表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/206

花より団子

「お、あれは…」


神社の境内に出てみれば、

目にとまるものが一つ。


「桜か…もう春だもんなぁ。ちと早い気もするけど。早桜か」


神社の境内脇の木が淡いピンク色に染まっていたのである。

これぞ日本の風物詩、桜であった。


「というか結構本数あるなあ。こんだけあると結構見ものじゃね」


とりあえず脇に生えている木は大体は桜であった。


「自分の家に桜が生えてるってのもなかなかいいね」


優美は例に漏れず桜も好きである。

好きなものを見たせいか、自然と掃除の勢いも上がる。


「花見なんて久しくしてないなあ」


呟く優美。

桜は好きだが、

わざわざ見に行くことはなかった。

精々電車の中から見てるのがいいとこである。


「まあいいや。掃除終わったらゆっくり見よ」


見てるとやっぱり手が止まるのでさっさと掃除してしまうことにする。


「こら花びら散り始めたら大変そうだな。まあそれでもどうせ掃除するの俺だけど」


なお外掃除は優美がやっている分、

千夏は家の中担当である。


「おはよー」


「おはよう。遅いじゃないか」


「昨日夜遅くまで起きすぎたです」


「何時よ」


「5時すぎ」


「遅いし。昨日布団入ったの2時くらいだろ」


「なんかぼーっとしてたらそんな時間に」


掃除を終えて戻ったら千夏がいた。

時刻は12時。

起きる気配がなかったので

朝食はコンビニダッシュしてきた優美である。


「起こしてくれればいいのに」


「なんか気持ちよさそうに寝てたからいいかなと思ってな」


「部屋入ったんですか」


「可愛い顔して寝てたぞ」


「じっくり見てないで下さいよ」


「美少女が寝ていたらそりゃ観察もしたくなるだろうがよ。というか散々俺の着替えとか観察してた奴がよく言う」


「それとこれとは別」


「別じゃねえ」


そんなこんなでお昼過ぎ、

縁側に優美と千夏はいた。


「ここ桜がよく見えるね」


「家で花見できるな」


「いいねそれ」


「ああ。んーあれ持ってくるか」


「あれとは?」


「見りゃわかる」


一旦席を離れた優美が戻ってきた時、

その手には和菓子が乗ったお盆があった。


「ほんとに甘いものよくつれてくるね?」


「甘味大事っしょやっぱ」


「なんか当たり前のようにスって出てくるもの」


「まあまあ。別にこの日の為に買ったわけじゃあないが食うがいい」


「じゃあ一個もらう」


「ん」


桜の前でお茶飲みながら和菓子食ってる二人。


「しかし」


「うん?」


「こんだけ桜の木があると」


「うん」


「後が大変そうだなと心底思う」


「なんかあったっけ」


「桜の木って芋虫の温床じゃなかったっけか」


「げ、それは困る」


「頭の上とかに降ってこられたりしたらさすがに絶叫上げるぞ俺」


「私そもそも見たくない触りたくない」


「結局俺がお掃除ですかそうですか」


とそんなことを話していると足音がする。


「ん、誰か来たんかね」


「来たっぽい」


「ちょっと覗いてくる」


「ん、分かった」


縁側から地面におりてそのまま境内の方に向かう優美。

行ってみればどっかでみたことある顔がいた。


「む、なんか会うの久々か。そうでもないか」


「やっほー。優美ちゃん久しぶり―!」


「おいっす。茂光もな」


「うっす」


そこにいたのは千夏の級友の二人であった。

結構頻繁に来ていたが最近ちょっと見なくなってた二人である。


「それにしてもどったの二人ともこんななんとも言えねえ日と時間に来るなんて」


「んー?お参り?あとは単純に優美ちゃんとちなっちに会いたかったからかなー」


「俺は当然千夏さんに会いに」


「うん、まあお前はそれしかないだろうね」


茂光は相変わらずであった。


「ま、別に今日は俺らも暇だからゆっくりしてってよ。千夏なら向こうの縁側にいるかんな」


「んじゃちょっと俺は先に千夏さんのもとに…」


「だーめ!お参りも兼ねてるって今言ったでしょ!ほら先お参りしてから!」


「ちょ、川口っ!引っ張るな!分かった分かったから!」


「…仲いいなーあの二人。まあお賽銭増えるからいいけどね」


軽く普通のお参りを済ませた後に、

全員そろって千夏のもとへ。


「お帰り―って二人とも来てたんだ」


「久しぶりです千夏さん!」


「久しぶり―。と言ってもまだ数日しかたってないけど」


「…あいつの千夏スキーっぷりもなかなかだな」


「だねー…ちなみにしげみっちと会話すると半分以上ちなっちの話題だったり」


「…愛だな」


流れで全員そろって縁側に腰掛ける。


「桜綺麗だねー!家に居ながらお花見できるとか最高じゃないですかっ!」


「まあな。さっきまではここで茶菓子食ってただけだけど」


「えーもったいない!花見しよ!花見!」


「ナウでしてねーか」


「違う違うそうじゃなくてー!こう木の下にブルーシートひいてさ!」


「ああ、それか」


「それで花の下でこう缶ビールをぷしゅってやってですねー」


「全員未成年だっつーの」


「ま、まあそれは置いといて、せっかくこんなに綺麗なんだしやろうよー」


「んー、俺に言われてもこういうのは困るな…なあ、千夏」


「何ー?」


「今から4人分も花見っぽい食い物とか用意できる?」


「んー…買い出ししないといけないと思うけど、簡単なのならたぶん」


「ということらしいが」


「え?もしかしてオッケーですか?」


「いいよー。今日は暇だからそれくらいなら」


「やったー!じゃあ今すぐ準備しよ準備!」


「とりあえず材料買ってくるねー」


「あ、それなら俺も行きます!千夏さん!」


「あ、それならお願い」


「優美ちゃんブルーシートある!?ブルーシート!」


「いや、そんな全力で迫られても知らんがな。倉庫漁ってみねえとわからねえよ」


「なら早く早く!」


「あ、こらっ!倉庫勝手に開けんな!」


それで一時間もしないうちに全ての準備が整った。


「かんぱーい!」


「酒じゃねえけどな」


「しゅわしゅわしてるからお酒みたいなもんでしょ!」


「炭酸を酒と一緒にするなし」


「とりあえずこんだけ作ってきたよ」


「おお…さすが千夏さん」


「えへへ」


「こんな短時間によくもまあこんなに作ってきたなおい」


「おーおいしそう」


「さーさーご賞味あれ」


「いただきまーす!」


「…む、うまい」


「さすがだねちなっち!」


「ああ…幸せだ…」


「というかお前また料理スキル上がってないか」


「そりゃ毎日やってれば嫌でも成長していくですよ」


「そりゃそうか」


「千夏さん口開けて」


「え?むぐ」


「やった…!千夏さんに食べさせてあげるが達成できた…!」


「積極的じゃなー」


「自分で作ったけどこれおいしいや」


「もう一個どうです」


「それじゃ貰おうかなー」


「おい千夏。自分の手をつかえや自分の手を」


「えーでもなんかしげちゃんに悪いし」


「大丈夫だ優美ちゃん。気にしなくても俺は大丈夫だ」


「いやそういうことじゃなくてだな」


「はい優美ちゃん口開けて―」


「川口お前も乗るな…むぐ」


「おお、文句言いながらも食べてくれましたぞ!」


「…喋ってる最中に入れるなっ!詰まるかと思っただろーが!」


結局夕方になるまで続いた宴会もどきであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ