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突発的来訪

「…空気いいよなここ」


掃除していた手を少し止めて空を見上げる。

良くも悪くも周りは木だらけで自然が残っているので空気は非常に良い。


「んー…」


そのまま目を閉じる優美。

軽い日向ぼっこである。

自然は好きなのでたまにこういうこともする。


「む」


足音で現実に引き戻される。

静かなせいかわりと石階段を上ってくる音はよく響く。


「…話し声?参拝客か?」


それなりに来る人もいることにはいるが一人で来る人が多かったのであんまり話し声は聞かない。


「しかしこの声。千夏では」


さすがに毎日聞いている声を聴き間違えることはありえない。

もともと耳は良いのである。


「おお、やっぱりか。お帰り」


千夏の頭がひょっこり見える。

やっぱりそうだったらしい。


「ただいま優美」


その声と共に新しく人影が左に現れる。

女子である。

制服を着ているのを見る限り学生のようだ。


「うん?そっちの方は?」


「あ、学校の友達」


「できるの早いな」


「まあね」


「ふおー。本当に神社に住んでるんだ。初めて見たよ」


そう言うのは向かって左手にいる女子である。


「それで、今日はどういったご用件でしょうか」


「えっと、ちなっち。この子は?」


ちなっちはあだ名である。千夏の。


「この神社を切り盛りしてる優美ちゃん」


「どうも」


「こちらこそ。川口佳苗(かわぐちかなえ)って言います。よろしくです」


「いえいえ。いつも千夏がお世話になってるようで」


「いやいや、ちなっちおもしろいですから」


そのまま談笑する二人。


「ちなっちが神社住んでるって言ってたのでどうしても気になっちゃって。いきなりすいません」


「別に構いませんよ。基本的に暇してますし」


「あはは、よかった」


「まあ、立ち話もあれですし奥へどうぞ」


「あ、ありがとうございます」


そう言って奥に行こうとする優美。


「あっと。いけないいけない。忘れるとこだった」


そう言って賽銭箱の方へと走っていきお賽銭を放り込んでお参りする佳苗。

それを見て優美が笑う。


「なんだ。いい子じゃないか」


「賽銭入れたらいい子認定なんですか」


「そういうわけではないが」


「うん」


「入れない人よりは絶対いいよね」


「やっぱお賽銭じゃないか」


「一応これがここの経済回してますから」


「全然収入ないけど」


「収入だけ見たら、俺らの家計は火の車」


ちなみに決して賽銭入れたからいい子認定したわけではない。

話してみた感じも含めてである。


「すいません。お待たせしました」


「構いませんよ。さ、どうぞ」


そう言って佳苗を家の方へと招く。

この家の敷居を跨ぐのは優美と千夏以外では初だったりする。

そもそも家に招くほど親密な相手もいなかったので。


「おー。和装建築だ」


「珍しいですか?」


「修学旅行以外では見たことないです」


「まあ数はそんなにないですからねえ」


そう言って一室へと通す優美。

部屋自体はわりとたくさんあるので来客があるときは便利である。

まあそんなに人が来ることもないだろうが。


「それじゃあ私はこれで退散しますのでゆっくりしていってください」


「あ、はい」


「そんなにかしこまる必要ないですからね。たぶん私も同い年ですから」


たぶんな理由は当然自分たちの歳が本当は何歳なのか分かっていないせいである。

ここに来る前は17だったのだが今の体が何歳なのかは謎である。


「それじゃ千夏。お茶等々は任せた」


「りょーかい」


そう言って部屋から退散する優美。

こういう時部外者がいると話しづらくなるのは経験から重々承知済みなので。


「…んじゃま、掃除再開しますか」


することは変わらない優美であった。


「お邪魔しましたー」


「ええ。またどうぞ」


「はい!また来ますね!それでは!」


結局佳苗が帰ったのはそれからじっくり数時間後であった。

一体何を話していたのやら。


「ふんふん」


「どしたの?」


「いやまさか連れてくるとは思ってなかったし」


「連れてこようと思ってたわけではない」


「じゃあなして連れてきたし」


「喋りながら帰ってたらここまで来てしまった」


「またか」


以前ここに来る前も話しながら帰っていたら優美――当時はまだ勇人――の家まで来てしまうことなどが多々あった千夏である。


「そいで」


「うん」


「何話してたの」


「え、いろいろ」


「いろいろの部分が聞きたいのだが」


「優美ちゃん可愛いとか」


「またそれか」


「小っちゃいのにしっかりしてるとか言ってたよ」


「小学生にでも見られたかおい。小さいのは認めるけど。というか同い年って言ったよね?」


「突っ込んだけど、嘘だあ、とか言われた」


「あの子の中での俺の認識どうなってんだよ」


「しっかりした小学生」


「まとめなくていいから」


「あとは本当に神社に住んでるんだーってすっごい言ってた」


「まあそこは同意する。なかなか見るもんじゃあないし」


少なくともそういう人間には一度もあったことがない二人である。


「つかなんで話したし、神社住んでるって」


「え、いや自己紹介の時に神社で巫女やってますって」


「いうなよ」


「え、いいじゃん話題にもなるし」


「人来るじゃん」


「賽銭たまるよ?」


「お参りしに来るならいいよ。見に来るだけのやつが増えそうだろそれ」


「確かにまあ」


「困る」


「なんで」


「どうやって賽銭を搾り取るか考えないといけなくなる」


「優美ちゃんゲスい」


「いやまあ嘘だけど」


「嘘ですか」


「来たら入れてほしくはあるけど、強要はしない」


「というか強要したらカツアゲとかと変わらないよね」


「せやな」


「じゃあ何が困るの」


「お前の友達でーすとか言って来たら相手せざる得ないし」


「適当でいいんだよ?」


「お前の人付き合いに影響でそうだし。下手すると」


人付き合いうんぬんに至っては両極端なのが優美であった。

気に入った相手はとことん付き合うが、そうでない相手にはとことん適当になる。


「今日みたいな感じで」


「一回くらいならあれでいいけど」


「うん」


「何回もあったら絶対適当になると思う」


「別にそれでいいんじゃないの」


「しかしそれでお前が孤立したりしたらあれじゃん」


「さすがにないでしょ」


「まあその時は俺にだけ依存してくれればいいんだけど」


「怖いよ」


「とにもかくにも、あんまり来られると適当になるのは免れない」


「そうですか」


「少なくとも今日みたいに家に上げるとかしないからたぶん」


「まあ別に友達でもない人来た時にそんなことしなくていいし」


「そらそうか」


「うん」


「まあ少なくとも礼儀守ってくれてれば来てもいいんだけどね」


「駄目な奴は?」


「ケツぶっ叩いてでも追い出す」


「おお怖い」


「やるからねこれは」


「やるのかよ」


「ケツでだめなら箒持って追いかける」


「それで駄目なら?」


「模造刀もってだな」


「わりと洒落になってないそれ」


「大丈夫殺傷力は低い」


「そういう問題じゃない」


ちなみにたまに暇があるとまだ模造刀を振ってることもある。

型もへったくれもあったもんじゃないが、見た目美少女なだけでだいぶ絵になるので謎である。


「まあでも」


「ん?」


「友達できたみたいで安心した」


「話しかけること自体はできるし」


「また前後の番号の人ですかね」


「当たりですね。後ろの番号の子です」


「前はどうした」


「話すよ」


「二人で来なかったけど」


「家の方向真逆だった」


「そうかい」


「それに男子だし」


「お前性別気にしないだろ」


「向こうが気にするんじゃないかな」


「まあ仮にもここ家だもんな。女の。男子にゃ確かに若干来づらい」


「そこで名乗りをあげられる奴はイケメンかリア充ですし」


「もしくはリア充予備軍」


「リア充爆発しろ!」


「ドーン」


「バラバラ」


「しめやかに爆発四散!」


「ぷっ」


「ふふ」


ちなみに両者ともどもリア充に属するものになったことは無い。

どっちかっていうと負け組よりであった。


「お前もいつか誰かに攫われていくんだろうか」


「それはまたどういう意味で」


「男に告られる的な意味で」


「オッケー出さないと思うな。少なくとも今はまだ」


「それもそうか」


「まあレズになる気もないけど」


「中身を見るとそっちのが正しいんだがな」


「そういうそっちはどうなんのさ」


「俺は知らん。考えたこともねえし。いや本当はあるけど今はまだねえさすがに」


「男に言い寄られたらどうするの」


「真面目に考えてから返事するさ」


「その場で切り捨てるかなと思ったけど」


「俺はなに。切り裂き魔何かなの」


「違うんですか」


「そうだったらどうするんだし」


「全力で逃げる」


「追いかけよ」


「怖いし」


「こうチェーンソーもってだな」


「ジェイソンか」


「ジェイソンはチェーンソー使わないらしいけどな」


「なんで広まったんだろうね」


「さあね。映画見たことないし」


「というかそこで刀使わないのね」


「刀の方がいいんですか?」


「そういう話じゃない」


なおこの後佳苗が学校でこのことを話して広まるのは自明の理であった。

人の口に戸は立てられないことを痛感した優美である。


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― 新着の感想 ―
[一言] 市役所に行ったときに住民票をもらえればよかった。: ここに来る前は17だったのだが今の体が何歳なのかは謎である。
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