部員増量
「…」
「…」
ふーっと息を吐いて持っている弓を構える千夏。
現在家で弓道練習である。
的もあれば広い空間もあったので練習する場所には事欠かない。
どんな家だよと言われそうであるが、実際かなり広い。
「…」
それを横で見つめる優美。
この光景を見るのは実に半年くらいぶりである。
さすがに毎回弓道装備を持って帰ってくるのは疲れるので
しばらく学校におきっぱなしであった。
「…」
一本目を撃つ。
以前はかすっただけだったが、
今回は命中した。
中央からは外れてるが当たってるので問題ない。
当たればどこでもいいと千夏に聞いた。
「…」
そのまま2本目。
これは残念ながらかすっただけで終わる。
そのまま終了動作。
「…ふぅ」
「ほう」
「どうだった?」
「いいんじゃねーかな。前よりも当たるようになってるし」
「練習しましたから」
今の千夏は巫女服である。
優美に巫女服でやってくれとめっちゃせがまれたのである。
弓に巫女。
和好きにはたまらない。
「最近部活どうよ」
「どうもこうもないけど、最近はよく当たるようになってきたよ」
「そうかい」
「頑張れば試合出れるかもね」
「おー、そりゃがんばれよ。もし試合でるなら見に行くだわ」
持ってたカメラを下ろしながら優美が言う。
さりげなく撮ってた。
後で見ながらにやにやする気である。
本人許可は得ているので問題ない。
「うんまあ練習は楽しいよ。最近は色々できるようになってきたから特に」
「そうかい。良かったじゃん」
「ただこの前は大変だったのだわ」
「なんかあったの?」
「いやですねえ。今四月じゃないですか」
「そうだね」
「四月になると学校には新入生が来るんですよ」
「そりゃ来ますね」
「それでですね。そうなると新入生も部活動選択しないといけなくなるんですね」
「そりゃそうですわね」
「その時何があると思いますか」
「…あっ…あーそういう。勧誘しないといけないよねー」
「そういうことなのです。しかもちゃんと部活動紹介の時間も用意されてるのです」
「で、それでなんかあったの?」
「勧誘も紹介も最前線でやらされたのです」
「ほう」
「勧誘何クラスも回らされたのです」
「まあお前勧誘するには最強だろ。見た目的に」
「でも私だけ他の人の倍くらい回らされたのは反則だと思う」
「断ればいいのに」
「私断れないって知ってますでしょ」
「さすがにそこは反論してもいいだろ」
「ものすごいお願いされたら断れなかったのです」
実際問題たくさんの部員に頭下げられた。
「それで紹介の方は?」
「これもこれで私最前線だったのです」
「どうなったのさ」
「私一人とかそういう落ちはなかったけど」
「うむ」
「喋ったのほとんど私な気がする」
「ほう」
「しかも集団ど真ん中の一番目立つところだったし」
「まあ美少女目につくからね。人を引き込むには最高だろう」
「ものすごい視線がこう飛んできた」
八割がたの人間がそっち見ていたのである。
男子は当然だが女子もかなり視線を飛ばしてきた。
いい意味にせよ悪い意味にせよ目立ちまくりである。
「それで結果としてどうだったのよ。新しい部員の数ってさ」
「来ましたよいっぱい」
「具体的には」
「男子多数。女子もそこそこ」
「ほー大成功ではないか」
「色々やらされたんだし成功してもらわなきゃ困るのです」
「それで?やっぱり大人気?」
「そんなにぐいぐい来る子はいなかったけど結構人だかりはできたのです」
「やったね。ハーレムハーレム」
「大半女子だったからあながち間違いでもない」
「なんだ。男子はどうした」
「話しかけてくる子もいたけど、そんなにいなかったかな」
「ふむ。美少女の威光に恐れをなしたか。ヘタレどもめ」
とかいいつつも実際美少女に話しかけになんて行けるはずもない優美である。
そこらへんはヘタレである。
千夏と話すのが大丈夫なのは見た目どうこう以前に元々かなり仲がよかったからである。
優美にとって千夏は美少女以前に親友であるので。
「とりあえず仮入部来てた子は大半がそのまま入部してくれたね」
「よかったな」
「なんかわりと女子たちがいっぱいくるのだわ」
「好かれたか」
「せんぱーいってね。あれ気持ちいいね」
「後輩可愛いですか?」
「とりあえずなんか髪の長い子多いね。すごくいいね」
「おお。個人的な好みだけど弓道やる子は髪長くあってほしい」
「女の子なら髪長くあってほしい私」
「まあ多いならいいじゃん」
「うん。とりあえずなんか私を慕ってくれてる子って可愛いのだわ」
「ほうかい」
と、そこで優美の顔がゆがむ。
黒い笑みである。
たぶんろくなこと考えてない。
「じゃーじゃー、後輩っ子と俺とどっちが可愛いですかー?」
「え!?」
「えじゃなくてー。どっちよー」
下から見上げながらのこれである。
千夏相手なら羞恥心など無いのが優美である。
「え、えーっと」
「どっち?」
「う」
どこで覚えたのか上目使いで質問し続ける優美。
内心はうろたえる千夏を見てにやにやである。
「えーっと。ゆ、優美ちゃんかなー」
「お、まーじでえ」
「ふぅ…」
優美の上目使いから解放される千夏。
その小動物的な外見から放たれるそれはなかなかの威力である。
可愛いは正義。
可愛いは罪。
「というか優美ちゃんの方向の可愛いを持った子はいなかったのです」
「どゆことさね」
「幼女はいない」
「幼女はよけいじゃ。ん、あれかロリっぽいのいないのか」
「うん。みんな結構大きい。私より大きい子も多いしね」
「まあ俺が小学生くらいしかないせいであれだけど、お前もそんなに大きいわけでもねえしな」
「150㎝ちょいだしね。私」
「お前だって十分ロリ」
「言わないでください」
「しかもロリきょぬー」
「うにゃー!言わないで―!」
なお優美は背やら胸やらもそうだが、
顔もかなり童顔であるが故の子供っぽさである。
なので二人並ぶとやっぱり千夏の方が大人びて見えるのである。
「とりあえず部活の近況はそんな感じかな」
「ほえー。まあ頑張ってね。試合出れたらいいね」
「うん。もし呼ばれたら来てください」
「そりゃ行くですよ。弓道着装備のお前見たいし」
「そういや見せたことないっけ?」
「ああ。見たことないね。巫女服装備もいいけど弓道着も見てみたいね」
「あれ学校なんだよね」
「だから試合あったら見に行って写真撮りまくるからちゃんと試合出てね」
「なにその欲望まみれの理由」
「いつものことだろ」




