春の球技祭り(一種目)
「むー」
「どうした」
「そろそろ球技大会なんですよ」
「あー」
「それで卓球選んだんだよ」
「ほう、毎度のことだな」
「まあ卓球ならできるし」
「それで何故そうも憂鬱そうというか唸っている」
「いやですね、あれなんですよ。球技大会やるのはいいんだけどさ」
「ほう」
「練習の時間が今回0らしいんだよね」
「え、ないの?」
「そう、一時間も無いらしいんですよね。ひどくないですか」
「まあ、練習するほどの事でもねえってことなんじゃね」
「まあそうなのかもしれないけど、やっぱり少しくらい練習しときたい」
「そうか?」
「うん」
「んー…なんなら相手するけど」
「お願いするです」
「つっても卓球装備も台も無いけど」
「やれる場所にいけばあるんじゃない?」
「んーできる場所この近くにあったっけか」
とりあえず困った時のネットである。
適当に検索かけてみれば結構あった。
「ん、思ったよりもあるのね。卓球とか気にかけたことないから知らんかった」
「じゃあそこ行くですか」
「せやね」
ぱぱーっと用意して、近場の卓球ができそうな場所に向かう。
「ここですか」
「ここですね」
「結構広いのね」
「まあ卓球以外にもいろいろできるっぽいしね」
「テニスしてえ」
「それはまた今度でおなしゃす」
「はーい」
とりあえず卓球やる場所に向かう。
「とりあえず装備はしたと」
「はい」
「んじゃーやるですよ」
「せやね」
というわけで卓球台に向かう二人。
今日の二人は動きやすい服である。
まあスポーツ用とかではなく普段着なのだが。
「さてと、まあうん。やってもいいけど俺は大して強くないんだな卓球」
「まあ私もそこまでだけども」
「どうする普通のルールでやるか。それともカオスルールでやるか」
「カオスルールってなんぞや」
「ほら、いつぞやの中学時代にやっただろ」
「ああ、あれか」
ここで二人の言っているカオスルールとはかつて二人が同じ中学校だったとき、
卒業間際の体育の時間に行った卓球でのルールである。
どんなものかと言うと、落ちようが打つのに失敗しようがツーバウンドしようが、
球が一切打てなくなるまではひたすら試合を続行するとかいうものである。
当然本来のルールとか完全に無視したものなので完全に御遊び用ではあるが。
そんな滅茶苦茶だと点数のカウントすらできないし。
「んーでも今回は一応真面目に試合しないといけないからまずは普通で」
「りょーかいだ。得物を構えろ。いくぞ」
「はい」
と、言ったは良いが、初手のサーブで失敗する優美である。
「む、ミスった」
「駄目じゃん」
「い、今の無し。もう一回」
もう一回やってみればまあそれなりの球が相手側に行ったので試合開始である。
「よっ」
「ほいっ」
「ふっ」
「うわっ」
で、負けたのは優美である。
「ちょ、早いし」
「そう?」
「うまいじゃないですか」
「それでもよく負けるけどね」
「じゃあなんだ。そんなお前に負ける俺はなんだ。クソ虫か」
「いやそこまで言ってない」
というわけでサーブ権を千夏に回す優美。
「強い球が返せない俺氏」
「そうなの?」
「早く打てないのよね」
どっちかと言うと優美の卓球は防戦型である。
というかあんまりうまくないせいで勝手に防戦になる。
で、押し切られて負ける。
「とりあえず行くですよ」
「ん、来い」
千夏のサーブから始まる試合であった。
勝者は千夏である。
「むー勝てぬ」
「まだ2回ですしおすし」
「じゃあ三度目の正直ということでリベンジ」
「はい。ボール」
「ん。あざし」
というわけで三回目。
優美からの試合である。
「というか俺の一番の問題は卓球のサーブを結構ミスるとかいう」
「そうなの?」
「うむ」
とりあえずやってみる優美。
一応返った。
「ほい」
「ほあたぁ!」
バシンと優美が思いっきり振りぬいたラケットがいい感じにボールに当たったのか
強烈な球が返る。
「うわっ」
「やたー!勝ったー!まぐれー!」
どう見てもまぐれショットだったが一応勝ちである。
「というか、下手に気張るより適当にあんまり考えずに打ったほうがいいのかもしれない俺氏」
「まあ気張る必要はあんまりない。私だし」
「せやね。こっからは適当タイムだ」
そっから優美のスタイルがさっぱり変わる。
さっきまで防戦だったのが攻撃的になった。
当然ミスは増えているが本人はあんまり気にしていない。
とりあえず楽しめればいいので。
「ふー」
「けっこうやったね」
「だいぶ時間経ったな」
「だねー」
「もうちょっとやったら出ますか。マニーがえらいことになるといけないし」
「そだね」
というわけであと30分くらいと決めてやる二人。
「なんかやってたらだいぶ体慣れてきた」
「私も」
「いきなりやれって言われると滅茶苦茶ポンコツ化するんだよね俺。卓球」
「そうなの?」
「うむ。かつての俺の学校の球技大会であったんだけど」
「うん」
「練習が前日にあった時は8戦くらいして半分くらいは勝って、残りもわりといい試合だったんだけど」
「そうじゃない時は?」
「それが7戦くらいしてほぼ全敗な上にストレート負けばっかとかいうね」
「それはひどい」
「クラスの足引っ張るのもいいとこだわ」
「明日そうならないようにしないとなー」
「大丈夫じゃね。少なくとも俺よりはうまそうだし」
「とりあえず頑張ってくるです」
「というわけで俺の屍越えて行け。最後の一勝負じゃい」
「分かった」
「あ、サーブミスったらノーカンで」
「はいはい」
結局最後の勝者は千夏であった。
「ぐお、負けた」
「勝ったのだわ」
「わが生涯に一片の悔いなし」
「ちょ、死なないで」
「返事がないただの屍のようだ」
「という返事」
「メッセージウィンドウだったということにしといて」
というわけでさんざん卓球して外に出た二人である。
帰りがけになんか目についた自動販売機で飲み物買って飲む二人。
「運動した後の水分はうまい」
「水分補給は大事です」
「うむ」
ちなみに優美も千夏も炭酸飲料である。
やっぱ運動した後はこれである。
「というかですね」
「なんすか」
「なんか卓球してる時の優美ちゃんが小動物みたいでなんか可愛かった」
「そうすか」
「こう卓球しながらぴょこぴょこしてるのがなんかね」
「反応に困るな。そう言われても」
「でも可愛いのです」
「まあ美少女ですしおすし」
「さらっと言いますね」
「別にこれぐらいは言える。まあナルシではないが」
「自分のことをそう言うのはちょっとなんかあれですわ」
「なんなら言ってやろうか?美少女―だーって」
「それならいい」
「いいんかい」
そうして球技大会での千夏のクラスは準優勝であった。
「貢献はできたと思う」
「ならいいんじゃね」
「やっぱり練習大事だわ」




