恒例行事
「優美ちゃん」
「なんでっしゃろ」
「買い物に付き合ってください」
「…嫌だと言ったら?」
「その時は仕方ないから一人で行く」
「そうかい」
「それで行ってくれますか?」
「ん、まあ、いいけど。買い物長いとイライラしてくるから注意な」
「ちなみにタイムリミットは」
「放置されてると5分」
「短っ」
「喋りながらならまあしばらくは耐える」
「じゃあ問題ないですね」
「ん、行くなら着替えてくら」
「待ってます。あ、ジャージは無しね」
「あれ着て外には出ねえよ」
ということで買い物に行く二人。
「それで、何を買いに行くんで」
「今日は春物の服見に行こうかなーと」
「さいですか。ってまた服かよ」
「またなんですねえ。しょうがないね。好きだもの」
「長くなりそうだわー」
「一軒一時間くらいだから安心して」
「その時間。全く安心できる気がしねえぞ」
そしてやってくるのは大型スーパーである。
人は多い。
「どこ行くか決まってんの?」
「いや、ぶらぶらしながら良さそうなのないかなーって」
「ああ、そう」
とりあえずうろうろしていたら、
目についたものがあったのか
そこに侵入していく千夏。
優美もついていく。
「むう…やっぱり服は見てもわけが分からん」
「そう?」
「なんか別にどれでもよくねってなるのよね。正直その季節に対応した長さの服なら別に良い」
「ざっくりですね」
「あとは個人的になぜかボタン付きのはあんまり好きじゃないんだがね」
「そうなの?」
「別に他人が着てたりするのを見る分には構わんのだがね。自分が着るのは昔からあんまり好きじゃないとかいう」
何故かボタン付きの服が優美はあまり好きではない。
理由を聞かれても本人もよく分かっていないので分かるはずがない。
謎の好みと言うやつである。
「ここらへんよさそうだわ」
「そうか」
「試着ってしていいのかな」
「いいんじゃね?一応店員呼ぶか?」
「じゃあ呼んでくださいです」
「って俺が呼ぶのね。もうなんか毎度のことだからいいけど」
店員を呼んできてそのまま試着室についていく優美。
さすがに中には入らない。
「まだかー」
「着替え中です」
「ん」
やることも無いので試着室脇の壁にもたれかかって待ってる優美。
手の置き場に困ったのでとりあえず組んでおくのはいつもの癖である。
「終わったよー」
「どれどれ」
色薄め、素材もいままでと比べればだいぶ薄めである。
ようやく少しあったかくなってきたのでそろそろ厚着はしなくてもどうにかなりそうなので。
「うん。いいんじゃねーの」
「なら買お」
「でも若干まだ薄すぎねそれ」
「いいよ。この先しばらく着る気だし、寒ければ最悪羽織るから」
「そうか。ならいいが」
「じゃー私はこれ買おーっと」
「一個目終了と」
「いやまだまだ」
「え」
その後も種類様々な服たちを持ってきては試着していった千夏。
「いっぺんにもってけよ。めんどくさいな」
「それもそうだね」
「で、お次は」
「じゃーこれとこれとこれとー…」
「多いな」
「まだまだ買い足りない」
「買いすぎて着ないって落ちは無しだぞ。というかまだ着ただけで買ってないし」
「大丈夫。全部着るよ。大丈夫、着たやつは買う予定」
「ほんとかよ…」
ただ待っているのも疲れるので荷物運び役にまわる優美。
「下は相変わらずスカートなのね」
「これは外せない」
「安定ですな」
「これどう?」
「…短い。すげー短い」
「パンチラするかな」
「下手したらもろ見えするぞ」
「うーんどうしよっかなー。デザイン的には気に入ってんだけどなー」
「男どもの視線がお前を襲う」
「やっぱもうちょっと長いのにしよ」
「視線だめかい」
「注目浴びるのはいいけど、パンチラで注目を浴びたくはない」
「そらそうか」
最終的に十近く購入した千夏。
「終わりか」
「うん。私は」
「私は?」
「さあお次は優美ちゃんの番なのです」
「うぇ?俺はいいって」
「いいからいいから」
「よくねー!」
再び店内に連行される優美。
「これどうです?」
「無駄にふりふりしてる気がするの俺だけかえ?」
「そういうの選んできた」
「鬼か。鬼畜か」
「だって可愛いじゃんこういうの」
「それは認めるが自分が着るのって結構恥ずい」
「着ちゃえばきっと平気だよ。いつも巫女服着てるんだし」
「それとこれとは別」
「まあまあ」
結局流されるがままに試着室に連れ込まれる優美。
「で、なんでお前は毎回ことごとく着替えの度に俺の隣にいやがる」
「えー?見たいし」
「欲望に忠実すぎるわ。出てけや」
「えーでも着替えられる?一人で」
「もうこの体になって半年近いのにできないわけねーだろが。最悪できなかったらその時呼ぶから外いてな」
「あなたのためだからー」
「俺のために全くなってねえんだけど」
さすがに真横に居られるのは気になるとかいう次元じゃなかったので追い出す優美。
「むー」
「むーじゃねえよ。自分の裸とか着替えとか見られるのは嫌なくせに」
「自分は嫌ですが、他人のそういうのを見るのは好きです!美少女限定だけど」
「もうやだこいつ」
とりあえずここまで来てしまった以上後戻りはできないので着替える優美。
というか着替えずに外に出たら今度こそ無理やり着替えさせられる気がするのでそれは避ける。
「どうさね。これで」
「あーちょっと子供っぽすぎたかな」
「選んだのおめーでっしゃろ…」
「でも似合ってる。可愛い」
「子供っぽいのが似あってるとかいう幼女体型」
「優美ちゃんは幼女だから構わないね」
「構うわ。同い年だわ」
「というわけではい次」
「ちょっと待て次があるのか次が」
千夏が抱えているのは結構な量の服たちである。
着替えている間に持ってきたのだろう。
「そりゃ当然ありますよ。さあさあ、諦めて着替えるのです」
「強制すか」
「こうでもしないと優美ちゃんオシャレの方に気使わないからねー」
「普段巫女服しか着てねえし…」
「ほら、なんかあった時のためにオシャレ用の装備もいるって」
「ここで装備してくかいってか」
「ここで装備してくかい?」
「キャンセル」
「しかし回り込まれた」
「なにその店。怖い」
「ここで装備してくかい?」
「優美は逃げだした」
「しかし回り込まれた」
「この店強すぎんだろ」
「ここで…」
「もうええわ。着替える着替える」
「やった。はいこれ」
「ん、というか金持ってきてねえけど」
「私のおごりだわ」
「服関係だとえらい気前良いなお前」
「眼福になれればこの程度の買い物安い」
というわけで色々着替えさせられた優美。
「だからなんでお前の選んでくるスカートってくそみじけえんだよ!」
「え?いや特に何かあるわけじゃなくて可愛いなーと思ったの持ってきてるだけだけど」
「パンツ見える。却下」
「前はパンツ見えても気にしなかったくせに」
「お前限定に決まってんだろうが」
こうしてこれまた合計で五点ほど購入した。
「疲れたわ」
「お疲れ―。私は疲れてない。むしろアゲアゲだけど」
「ええ買い物客だこと」
「いい買い物したのだわ」
「とりあえず一個目終了。というかこんだけ買ってまだ何軒も回る気か」
「さすがにいいです。お金もなくなりそうだし」
「ふう…安心した」
「そういえばアクセとか見てないなー」
「…行くの?」
「ちょうどいいから行くのだわ」
「おーたーすーけー」
「慈悲はない」
「ひどす」
なおアクセは髪飾り購入した二人であった。




