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_____夢路3_____

もやもやーっと。

ゆらゆら揺れ動く光の靄の中に優美はいた。

もはやご存じ通りの空間である。


「またここかあ…三回目か?」


ふわふわと。

なんか漂うのも慣れてきたような気がする優美。


「さーてっと。本日は何用でっしゃろ?」


漂いながら虚空に向かって呼びかける優美。

まあ本当に虚空かどうかは誰も知らないが。


「ん、反応がないな。どうしたんや」


『ちょっと待っておれ。そうもすぐに出ていくことはできぬ』


「あ、聞こえてた。あ、ゆっくりでいいっすよ」


その言葉にこたえるかのように靄が動いていく。

明らかに意思を持って靄が一か所に集まり形を作り上げていく。

そのまま靄の中から狐少女がにゅっと出てきた。


「というかその姿はもう安定なんすか」


『いちいち毎回作り変えるのも面倒であるのでな。しばらくはこれを使わせてもらう』


「あ、はい。まあ眼福だからいいけど」


狐少女の姿は優美と千夏の記憶や妄想から生み出された姿であるが故に

二人に負けじ劣らずの美少女っぷりである。

というか二人の妄想から生まれたせいか下手すると二人よりもやばいかもしれない。


「ところで今日は何用で」


『今日は我の用と言うよりも…そなた前回の最後に何か聞きたいことでもあったのではないか?』


「ん、えー…あ、そうそうあったあった」


『何が聞きたいのだ』


「ずばり、なぜ俺らはこんな体になったのかという話」


前回この発想にたどり着いたはよかったが、聞くまえに現実に送り返されたので

聞かずじまいだったのである。


『…そういえばまだ話しておらんかったな』


「聞いてないっす」


『事はそなたらをここに送るときの話だ』


「ほう」


『初めはそなたらをそのままこちらに送ってくる予定であった』


「ふむふむ」


『ところがだ。その段階になって問題が生じたのだ』


「どんな?」


『そなたらを転送する際に体の方は一度微粒子レベルまで分解してからこちらで再構築する予定であったのだが…』


「こわっ。何その転送方法超怖い」


『こちらで再構築する際になって我の力が微量に足りぬことに気付いてな』


「ほう」


『余剰はあったのであるがもしもそなたらがここに残ることを拒否した時のために世界を元に戻すための力は残しておかねばならなかったのだ』


「うん」


『そこでそなたらの体を小柄な少女のものへと変えることで、再構築する際の力の消費を抑えた』


「なるほど」


『優美。そなたは大柄であったし、千夏は背が高かった故にな。再構築の時に必要な力量も多かったのだ。

すまない』


「いや、いいんだけどさ。ちなみにその時元の姿のまんま再構築してたらどうなってたの?」


『頭の一部が再構築不可であったな』


「こわっ!死んでる!死んでるよそれ!」


『すまぬ。苦肉の策であった』


ふわふわしながら対話を続ける二人。


「…なるほどね。ようやくどうしてこうなったか分かったわ」


『すまぬ。我の身勝手故にこのような事態に』


「だからもうあやまらなくていいってば。俺は気にしてないし、たぶんあいつも気にしてないし」


『…ありがとう』


「お礼言われることでもないって」


『…ああ、そうそう。そこでなのだが』


「おう」


『そなたらが献身的にこの場所で働いてくれたおかげで我の力も全快とは言わずとも回復してきた。故に今であればそなたらの姿を元のものへと戻すことも可能だ』


「え、今?」


『むろんそなたらが望むのであればであるが』


「いや、いいっす」


『即答であるな』


「いやなんというかこうこの場所での記憶って残らないから朝起きていきなり戻ってるーなことになるとそれはそれでパニックですし…」


『…それもそうか』


「というかなんだかんだで今の体に慣れてしまったのと家の中の物がだいたいこの体に合わせた物になってるから今戻されるとかえって困る」


『そうか…?その程度であれば我の力で書き換えることもできるが…』


「んー…というか本音言うと今の体気に入ってるから戻りたくねえかな」


『…ふふ。変わっておるな。今の方が良いというのか』


「こんな美少女って言える体になってわざわざ戻る必要も無し」


二人とも可愛い女の子は大好きである。

自分たちがなっちゃたらそれはそれで問題なかったのである。

現実的な問題はいろいろ出てきたがその手の話は好きであったので。


『千夏の方にも聞いてみたがほとんど瞬間的に断られたわ』


「まああいつは元々そういう願望が少なからずもあったみてえだし」


『本当にかわっておるなそなたらは。揃いも揃って』


「そんな変人を選んじゃったのは神様。あなたでっせ」


『そうであったな。結果的にそなたらが受け入れてくれたおかげで非常に助かったが』


目の前に浮かぶ狐少女の表情が少しだけ動いた。

今までは一切の変化が無かったのである。


『このような不条理を受け入れてくれて感謝する。これからもよろしく頼むぞ二人とも』


「…お、おう」


『…どうした顔を赤らめて』


「…その顔は反則だってばよ…」


『顔?』


「その顔で笑顔はいかんって!あのですね九尾殿。俺は仮にも中身は健全なる男子高校生でございますよ!?そんな顔を見せられたら鼻血ぶーになってしまうではありませんかっ!」


実際二人の記憶と妄想から形作られたその姿は優美にとってはストライクド直球な姿なのである。

その姿での笑顔はとてつもない破壊力であった。


『この空間の姿は仮のものであるが故に鼻血は出ぬぞ』


「いや分かってるけども。例えですよ。例え」


理解できてなさそうな神様であった。


『…さてと。そろそろ時であるな』


「もう帰りの時間か」


『夜明けである』


「普通に朝だった」


『また会おう優美。我はそなたらと話したい』


「俺はいつでも呼んでもらってかまいませんで」


『ではその言葉に甘えさせてもらおうか。またいつかここに呼ばせてもらう』


「いつでもどぞー」


『ではさらば。また会おう』


「また会いましょー」


辺りの光の靄が薄れ始める。


『…ああ、そうそう帰る前に一つ』


「なんでっしょ」


『その姿でいる期間もだいぶ長くなってきたが…そなた女の子らしさの欠片もないなと思うてな』


「…余計なお世話じゃいっ!俺は男じゃ!中身は!」


その言葉を最後に優美の意識は光に飲まれた。


□□□□□□


「ん…」


むくりと布団から這い上がる優美。


「…朝か。…なんだろ。なんかすっきりした気がするんだがすっきりしねえ…」


よく分からない感覚に悩まされる優美であった。


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