね?」


「はいっ!了解っす!」


「いやあんた。直ってないし」


とりあえずぐだぐだしてると

時間が無くなりそうなので

駅のホームへと向かうことに。


「ちょっと待っててねー。私切符買ってくるー」


「あ、ちなっち私もー」


「ん?ああ、二人とも定期券持ってないんだ」


「しげちゃんは定期券持ってるの?」


「ああ、えーっと。俺の家ってこっから結構離れてるんすよね。定期券ないとやってられないんすよ」


「へー、そうだったんだ」


「じゃ、しげみっちはここで待っててね。私はちなっちと二人で買ってくるから。二人で」


「なんで強調するんですかそこ」


「いやこう、しげみっちを煽る」


「いや、煽ってどうするんですか」


というわけでささっと切符を買って駅ホームへ。


「次の電車は7時54分だねっ!」


「集合時刻って8時30分だったっけ?」


「うんそうそう。って結構無駄な時間過ごしてるな私達!」


「駄弁りながら歩いてたからしゃあねえだろうけどな」


「だが修学旅行はこうでなければっ!」


「いや佳苗ちゃん。まだ始まってないよ…?」


「ほら、遠足は帰るまでっていうから。修学旅行は行くとこからだよきっと!」


「聞いたとこねえよ」


というわけで電車に乗って目的の駅へと向かう。

まあ当然と言うか朝なのでそこそこ混んでいるのだが。


「むぐぐ…人多いなあ…」


「まあ朝だしねー」


「まだ軽い方じゃねえかこんなもん」


「おお、さすが経験者は違う」


「あんまり経験したいもんでもないけどな」


というわけで20分くらいかけて目的の駅に到着である。


「ここだよね」


「うーんと、間違いないね」


「間違えようがない気がするが…」


「いやこう寝過ごしとか」


「三人全員寝過ごしはありえんだろう…」


とりあえず集合場所へと向かう三人。


「えーっと…どこここ」


「ここじゃないかなー」


「目的地って書いてあるっすね」


「ああ、ここか。んじゃーこっちかなー」


「…佳苗ちゃん。地図逆だよ」


「うおっと!?こりゃ失敬しましたっ!」


「しおりの文字まで反転してるんだから気づけよ」


「分かってんなら教えてよー」


「えーっと、それならこっち、かな?」


「えー…そうみたいっすね」


「ならばれっつらごー!」


「おー」


「お、おー」


というわけで集合場所へと向かう三人。

意外と入り組んでいたが、

そこまで迷わずに到着した。


「うわ、ちょっとみんな早くない?」


「来てる人はやっぱり早いんだね」


「つっても十人くらいだけど」


「絶対一番乗りだと思ったのに、ちくせう!」


その後喋っているうちに

案の定時間が来た。

気の合う仲の友達としゃべりだすと時間が早く流れるもんである。

というわけで

そのまま新幹線へ。


「うほー。しんかんせーん」


「あれ?佳苗ちゃんもしかして乗ったことない?」


「ないないないー!だからこの日を最高に楽しみにしてたっ!」


「遠出とかしない感じなのか。お前の家は」


「んーあれよあれ。車で全部済ませちゃうの」


「あー。優美ちゃんタイプ」


「あれ?優美ちゃん車乗ってたっけ?」


「え!あ、いや、そ、そうなるんじゃないかなーって予想?」


「あーはいはい。予想ね。優美ちゃんが車乗るのかー」


当然と言うか、

これは優美の過去のことである。

どこに行くにも車に乗せられてたのである。

が、当然二人は優美のかつてのことは知らないのでこんな反応にもなるわけである。

なにせ、今神社にいるのって未成年の人間だけだし。


「とりあえず普通に乗れましたね」


「まあ時間通りには来てたしな」


「こっから2時間くらいだっけ?」


「そんなもんじゃなかったけ?」


「だいたいそんなもんっすね」


さて、移動時間である。

暇である。

まあおしゃべりに花が咲いてるので特に暇でもないのだが。


「あーそういえばこれ持ってきてんの忘れてた!」


「これ?」


「はいはーい!お菓子ですぞ!」


「うわ…川口お前どんだけ買ってきてんだ」


「まあ駄菓子だし安いしとか思ってたら買いすぎちゃったぜ。テヘペロ」


袋いっぱいである。

どう考えても三人で食べる量ではない。


「あ!そういえば」


「ん?どしたのちなっち」


「…まさか」


「えーっと…たぶんそのまさかだと思うよーはい」


ごそっと取り出したのはこれまたお菓子の袋である。

もう十分である。

いやもう十分すぎる。


「なんか優美ちゃんがどうせならもってけよってなんかいれる予定じゃなかったものまで押し込まれた」


「何押し込まれたんです?」


「家にあったいらないお菓子関係だいたい全部」


「まさかの処理」


「それでそんなに膨れたんすか…」


というわけで取り出してみたは良い物の、

多すぎである。


「どうしよっかこれ」


「…ま、食べなかった分は帰りにとっとけばいいよ!」


「ま、そうするしかないわな」


結局帰りでも多すぎて、

一部お持ち帰りになるのだがそれはまだ知らない三人である。

まあそれは置いといて、

それから先はひたすら話し続けた三人であった。

話の区切りがようやくついたのは現地に着いたとき。

要するに止まらなかったのである。


「あ、ついたっぽいよ」


「え!?もう!?」


「もうってお前2時間がっつり喋ってたじゃねえか」


「いやーまだ10分くらいかとー」


「さすがにそれはない」


というわけで現地に着いたので降りる三人。

そうしてついた先は当然…


「ついたー!広島だーっ!」


「ちょ、耳元で叫ぶな!」


「しげちゃんしげちゃん」


「?なんですか?」


「たぶん言っても聞こえてないよ…」


「…ですね」


修学旅行先。

広島到着であった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 危ない、出生の秘密。①姉妹でないのか?②両親は? 「あれ?優美ちゃん車乗ってたっけ?」
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