新学期
「む…新学期か。今日から」
目が覚めた優美。
月もようやく変わって四月。
ここ数日の間、千夏と共に休みの宿題の処理に追われてみたり
いろいろあったがまあ無事に新学期である。
つーか正直優美にゃあんまり関係ない。
「新学期ー。でも俺はやること変わらねー」
いつも通りの掃除。
変わらぬ巫女服である。
というか巫女服変えようにも一種類しかないし。
「ここの桜はだいぶ散ったけど学校のとかはどうなんでしょーかねー。今見ごろかな」
この神社の桜はことごとく早咲きだったのでだいぶもう散っている。
まあ花見もしたしやることはやったので特に問題は無い。
あえて言えばそろそろ毛虫発生しないかとかいう心配があるくらいか。
「優美ちゃーん!朝ごはんだよー!」
「んい、今いく」
いつも通り朝食を終える。
「クラスの奴ら。一緒になるといいな」
「うん。とりあえず佳苗ちゃんとしげちゃんとは一緒がいいなー」
「その取り合わせであってくれるとこっちとしても安心だが、まあ運だからなー」
「とりあえず行ってくるねー」
「行ってこい」
いつもの調子で千夏を送り出す優美。
もうこの光景も何回目か分かったもんではない。
「休み終わりじゃなー。また普通の日常に戻るのか―」
と言ってもやっぱりいつもとやることは変わらない優美であった。
「ただいまー」
時刻移って夕方。
千夏帰還である。
始業式のわりにはだいぶ遅い気がしなくもないが
始業式やった後にいきなりテスト三時間やらされてきているので仕方ない。
しかも明日もあるし。
「お帰り。どだった?いろんな意味で」
「佳苗ちゃんもしげちゃんも同じクラスだったよー」
「そりゃよかったな。クラスどこぞ?」
「205なのだわ」
「205…三階?」
「うん」
「そうかい。んでんで。クラスどうよ」
「まだよく分からないかなーと思う。もうなんか番号前後の人とは喋ったりしたけど」
「お手が早い」
「向こうから話しかけてきたのだわ。手出ししたのは向こうなのだわ」
「男子?女子?」
「男子」
「ぱっと見美少女に普通に話しかけてくるとはその二人やりおる」
普通そういうの見ても話しかけるとかいう発想に至らないのが優美である。
美少女いても話しかけるのは怖い。
「ぱっと見とはどういうことなのですか」
「じっくり見てるとドジっ子ということが分かる」
「い、いいじゃないですか。例え何もないとこで躓いたりしたって、見た目さえよければそれもステータスなのです!えらい人にはそれがわからんのです!」
ちなみにわりと何もないとこで転びかける割合が高めな千夏である。
「そりでー。テストはどうよ」
「一応できた気はするけど自信はあんまりないのです」
「結構やってたように見えたが」
「やってても分からないものは分からなかった」
「まあ良くも悪くも普段通りって感じですか」
「まあそうですね。たぶん普通な感じの点数返ってくるんじゃないかな」
「まあ明日も頑張りーや。明日で終わりっしょ。テスト」
「うん。頑張る」
初日三時間なら二日目は五時間。
しかもその後授業。
結構つらい。
ほんとこういうの見てると学校行ってないのって天国だなとか思う優美である。
まあ昔は普通に行っていたからこその感想なのだが。
「というか今日は川口たち一緒じゃないのな」
「途中まで、というか神社の下までは普通に一緒に帰ってきたよ。上がってこなかっただけで」
「さては喋ってたな」
「あい。喋りまくってました」
「遅いなーとか思ってたら案の定だよ」
まあ帰り道の途中、みんなが分かれるポイントで立ち止まって喋り続けるのは今に始まったことでもない。
というか昔は優美とやっていたので慣れたもんである。
喋り続けてたら二時間超えたとかざらだったので。
「まあ、とりあえず無事に学年上がりましたな」
「上がったねー」
「まあせいぜい二年生頑張ってくれたまえよ」
「あい」
そんなこんなでいつも通りリビングでごちゃごちゃやっていると外から声が。
子供たちである。
「そういやここ最近来てなかったなあいつら」
「そうだね。一応数人は来てたみたいだけど」
「旅行とか行ってたんだろうかな」
「かもねー。小学生なら時間もあるし」
とりあえず、ひさびさに聞く子供たちの声であった。
五月蝿いと言えば五月蝿いが、聞いてて不快になる類のぶつではないので、
何か言うようなこともない。
むしろ子供時代思い出して懐かしくなる。
「あいつらも学年上がったんだよなー」
「そりゃそうでしょうね」
「前六年生だったやつって来てるのかな」
「どうだろ」
「ちょっと覗いてみよ」
ちょっと立ち上がって縁側の方の障子を開けてやれば思いっきり子供たちが見えるのである。
まあ当然向こうからも丸見えだが、別に子供しかいないので問題ない。
「ふむふむ。まだ来てるな」
「まだ来てる?」
「ああ。だけどそのうち来なくなっちまうんだろうな」
「だよねー」
優美も小学生時代までは外でさんざん遊んだものだが、
中学生になってからは知らないうちに外に出なくなって、
気が付けば家の中でもやしやってる割合が高まっていったものである。
「あ、優美ちゃーん!ちー姉!」
「相変わらずその名前で呼ばれてるんだね」
「誰かさんがさんざん広めてくれましたからねえ。まあ小学校低学年に言われても不快じゃあないからかまやしませんけども」
二人の姿が見えたのだろう。
数人の子供たちが走ってきた。
「おっと、元気してたかー?」
「うん!元気だよ!」
「そうか。ならよし。何組なったの?」
「四組―!」
「四組か。って、四組もあるのかよ。ここらの小学校子供多いのな」
優美の小学校は子供がかなり少なかったのである。
入学当初こそ三組あったが、
結局二組に統合されて、
卒業までそのまんまであった。
「ちー姉!あそぼー!」
「うんいいよー」
「やったー!」
「おいおい、お前明日テストだろうがよ。いいのか」
「まあ、ちょっとだけ。一応テスト勉強自体は今回はそれなりにやってあるし」
「爆散するフラグが立ったな」
「フラグはへし折るもの」
「ねー早くいこーよー」
「うん、じゃあちょっと遊んでくるねー」
「いってらー。怪我に気を付けな」
「あい」
そうして千夏を送り出す。
まあ送り出すと行っても神社境内なので見えるのだが。
「…まあ参拝客の邪魔にならなきゃいいか」
偶に来る参拝客ももう千夏と子供たちが遊んでいる光景は見慣れてしまっているのか、
微笑ましいものを見るように過ぎていくだけである。
「なんかここに来る人も状況に適応してんな。いやまあ、苦情来ても困るけど」
今のところ、苦情とかは発生していない。
神社が高台にあって一般住宅街には子供の声は届かないので
五月蝿いのも特に問題にはなりえないのである。
「…んじゃー俺は自分の仕事するかなー」
と自分の部屋に戻る優美。
それで必要なものだけ持ってすぐに戻ってくる。
PCは今回は持ってきていない。
なんか巫女さんがPCやってるのってどうなのさとか自問自答した結果である。
結果、外の目がある状態ではやらないことにした。
巫女好きな優美にとってこういうイメージは大事なので。
「優美姉」
「ん?」
声をかけられ振り向けばそこにいたのは少年である。
忘れもしない、優美に思いっきり告白してきたあの少年である。
「ああ、久しぶり。元気してた?」
「うん。元気だったよ」
「えーっと君は今度は…五年生だっけ?」
「うん」
「ほほう。高学年の仲間入りですね。学校どう?新しいクラスとか」
「新しい友達増えたよ。あとはずっと仲良しの友達がまた一緒のクラスになった」
「あはは。そりゃよかったね。仲良しの子は大事にしなよ」
軽く笑いながら少年を見つめる優美。
若干目をそらす少年。
「それで…優美姉も一緒に…」
「ん?ああ、もしかして呼びに来てくれたの?」
頷く少年。
「…んー…ま、いいかな?」
「やった!じゃあ行こ!優美姉!」
「あ!ちょっと引っ張るな!行く!行くから!うわっ」
そのまま手を引っ張られて外に連れ出される優美であった。
若干少年の顔が嬉しそうであった。




