汚い
「んー、掃除すっかな」
今優美が来てるのは境内の方のトイレである。
当然使う人もいるので掃除はしとかないとやばいのである。
「なんつーか古いよなあこのトイレ。いや水洗式なのは助かるけど」
このトイレの小屋は木造である。
まあ床はコンクリではあるが。
「まああんまり使う人はいないから死ぬほど臭かったりすることが無いのだけが救いだな」
それなりに人は来るといってもわざわざここでトイレを使う人は少ないわけで、
あんまり使われないが、一応消臭剤はおいてある。
「さてと、ごちゃごちゃ言ってないでやるかな」
とりあえずホース片手に床掃除から始める優美。
当たり前と言うか、さすがに今は巫女服ではない。
さすがに汚れる可能性を考慮してジャージである。
「えーっとモップはー、あーあったあった」
近くの掃除用具入れからモップを引っ張り出してくる優美。
水撒きはしたので上からごしごしである。
「…つってもこれ意味あるんかね。汚れてるように見えんがな」
まあそうこびりついているような汚れも無いので正直やらなくても良いような気がするが、
やっとかないとなんか嫌なのでとりあえずやる優美である。
「…さてと、床はいいか。次は個室個室ー」
個室の便器である。
「とりあえず便器掃除しようかね」
洗剤を持ってきて便器を掃除していく優美。
汚い所は嫌いなくせに、なぜか昔から便器掃除は不快感をさっぱり抱かなかった優美である。
まあ汚い所が嫌いと言うか、優美の感性が受け付けないところが駄目なのだが。
「まあ小さいから便器の数少ないからいいよね。楽よね」
今いるのは女子トイレ。
個室の数は3つである。
「ぶっちゃけこれくらいなら適当にやれば5分で終わるんだよねえ」
かつては男子トイレの便器全部掃除して床も掃除して5分くらいで終わらせたこともある。
まあ当然その時はかなり適当ではあったが。
「さーってと。女子トイレはこんなもんかな」
便器を全部掃除し終えた優美。
だいたいここまでで10分くらいだろうか。
「ペーパー補充してっと」
ペーパーもへっているので補充は忘れない。
トイレに駆け込んで、ペーパー無かった時の絶望感は計り知れないものがあるので。
「さーってと。あとは洗面台やるかな」
スポンジで洗面台も一応洗っておく。
「とりあえずここもやっとかないとえらいことになるといかん」
正直優美が公衆トイレ使った際に、洗面台部分が汚いとものすごい嫌なので、ここら辺は念入りである。
「さてと、ここはこんなもんかな」
床の水は水きりで排水溝部分に流せるだけ流したらあとはまあ自然乾燥であるのでこれで終わりである。
「さてと…もう一個やらにゃなるまい」
一旦外に出る優美。
そう。当然といれば当然だが、ここは公衆トイレである。
女子トイレがあれば当然男子トイレもあるわけで。
「とりあえず誰もいないよね…」
下手に入って鉢合わせするとものすごいなんとも言えない空気になるので、
突然飛び込むことはできない。
「…うん、問題なさげですな」
チラっとなかをのぞけばだれもおらず、
個室も全部あいているので大丈夫であろう。
「えーっと掃除中って掛けとかないとな」
出入り口の所にそうやって書いた札を掛けておくのも忘れない。
というか前かけ忘れて中に入ってきた人と鉢合わせしてすごい気まずくなった。
「さてとー」
女子トイレと同じく、床に水撒いてモップで洗ってから水きりである。
ささーっと終わらせて、小便器掃除に移る。
「ふーむ、今はこれを使うこともなくなったな。なんとも微妙に懐かしい」
まあ今の体は精神はともかく女なので当然であるが。
「さてと、あとは個室か」
そうして個室の扉を開いてみれば見たくなかったものが移る。
「…流してけよっ!なんか臭うと思ったらそういうことかよ!」
便器の中になにやら塊とペーパーの山が見える。
流し忘れか。
はたまた故意か。
ちなみに後者だった場合は、優美に見つかったら半殺しにあうであろう。
「ったく…学校の時代もそうだったけど、これやってくやつ何考えてんだ」
学校にいた時代も結構よくあったのである。
なので高確率に掃除場所に一番にやってきていた優美が嫌でも第一発見者になることが多かったのである。
「掃除する側の気持ちも考えろよな…まったく」
まあ便器の中だったので流せば済んだのでよかったのだが。
「はあ、まあいいや。次だ次」
そうして男子トイレの二つ目の個室に入ってみれば、
そこにあったのはさらに問題の物体である。
「…うおぃ!はみ出てんじゃねえかっ!」
ここのトイレは和式である。
和式なのである。
狙いがずれたのかもしれない。
とにかくそれは思いっきり便器の横に落ちていた。
「…あー、クソっ!クソだけに」
アホみたいな誰も聞いてないギャグをかましながら、
仕方ないのでその塊をペーパー使いながら便器の中に放り込んでいく。
当然だが触りたいはずがないので、顔がゆがみまくりである。
「うげえええ…きめえ…」
何重にもしたペーパーでそれを掴んで便器に放り込んで中に流す。
落ちてた場所は洗剤で念入りに洗い流しておく。
さすがにそれが落ちてたというのを放置はできない。
「…最悪」
ぶつぶつつぶやきながら洗面台で何度も手洗いである。
ふと鏡をみやるとそれはそれは強烈なジト目が返ってきた。
まあ当然鏡に映った優美の姿なのだが。
「…ここも洋式に変えたらこういうこともなくなるんだろうか」
ぶつくさ呟きながら外に出ると、千夏と鉢合わせた。
「お帰り」
「ただいまー。トイレ掃除?」
「ああ」
「なんか普段以上に死んだ目してるね」
「排泄物が便器脇にこびりついてた。お分かり?」
「ああ、うん納得」
「やめてくれませんかね、あれ」
「まあたまに見かけるよね」
「外したら自分で処理してくれ…いや床はまあいいからとりあえず本体は流しといてくれよ」
「触りたくないんでしょ」
「いや、他人の出した物とかもっと触りたくねえし」
そう言って二人で家に帰ったかと思いきやすぐに外向きの格好に着替える優美。
「あれ?どっかいくの?」
「いや、石鹸切れてたから買ってくる」
「なんだ、言ってくれれば買ってきたのに」
「さっき気づいた」
「こういう時は外にも躊躇なく出てくよね」
「前言っただろ。外に出る用事が無いだけだ」
まあ結局向かった先はいつものコンビニ。
やっぱり行動範囲は狭い優美であった。




