乗り物
「むう…こっち方面来ることなんてそうそうなかったからなんか新鮮だ」
今優美は一人で街中をうろうろしていた。
個人的な買い物である。
年がら年中もやししてるからといって一切外に足を運ばないとかそういうのは無い。
そして今いる場所は家の裏手。
いつも行くコンビニだのスーパーだのが家の前方に集中してることを考えても、
あんまり足を運ぶ場所ではない。
まあいつも行く場所に目的の物が無かったからそんなとこまで来てるわけだが。
「まあ、若干時間かかったけどほしいものは手に入ったし帰るかなー」
そして買うもんかったら家に直行である。
寄り道するとかそういう発想は出てこない。
寄り道して時間使うのがもったいないので。
「せっかくだし帰る道別ルート通るかな。大して距離変わらんし」
寄り道はしないが、
ルート変更くらいはしていく。
やっぱりなんか知らない場所にきたら少しは探索してみたくなるものである。
まあ知らない場所とか言いつつ家の周辺なのだが。
「ここいらはわりと自然残ってるから歩いてて気持ちいいな」
神社がそもそも山の中にあるのだが、
周辺も草木が残っていて自然は多い。
正直高層ビル群よりもこっちの方が優美的には好きである。
「…お?」
そうして歩いている中でふと目にとまった物が一つ。
自転車である。
いやもっと厳密に言えば駐輪場。
「…駐輪場かな?こんなとこあったっけ?」
近づいてみる。
まあまごうことなき駐輪場であるのだが。
「…ふむ」
場所だけ確認するととりあえず家に帰る優美。
「ただいま」
「お帰りー」
家に帰れば千夏がいた。
出かけることは伝えていたので問題ない。
「なあ、千夏よ」
「どしたの」
「自転車ほしくないか」
「ほしいです。ほしいですけど、自転車を止める場所がないってだいぶ前に言った気がする」
「うん。まさか毎朝もって下りるわけにゃいかんだろうとか言ってた気がする」
「なんでその話を?」
「いやね、帰りにさ、普段通らない道を通って帰ってみたわけですよ」
「うんうん」
「そしたらですね。なんかね駐輪場あったのよ」
「まじで」
「まじです。家の裏手の方あんまりいかないから気づかなかったけど」
「有料?無料?」
「不明。でもあそこなら近いから毎朝行ってもそんなに時間とられないと思う」
「じゃあこれで自転車が手に入るんですか」
「うむ。学校までのあの距離歩くの結構あると思ってたし買うべきかなーと」
「なら買うです。というかいろんなとこ行くから乗り物ほしかったんですよね」
「ならちょうどよし」
千夏の学校は結構遠い。
それこそ普通に歩くと30分近く時間がかかるのである。
まさか車はつかえないので、
自転車を買おうかみたいな話にはだいぶ前からなっていたのだが、
神社前には自転車を止めておけるスペースが無かったのである。
「じゃあまた休日にでも買いに行くかね」
「そうしましょ」
「ママチャリでいいよね」
「それでいいです。というか優美ちゃんは買うの?」
「どう考えても使わないと思うんだが」
「でも一緒に遠く行くときとかに使うかもよ?」
「んー…買った方がいいのかね」
「あったほうが便利じゃないですかね」
「じゃあ一応買おうかなあ…」
昔っからあんまり自転車には乗らなかった優美である。
というのも近場なら歩きで十分であったし、
遠くなれば親の車に乗せてもらっていたので。
おかげさまで自転車を使わずに数年放置とかざらであった。
「しっかし自転車か。乗れるんかね」
「え!?乗れないの?」
「いやそうじゃないそうじゃない。この体になってから一回も乗ってないもん。バランス感覚崩壊してそう」
「どうだろ…大丈夫だと思うけど」
「サイズはだいぶ縮みそうだが」
「まあそれはしかたない」
それで次の日。
ちょうど休みだったので購入に走る。
「自転車売ってるとことかあったけ?」
「調べてきてないんですか。珍しい」
「いやなんかそれくらいならお前知ってるかなと思って」
「知ってる」
「やっぱりな。どこよ」
「いつも行く大型スーパーの一階」
「じゃあそこで買いますかね」
というわけで自転車を買いに来た二人。
「どれ買うべき?」
「体に合ったやつ」
「いやそりゃそうだけれども。デザインあるじゃん」
「どーしよっかなー」
「どうしたもんかね」
しばし悩む二名。
「とりあえず試しにちょいと乗ってみるかな」
「乗っていいのかな」
「いいんじゃね。店員聞いてみるか?」
「そうしようか」
「じゃあ聞いてくる」
「もう自分から行くようになりましたね優美ちゃん」
「お前絶対行こうとしないしこういう時」
店員に聞いてみたところ大丈夫そうだったので
いくつか出してもらって乗ってみる。
「…やっぱかつてのサイズだとでかすぎますね。足届かへん」
「そりゃそうでしょ」
かつての優美の身長は170cm程度であったのだが、
今の優美は145cm程度。
25cmも小さくなっていればそりゃ足も届かなくなるわけである。
「というか単純に背が小さくなったって意味でいけば私の方がひどいと思う」
「お前俺以上だもんな」
千夏のかつての身長は180cm程度。
今の千夏は150cm。
優美よりも数値的には小さくなっていたりする。
「まあこれくらいが妥当かな。どうみても小学生用だけど」
「まあ身長そんなもんだししかたないね」
とりあえずだいたいのあてが付いたので、
良さげなのを探していく二人。
「じゃあ俺氏これで」
「じゃあ私はこれで」
「個人的にこういう時好きな色赤でよかったなとか思う」
「なんでさ」
「赤色なら男女どっちでも普通にありえそうだから」
「男の人でもピンク好きって人もいるですよ」
「ん。まあ偏見だわな。でも偏見気にしなくてよさげだからいいや」
そこからはあっという間である。
すぐに購入して終了であった。
「買うのあっという間だった件」
「早かったねー」
「というかもう乗れるのね」
「じゃあ早速乗って帰るです」
「せやな」
こっち来てからの初自転車である。
なんだか最初に自転車を乗った時を思い出すのは気のせいだろうか。
「えー…というかマジで乗るの何年ぶりだろうか」
「本当にそんなに乗ってないんですか」
「ああ。マジで全然乗ってなかった。…3年ぶりくらい?もっとかも」
「買ってあった意味」
「でも使う機会が無かったんですよねー」
とりあえず乗ってみて一漕ぎ。
「にょあ」
若干よたる優美。
「ちょ、大丈夫優美ちゃん」
「た、たぶん。久々すぎて…ああうん。もう平気」
一回スピードに乗ってしまえばもうあとは流れで大丈夫である。
「じゃあ帰りましょー」
「そだねー、というか優美ちゃん、ちょ、待って」
「なんか止まったらまたひっくり返りそうだから早く来て―」
「その先坂だよ!」
「え、うわっ!ちょブレーキ!ブレーキ!」
なおとりあえず怪我せずに家にはたどり着けた。
さすがにそこまでなまってはいなかったらしい。




