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_____夢の浮橋_____

夢路の流れを受け継いだ雑談回。

「…」


もやもやと。

揺れ動く光のもやの中に優美はいた。


「…またお呼びかな?」


もう驚くこともない。

なんせこれで四回目。

もはや慣れっこである。


「とりあえず待ってればそのうち来るよね」


今までの感じで言えば、

自分からどうこうする必要は特になかったので、

そのままもやの流れに身を任せる。


「ここ広いなあ。流されてたら突然もやが無くなって落ちるとかないだろうね」


とりあえずいつものように流されていると、

もやが渦巻き一定の形を取り始める。

あっという間にもうなんか見慣れてきた少女の姿が形作られた。

狐耳生やした少女の姿をとるその人こそ、

優美らが居座る神社の神その人だったりする。


『待たせたな』


「お久っす」


『仮にも神相手にフランクであるな』


「ん、やっぱ直した方がいいっすかね」


『いや、構うな。今の方が気楽だ。お主も我もな』


ふわふわしながら語らう二人。

いや一人と一柱か?


「それでー、今日は何用でしょーか」


『用か。そうだな。特にはない』


「ふえ?」


拍子抜け、といった感じである。

さすがに用もなく呼ばれたことは無かったので。


「え?じゃ、じゃあなして呼んだん?」


『前ここに呼んだ際に言うたであろう。そなたらと話したいとな』


「…要するに喋り相手がほしかったと?」


『…まあ、そういうことだな』


「…」


『…そう死んだ目を寄越すでない。我とて人肌恋しい時もある』


「いや、いやうん。言った。確かにいつでも呼んでーって言ったけどまさか本当に呼ばれるとは思ってなかった。思わず放心」


何処の世界に神に呼ばれた理由が喋りたいだけだったとかいうのがいるのだろうか。

異世界へぶっ飛ばされたり、天啓を授かったりすることはラノベだなんだを読む限り幾度となくあった気がするが、

ここまで軽い理由で呼び出されるのも珍しいとかいうものである。


「というか神さんさん。メル友ならぬ神友とかいないんですかね」


『…メル友?…我には人で言うところの友達と言う者はおらぬ。というかそもそも我は他の神と呼べる者に会ったことがない。おるかも定かではないが』


「おおう。まさかのボッチ勢」


『…ボ、ボッチ勢?なんだそれは』


「あー…いいっす。言及無しで」


『はぐらかされると余計気になるのが人情と言うもの』


「いや、あなた神様でしょーが」


『ならば神情』


「ならばってなんだ、ならばって。神情なんて初めて聞いたわ」


仮にも人類を超越した何かとの会話なのだが、

全くそんな感じでない。


『…ふむ、しかし語らうには浮いたままというのは少々あれだな』


「そうすか?」


『やはり話すならば座っての方が良いものだろう?』


「いやまあ人間感覚でいけばそりゃそうだけども…神様的にもそうなのかね」


『いや、別にそう言うわけではないが。雰囲気だ』


「雰囲気ですか」


その言葉が終わるかというころ、

周囲のもやが渦巻き、

一つの大きな空間を形成していく。


「…部屋だな」


『参考はそなたたちの住んでいる家の居間だ』


「だろうね。テレビとか、最後に残ってるみかんとかそのまんまだし」


まんまいつものリビングであった。

しかも現状のリビングそのままである。


「ご丁寧にお茶までもセットされてるし」


『お茶、好きであったろう?』


「そりゃ好きだけどね。夢の中で飲むお茶ってどーよ」


とにかくせっかく用意されてるものを使わないのもあれなので、

出現した部屋の方へ向かう優美。

最初こそ流されることしかできないこの空間であったが、

少々慣れてきたのか軽く体の行く方向を制御するくらいはできるようになっていた。

何事も慣れである。


「…うん、なんかやっぱり妙に落ち着くねこの部屋。いっつもいるからかな」


『最近のそなたは自分の部屋にいるほうが少ないのだろう?』


「うん。というかそれ知ってるってもしかしてずっと見てたり…?」


『休息しておる時以外は見ておるぞ。そなたらが事件にでも巻き込まれたりしたら困りものであるが故』


「そういえば事件らしい事件って巻き込まれたことねえな」


『勝手に呼び寄せた身としては、そなたらの安全程度保障せねばな』


なんだかんだ言って一回たりとも危ない目には合っていない優美と千夏である。


「いつの間にか守られてたんだな。ありがてえことです」


『礼等いらぬぞ。そなたらには良くしてもらっておるからな』


と、一呼吸入れるかのようにお茶を飲む狐娘もとい神。

神がお茶飲む必要性があるのかは謎である。


『それはそうと、我の同族と思しき者を助けてくれたようだな。感謝する』


「ん?同族?俺神様に知り合い他にいないけど?」


いたら怖いというものである。


『いや、そうではない。名は…確かイナリと言ったか』


「あー、はいはい狐ね狐。助けたなんてこともありましたね」


『放置しておけばほとんど確実に死んでおったでな。いまだに命を紡いでいられるのもそなたらのおかげよ』


「まああれに関しちゃ俺ほとんど何にもしてないけどな。千夏の手柄よ。千夏の」


『それでも千夏と共にあやつの回復まで色々やっておったではないか』


「いやまあ…さすがに連れてきたのに面倒見ないとかいう非情なことはできませんぜ?」


さすがに見殺しとかそんなことはできない優美である。


『しかしそなた。本当に外に出ないな。体が鈍るぞ』


「うわ、ついに神様にまで言及された。そんなにもやしやってますかねえ」


『少なくとも千夏よりは外に出る回数は少なく感じるな』


「千夏と一緒にしないでくださいな。あいつと比べられたらそりゃもやしでしょうよ」


学校がある日は言わずもがな、

休日でさえもどこかにでかけて、

家にいないことが多いのが千夏である。


「それに俺一応ここの管理しないとダメだし?あんまり外行くとまずいんじゃね?っていう」


『…外に行きたくない口実であろうて』


「何故ばれたし」


『ばれるも何も、見え見えであろうて。隠す気もないだろう』


「まあね。まあ俺が引きこもってるぶん、あいつが外行ってるから足して2で割るとちょうどいいってことで」


『…何の解決にもなっておらん…』


「今に始まったことでもないしー」


『…千夏に連れ出させた方が早そうだな…』


「まあ既に千夏にゃよく連れ出されてますけどね」


その後体感時間数時間この空間で語らった一人と一柱。


『…そろそろ夜明けであるな』


「おろ、もうそんな時間」


『既に話し始めから2時間は経過している』


「まあ、喋り始めたら止まらないのはいつものことだし」


『それでは今日はここいらで御開きとしようか』


「そですねー。また呼んでくだしゃいな」


『ああ。いづれまた、な。…次は千夏も共に呼んでもいいかもしれぬな』


薄れゆくもやと優美の意識。


『楽しかったぞ。また我の暇つぶしに付き合ってくれ』


「…あ、やっぱ暇なんだ」


そのまま優美の意識はフェードアウトした。


□□□□□□


「…はっ」


がばりと起き上がる優美。


「…朝か」


太陽光こそ差し込まないが明るくなってきているので朝なのだろう。


「…むう、寝た筈なのに疲れがとれてねえぞ…なんでだ」


よくわからない疲れに襲われる優美であった。

ちなみに次の日には似たような現象が千夏に起こったことを明記しておく。


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