測量日
「明日は身体測定なんですね」
「そうなのですか」
「あい」
千夏の学校にて、
明日は身体測定である。
「なんだかんだ言って、しっかりと身長とか測ったことねえしちょうどいいんじゃね」
「ねー。体重計も無いもんね」
「さすがに体重計くらい買うべきかね」
「うーん、増えてる感じは無いけど買っておくべきかもねー」
二人がここに飛ばされてきたのは秋だったので、
当然身体測定は無かった。
まして体重計も買ってない家で測れるはずもなく。
結局今に至るまでそこら辺の正確な数値は知らないのである。
「というか成長してるんだよねこの体?」
「そりゃしてるんじゃないの?」
「いやだってさ、超常現象でぶっ飛んできたわけだし、実は不老不死だったとかいう落ちだったり」
「さすがにないんじゃないの」
「まあそうなってもらってても困るけどね」
とりあえず下手に人外になるのは勘弁願いたい。
そういう話を読むのは好きだが、
自分がなるとなったら話は別である。
「まあとりあえずどんなもんなんかしらね」
「目測だいたい155cmくらいだと推測してたが」
「まあそんなもんだと思うけどね。伸びてても数センチでしょ」
「ま、とりあえずどんなもんだったかは聞かせてな」
「ん。りょーかいです」
そして次の日。
身体測定。
「お帰り」
「ただいまー」
「さてはて、聞かせてもらおうじゃないか」
「とりあえず手を洗ってくるです」
「あ、はい」
というわけで帰りの荷物を置いてからいつものリビングに集合である。
「それでーどうだった?」
「うん、身長は推定よりちょっと高かったよ」
「おいくつ」
「157.3cm」
「おう、これまた微妙な」
「そりゃかっちりした数値ばっかり出てくるわけないし」
「まあそりゃそうか」
現実問題、
小数点以下が出てこない場合を引く方が大変と言うものである。
自分で操作できるもんでもないし。
「そういやしげちゃん185cmだって」
「うおい。でけえなおい。ほんと体だけはゴリラなんだからあの男」
「そう言ってあげないで―」
「このままいったらそのうちあいつ190cm越しちまうんじゃねえか」
「ありそう」
「お前と30cm以上の差かよ?大丈夫かね」
「え、何が?」
「え?いやこうお前らくっついた後大丈夫かなーと」
「まだくっつくって決まってないよ」
「そうなん?」
「というかお友達からって言ったって言ったじゃないですか」
「でもなんか最近よく一緒にいるしさ」
「今はまだお友達としてなのです」
「まだってことはありえるんですね分かります」
「うーん…ずっと一緒にいたら…分からないなあ」
「まあその時は応援しますから頑張り―や」
「まだそういう時期じゃないです」
「ちゃんと子づくりにも励めよ」
「いやだからまだそう言う段階にすら入ってないってば」
「そしてあさっての方向に進み始める話題」
「いつものことですね」
テンション上がってくると話がずれまくるのはいつものことである。
これのせいで話し始めると自制しない限り延々と話が続くのである。
まあ二人ともそれを楽しんでいるので特に問題はないが。
「体重はー?」
「乙女にそれを聞くのは失礼なのです」
「おまいは乙女じゃねえ。あえて言うならば漢女?漢に女の方の」
「なんかそれガチムチマッチョマンな感じがするのですけれど」
「とりあえずいくつだったのさ」
「…45.3kg」
「…そして聞いたはいいけどそれ多いのか少ないのかよく分からねえ」
「ちょっと痩せてるくらいらしいよ。平均だいたい50だって計算してみたら」
「ほえー」
「まあとりあえず太ってはいなかったので一安心なのです」
「まあお前は大丈夫だろ」
「優美ちゃんはどうなんですかね」
「量ってみないと何とも。まあでも基本引きこもりで動いてないからなー」
「たまにテニス行ってるくらいだもんね」
「あれだって長くてもせいぜい3時間がいいとこだしな…疲れるから2時間やらない時も多々あるし」
「そうなの?」
「いまだこの体のラケットの振り方がうまく身につかん。ラケットに引っ張られてる感半端じゃない。んで結局無駄な動き増えて疲れるっていうね」
「へー。とりあえず今度体重計買ってくるです」
「そうするわ。若干気になる」
さすがにこの体になってまで太りたくはないのである。
元々だいぶ巨漢であったので。
横幅的に。
「それにしても身体測定と言えば」
「うん」
「視力検査とかもあったんだろうか」
「あ、うんあったよ。聴力検査とか。体力運動能力調査もあった」
「そっちはどうさね」
「聴力は問題なし。視力も1.0超えてたから無問題だったのだわ」
「ほんとここ来てから、目よくなったよな」
「ほんとねー」
「まあ元々メガネそんなにかけてたわけじゃあないけどさ」
優美は目が悪かったのは確かだが、
常時メガネをかけてないとやってられないほど悪かったわけでもない。
厳密には両目ともに0.5~0.6はあったので。
普段の生活する分には必要なかったのである。
なおコンタクトは使用したことは無い。
なんか怖いし。
「まあ正直ここ来てもかけるのはちょっとね」
「私メガネ属性無いからいらないのです」
「メガネ属性は無いけど、似合ってればいいと思う」
「メガネはいらんのだわ」
千夏はメガネはあんまり好みではないらしい。
「体力運動の方は?」
「そこまで大したことはなかったかなー」
「並みか?」
「並みよりちょっといい感じかな。あ、あと50m走は結構よかったよ」
「ほー。万年総合評価Eだった俺とはえらい違いであるな」
「今なら優美ちゃんもだいぶやれるようになってるんじゃないの?」
「男の時よりも動けるようになってるってどういうことなの」
実際問題優美の体育系の成績は男子としてはすこぶる低いものばかりであった。
正直女子の方の評価シートで評価しても並みのライン行くか?
とかそういう次元であったのである。
当然、女子の中でも運動できる相手には手も足も出ないくらいの差はあった。
持久走にて何週も周回遅れ上等である。
「ま、運動できるのはいいことじゃ」
「そですね」
優美の顔が笑む。
「それはそうと、身体測定でまだ測ってない部分があるんじゃね?」
「え?どこ?」
「それはーですねー」
なにやら手をわきわきさせながら近づいてくる優美。
一歩引く千夏。
優美の顔を見れば悪巧みしていることくらい容易に想像がつく。
「その夕張メロンの大きさじゃよ!」
「そんなドヤ顔で言われてもっ!というかそんなに大きくないし!」
膨らみはあるが、さすがにメロンほどでかいわけでもない。
「まあまあ、いいじゃないですかー。正確な大きさ知らないと困るでしょー」
「いやでも優美ちゃん測るための道具持ってないし?」
「この手があるのだ」
「きゃー変態よー!」
「さーさー!無駄な抵抗はやめてとりあえず…揉ませろ!」
「なんで優美ちゃんそんなに胸に執着するんですかー!」
「え?まな板娘のお約束?」
「お約束で襲おうとしないでくださいな」
「まあまあ、よいではないか。よいではないか」
「何にもよくない―!」
「あ!待て!逃げんな!」
このあと滅茶苦茶追いかけっこした。




