要するに鶏肉
本日はクリスマスである。
結局3時くらいで茂光と佳苗は帰っていった。
なお全員メリークリスマスと言ったのは別れる直前である。
普通に今日がそうだってこと忘れかけてた。
「ぐむむ、楽しかったが少し疲れた」
「そう?私は楽しければ疲れないけど」
「その精神がうらやましい」
リビングに舞い戻ってコタツの中にインする二人。
いつもの空気が流れる。
「…しかし、クリスマスだから茂光絶対お前になんかしてくると思ったんだがな」
「しげちゃんはそんな子じゃないです」
「ちげえちげえ。性的な方じゃなくて普通にこう外に連れ出したりするのかなと思ったんだが」
「無かったね」
「さすがにそこまでの度胸はまだないか。今後に期待だな」
「言われれば応じるよ」
「そういうとこあっさりしてますよね君」
そして何かのしびれを切らしたかのように千夏を見つめて言い放つ優美。
「というか朝からずーっと思っててなんかタイミング逃して言えなかったんだけど」
「うんうん」
「なんやその格好はっ!?」
「遅くないですかね」
「だから言ったでしょうが。なんかタイミング逃したって」
千夏の今来ているのは赤を基調とした帽子と一セットな感じの服である。
なんかこうチラシとか配ってそうである。
要するにサンタガールである。
「だって今日を逃したらいつ着るというのですか」
「いやまあクリスマスしか着る物体ではないけどさ。なんで朝部屋から出てきたらすでに着てるんですかね」
「いやどうせだし知ってる人には見せておきたいといいますか。二人ともお昼すぎには帰るって話だったし」
「だからって起きてすぐっておい」
ちなみに部屋の中なので帽子は今は脱いでいる。
なお朝起きていた時は部屋の中でも頭にのせてた。
「しかしメリクリか。神社ってことを抜きにしても全く関わり合いのないイベントだな」
「リア充御用達のイベントですし」
「今はいざ知らず、とりあえず前まではさっぱり縁のないイベントだった」
「でも小学校とかでサンタきてたでしょ?」
「まあな、中学でなくなったけど」
「夢のあるイベントだよね。あれは。まあ私はいまだに信じてるけどサンタ」
「マジかよ」
「だって本当に今考えてもいつプレゼントが置かれたのか分からないんだもの」
「まあ寝てるしな」
「家族全員が一部屋に集まってるときに私の部屋にプレゼントが来てたりしたのですよ」
「それはまあ確かにすげえけど」
「あれは嘘じゃない!本当にいるんだ!」
「まあ俺もなんか微妙に信じてるふしはあるな。正体ばらされてもなんかいるんじゃねえかなとかね」
「あれはいるのです。間違いない」
といいつつ立ち上がる千夏。
「んー?どこ行くの」
「ちょっと着替えてくるのです。その後外行くのです」
「ん?着替えていくのか?」
「さすがにこれを着て外歩ける自信はないです」
「まあ、うん。そりゃそうか」
「というか何他人事みたいな顔してるんですか。一緒にって意味ですよ」
「む、そうかい。じゃ着替えてくら」
「自分で出ることは無いけどこういう時はわりと素直についてくるよね優美ちゃん」
「なんかね。行先考えるのもめんどくさい」
「天性のめんどくさがり屋にもほどがある」
その後外に出る二人。
二人ともそれなりに厚着である。
千夏とか顔も若干見えなくなりつつあるレベルに防寒具を着用している。
「…なんかこうやってお前と外に出るの久しぶりな気がする」
「そうだっけ?」
「うん。そもそも最近外に出た記憶がないから間違いない」
「判断の仕方が引きこもりすぎる」
「しかたないね。というかどこに行くのさ」
「ん?ちょっと街中の広場の方に」
「なんかあんのか?」
「普通にお店行くのもありかなと思ったんだけど、なんかそこにツリーがあるらしいのでどうせだし」
「成程ね。というかどっからそんな情報仕入れてくるんだ」
「学校の子たちがわりとよく喋ってるのです」
「ほえー」
「今日は彼氏とどこどこいくのーみたいな感じで」
「あ、はい。リア充の方でしたか」
「結構いますからね。なんかたまに彼氏との生々しい話とかしてきたりして反応に困る」
「まあそりゃ確かに」
「そして必ず彼氏いるかいないかを聞かれるという」
「好きだからねそういう話。しかたない」
「そしていないというとすっごい驚かれる」
「まあその面なら男には困らぬだろうと思うのが普通であろ」
「付き合った人くらいいるよね!?みたいな感じに聞かれてもいないとしか答えようがないんですよね…」
「しかたないな。事実だ」
「いないとおかしいのだろうか」
「お前を純粋な女としてみるなら、いない方がおかしいレベルなのではないだろうかね。他の女子から見れば」
「でも、硬派な女の子だったらいない子だって普通にいると思うの」
「まあね。ただ純粋女子から見ればありえねーってなる可能性はある」
「でも中身があれだから付き合えないの」
「しかたないね」
そのまま談笑し続けて歩き続ければ気づけば広場であった。
「おっ、なんつーか予想以上にでけえぞ」
「大きいですね」
「もうちょっとこじんまりしたの想像してたわ。これは来た価値ありかもな」
「綺麗ですよね」
そこにあったツリーは体感的にはかなり大きめであった。
なかなかのものである。
「なんかね。こういうの見るの良いよね」
「クリスマスシーズンしか見れないしね」
「自分の家でイルミネーションとかしねえしこういうのは見に来ないとみれないのよね」
「イルミネーションやってる家ってすごいとこ本当にすごいよね」
「たまに規模的に頭おかしい感じのもあるしな。でかい家がまるごとイルミネーションで覆われてた時はなかなか驚きだったわ」
なお家でやらない理由は外の人に見せてどうするとかいう理由であった。
当然めんどくさいのも大きな理由の一つである。
なお神社では当然やっていない。
さすがに景観破壊もいいとこである。
「…お、雪降ってきた」
「ホワイトクリスマスですね」
「いいものじゃ」
「あんまり見ないしね」
辺りはちょっと薄暗い。
「なんか雰囲気いいですね」
「いいですね。こういうの好きです」
「まあ本来こういうのって恋人と来るべき気がするけどね」
「うんまあそれは」
「周りにも結構カップルっぽいのいるしな」
「うん」
「告白には最適なのやもしれぬ」
「まあ場所的にもなんかありきたりだけどいい感じだよね」
「あなたが好きです!付き合ってください!」
「へ!?」
「とかいう感じで」
「冗談ですか…」
「マジで言ってほしい?」
「いや、それはちょっと」
「なんだよ」
「え、言いたかったんですか」
「いんや。でもお前ならいいのです」
「そういう冗談はよくないのですよ」
「受け入れてくれるならマジになる」
「ええ!?」
「ある意味性別の垣根はぶっ壊してるし多分問題ない」
「そういう問題じゃないのです」
「まあいいや。とりあえず飯食おうぜ。腹減った」
「そうだね。外食ですね」
「まあクリスマスだし良いんじゃないのかね」
「普段しないしね。いいよね別に」
「我はチキンを所望する」
「昨日食べてないもんね。そうしようか」
「某ファストフードとかね」
「それもいいね」
なおその後どこに食べに行くかを話し合った結果、
何があったのかから揚げを食べている二人がいた。
「まあ、一応鶏肉だもんね。チキンだよね。いいよね」
「問題ないな。うまいし」
「ですね」
「うん、ここのから揚げからっと揚がってるからおいしい」
「そうなの?」
「うん。不味いとこのは食えたもんじゃねえからな。ここのおいしいですわ」
なんだかんだ言って夜まで外に滞在し続けた二人であった。
いいクリスマスだった。




