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悶絶の朝

「…zzz」


時刻は午前5時くらい。

今日は特に何かあるわけではないのでまだ優美も千夏も寝ている。


「…」


まあ当然動く者の気配もないのだが。


「…っ、あああああぁっ!?」


突然響くのは優美の声である。

足の太もも部分を押さえて声にならない叫びをあげている。


「いっったぁっ!あっ…あぅ」


ふと目が覚めたと思ったら突然襲い来る痛みに絶叫しているのである。

足をつったのであった。


「ひっ…あぁ…はあはあ」


多少痛みがましになったのか少々表情が和らぐ優美。

まあ痛いもんは痛いのだが。


「ち…くっそ。なんでいきなりつったし…あぐ」


まだ痛い。


「…まあいいや。寝よ」


それこそつった直後は超絶痛すぎて寝る以前に一切の行動がとれなくなるが、

ちょっと経てば寝るのには特に問題ないレベルにはなるのである。


「はあ…こりゃ今日が思いやられるな」


そう言いながら睡魔には抗えず、結局二度寝する優美であった。

痛いけど眠気の方が勝った。


「…っそうだった」


そして起きてみてもそりゃ当然まだ痛みが引いてないわけで。


「…いったっ!うわこれ立てるか」


よっぽどひどくやったのか立とうとすると激痛が襲ってくるので駄目であった。


「そんなに疲れてたか…?」


布団の上でしばし考える優美。

が専門家でもないのでそんなこと分かるはずもないので優美は考えるのをやめた。


「…どーしよ。掃除できるかなこれ」


もう一回立ってみようとするが、かなりつらい。

しかたないので壁に手をついての片足立ちである。


「…しゃあねえ片足立ちで行くか」


しかたないので片足でぴょんぴょんやりながらリビングに向かう。

とりあえず掃除は後回しである。


「むう、どうしようかねこれ」


コタツの中で足をもみながらつぶやく優美。

とりあえず現状はまだ痛いので立てる気がしない。


「…湿布あったっけ?」


立ち上がろうとするが痛いしめんどくさいのでやっぱりコタツに埋まっておく。


「おはよ」


「ん、おはよ」


「あれ?いっつも掃除してるのに」


「うん…いやそのつもりだったんだけど」


「だけど」


「朝の5時くらいに思いっきり足をつりましてね」


「あー」


「結構ひどくやっちゃったみたいで真面目に今両足で立てない状態」


「成程」


「とりあえず掃除は昼間にやるよ。あと湿布ってあったりする?」


「んー、買ってあったと思うけど。ちょっと待ってね。取ってくる」


「頼んだ」


千夏が部屋の隅から湿布を持ってきた。


「ん、あざす」


「どこつったの?」


「足の…太もも部分」


「そっか」


「で、何故渡してくれぬ」


「え、貼ったげるよ」


「え」


「え、じゃなくて、さあさあ足だして」


「いや、自分でやるから」


「弱ってる美少女にこういうことやるのっていいよね」


「いいよねってやられる対象に言われてもねえ。というか言うほど弱ってもいねえよ」


「まあまあ」


とりあえずこのままだと埒があかないので素直に足を差し出す優美。


「あいよ」


「どこです?」


「ここです」


ペタリと湿布を貼る千夏。


「うぐ、まだいてえ」


「どんだけひどくやったんですか」


「結構ひどかった。わりと長い間悶絶してた」


相変わらず患部をさすりながら会話する優美。


「じゃあとりあえず朝ごはん作るです」


「ああ」


別に今日は休日ではないので普通に千夏は学校である。


「大丈夫ですか?」


「まあ、うん。痛いけどさっきよりまし。もう動ける」


「そっか。じゃあ行ってくるでお」


「行ってら」


千夏が学校に向かった後に朝できなかった掃除を開始する優美。


「…むぐ、痛い。立てなくはないけど」


とりあえずつったほうに力を込めると強烈にまだ痛むのでもう片方にだけ力を込めて歩く。


「えーっと掃除用具…っ」


ちょっとでも気を抜くとすぐに痛みがくるのでやってられない。


「まったく、掃除するのにこれはやってられねえぜ」


箒使うのも結構つらい。


「はー、いつもより時間かかるし…最悪だわ」


まあぶつぶついいつつ足さすりながらでもやるのだが。


「…終わった。ちょっと休憩」


いつもよりも多めの時間を使って掃除を終えた優美。

朝よりはましになったがまだ痛みは引く気配がない。

とりあえずやることはやったのでそのまま縁側に座り込む。

こういう時は靴をわざわざ脱がなくても座れる縁側はよい。


「ふぃー、疲れたー」


そのまま縁側に倒れる優美。

当然足は外に出したままであるが。


「…うーんこうやって見るとこの建物も大概古いなあ」


仰向けに寝転がれば目に映るのはこの家の天井部分である。

当然木造なわけだが。


「…戻るか」


しばらくそこに寝そべっていただろうか。

やることも無いので一旦玄関側に戻って靴を脱いできた。

とりあえず足の方も一応歩けるレベルまでは回復したので。


「ふう、あとは基本デスクワークだから楽よね」


とか言いつつ自分の部屋に戻る。

基本的に外でする日課は掃除くらいなのであとはデスクワークになる。


「どうせこれ終わったらPCつけるだけだしな。もう足痛くてもあんまり関係ないや」


ぱぱっと御札書きを済ませてしまう。

そうしてPCを付ければ基本動く必要のないいつもの優美の空間が出来上がるのである。

PCは便利。


「…茶でも持ってくるかな」


と思い立ったので台所まで行ってお茶を持ってくることにする。


「…っていかん。今の状態で下手に運ぶとこぼれて大参事になるんじゃ…」


現状はなんとか歩けるくらいなので、下手するとバランス崩してそのままお陀仏になりかねない。


「…むぐぐ、しかたねえ。ここで飲んでこ。思わぬ弊害だな全く」


そうこうしているうちに千夏が帰ってくる。


「お帰り」


「ただいまー。足大丈夫?」


「朝よりはずっとましかな。まだ痛むけど」


「湿布新しく買ってきたから新しいの使っても大丈夫だよ」


「お、あざす」


そうこうしているうちにもう夜である。

とりあえず風呂に入っている優美。


「…はあ。疲れがとれるし、痛んだ場所がほぐれるのはいいんだけどさ」


「うん」


「なんでまたお前いるのさ」


「まあまあ」


「いや、まあまあじゃなくてだな」


「一緒に入ったこと何回もあるじゃん」


「いやまあ、一緒に入るだけならともかく」


「うん」


「何故お前は俺の足をもみもみしてんすかね」


「痛いっていうから」


「いやそれ自分でできるから大丈夫だから」


「何言ってるんです。合法的に美少女に触るチャンスなんですよ。これ逃したら駄目でしょう」


「そんなことしなくても結構普通に普段から触ってくるくせに」


「こういうのはシチュエーションが大事なんです」


「やられてる側的にはなんとも言えねえ」


千夏は平常運転であった。


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