旅路へのカウントダウン
「つーわけで…なんだかんだ言ってもう明後日修学旅行なわけだが」
「そうだねえ」
「そろそろ準備するべか」
「そうだね」
なんだかんだで何日か経ってあっという間に修学旅行間近である。
みんな楽しみ修学旅行である。
優美は除くが。
どのみち準備は避けては通れない。
「とりあえずかばんはどれで持ってくべか」
「そもそもそんなに大きなカバンが無いんですよね」
無駄に色々置いてあるこの家だが、
いかんせんだいたいの物事が家の周辺で済んでしまう点。
旅行等々もしようしようと言いながら結局していなかったので
旅行用カバンが無いのである。
一番大きいので部活用のなのでちょっと心もとない。
というかたぶん入りきらない。
「じゃあまずそっからか」
「買いに行かなきゃ」
「行くぞ」
「お、行動が早い」
「何度も言いますが出る理由がないだけで、必要があれば外にも出るからね?」
というわけでいつもの大型スーパー。
だいぶ常連客になってきた。
「旅行用カバン的なの売ってるのどこですかね。最悪でかければいいんだけどさ」
「というかキャリーバッグみたいなのにするの?それとも肩に掛けれる感じのやつ?」
「んー…どっちでもいいけど。俺使わないし。でも肩に掛けるやつだと重くないかね?」
「大丈夫だとは思うけど…」
「今は女の子ですがその点よろしいか」
「そんなに非力でもないよ」
実際どこぞの箱入り令嬢のごとく非力かと聞かれれば全然そんなことは無い。
部活やってるのもそうだが、やっぱ二人で生活してると色々力仕事もやってたりする。
「まーどうする?お好きにどうぞって感じですけど」
「じゃあキャリーバッグで行こうかなー」
「んじゃ決まり。適当に買って帰るべよ」
「はいー」
とりあえず目についたのを適当にあさっていく。
何買えばいいかとか知らん。
「…んーまあこれでいいかな?」
「とりあえず持ってくものが入ればいいですねはい」
「じゃあ決定。値段もそれなりだしね」
というわけでわずか30分で決定購入である。
たらたら選ぶのは優美が許さない。
「ちゅーわけでとりあえず入れ物は準備おけーね」
「そですね」
とりあえず神社帰ってきた。
後の物はよっぽどなんか無い限り今の家にある分で事足りそうだからであるが。
「じゃあ何入れてくか書き出すか」
「書き出すんですか」
「そうすりゃ入れ忘れないしな」
「まあそうだけどさ」
というわけでとりあえずメモ帳開いて持ってくもの一覧を書く優美。
「とりあえず着替え…3日分だよね?後予備に二枚くらい?」
「うん。まあ服は山ほどあるから足りるね」
「下着も余分に持ってくほうがよさげね」
「まあそうね」
「女子の裸見てお前が鼻血ぶーした時の替えがいるからな」
「いやマンガじゃあるまいし」
「でもお前修学旅行だろ。どうせ大浴場じゃないですか」
「そうなんだよねえ…どうあがいてもこればっかりは逃げられないしね」
「時間制限あるだろうしな」
「どうしよ。みんなに見られるの不可避なんだけど」
「恥ずいか?」
「そりゃもう存分に恥ずかしいね」
仮にも自意識が男の状態で大量の女子から裸見られりゃ、
そりゃ恥ずかしいというものである。
まあこれは単純に千夏が裸を見られるのが好きじゃないというのもあるのだが。
「そして大量の女子の裸にまみれてくるんですか」
「そりゃ…しかたないですしおすし」
「まあ別に今は合法だよね。やったね。全国の男子の夢空間に入れるよ!」
「といってもそんなにじろじろ見るとか私しない、というかできないと思うけどね」
「女子勢はスケベアイにゃ敏感っていうしな。ばれるわな」
「そういうんじゃなくて、なんかこう罪悪感が」
「気にするな。今はむしろお前もみんなに見られる側だからな」
「ふええ、どうしよ」
「あきらめて羞恥の海に沈めぇ!」
「大量の視線は浴びたくないなあ」
「でも俺が言うのもあれだが、お前が脱いでたら女子だって見るだろうよ。スタイルいいし」
出るとこ出てて引っ込んでるとこ引っ込んでるのが千夏である。
出るとこが出てないのが優美である。
「とまあ、お前が風呂で羞恥の海に沈んでのぼせあがる話は置いといて」
「誰ものぼせるとは言ってないけどね」
「周囲の視線を気にしすぎて湯船で死亡するパティーン」
「さすがにない」
「まあいいや。とりあえず寝巻…はどーするよ。ジャージ?」
「それ用に持ってくよ」
「ならいいね。ハンカチティッシュは…まああれだね。小カバンの横にでも入れとけばいいと」
メモに書き足していく優美。
「じゃあ雨降った時ようにタオルと折り畳み傘入れとくかね。あーあと風呂上り用のタオルも」
「うん」
「あとは適当なビニール袋に…」
そんな調子でカバンに入れる物を書き出していく。
「んー基本的なのだとこんなもんだろーかね」
「そうだね。こんなもんかな」
「まあ小カバンには大カバンから出してその都度突っ込んで」
「そうする」
「あとは…なんかあったような」
考え込む優美。
「…あ、はい。いかんいかん。これ忘れると下手するとひどいことになるね」
「なんかあったけ?だいたい入れたような気がするけど」
「はーい問題です。俺らの性別は?」
「半分」
「いやあってるけど肉体的に」
「女ですね」
「はい正解。男に無くて女にあるものは?」
「…あ」
「はいそう。生理用品いるだろね。予定日からはずれてるが一応」
慣れては来ているが、
やっぱりこういうことあると忘れる。
「じゃあとりあえず今やれる分だけは荷物詰めするですよ」
「おっけー」
「あ、俺やるとひどいことになると思うから、入れるのは自分でやってね」
「あい」
とりあえず衣服の畳み方すらまともに知らない優美では無理ゲーである。
「あ、そうだ優美ちゃん」
「なにさね?」
「お金持ってくけど、いくら?」
「え、あそうか。限度額は?」
「とくにないけど」
「無いんかい」
こういうとこに制限無いとそれはそれで困ったりする。
「んー…一万じゃ足りん?」
「…どうだろ。良い物あれば足りないかもしれないけど、目ぼしいものなければ十分すぎるよね」
「だよねえ…んじゃま二万か三万くらい入れときますかね」
「結構入れますね」
「まああるにこしたことねえしな…ただ」
「ただ?」
「頼むから落としたりしないでよ」
「しません。そこまでドジじゃない…と思う」
「怖え。いや最悪それならまだしも、気が付いたらつかまってたーとかやめてね」
「それは大丈夫。警戒は常にしてるから」
「いやでも茂光の例がありますしですね…」
「うぐ」
「とりあえず気を付けてくださいよ。美少女が金背負ってやってくるとかどこのかもねぎだよってなるしな」
「うん…とりあえずその後の展開が真っ暗なのは目に見えてますね」
「エロゲ―展開ですね分かります。しかも鬼畜方面のやつ」
「最悪ですね」
「最終的に俺まで食い物にされそうだからマジ勘弁」
「気を付けるです」
「…んじゃま、本当に気を付けて行ってこい。お前がいなくなったら発狂するぞ」
「分かった。気を付けて楽しんできます」
「あ、あと」
「?」
「お守りよろしく」
「いや分かってますからね。ここんとこ毎日聞いてますよそれ」




