宗教違いの日
なんか佳苗と茂光が準レギュラー化してきた今日この頃。
「そろそろクリスマスだねえ」
「そうだな。まあ関係ないが」
「え?」
「ここ神道だっつーの。あれキリストだろうが」
「でも日本人みんなやってますし」
「まあな。関係はないが、別に何かやりたいならば俺は止めん。好きにしてくれ」
「今年こそリア充に」
「ん、もう男と寝る覚悟できたのか。早いな」
「違うよ!発想が極端だよ!」
「でも今リア充になるって男と付き合うってことだし」
「…やっぱ無理。リア充爆発しろ」
「と言いつつ別にそこまでリア充が羨ましいと思わなかったり」
「今の生活で満足してるよね」
「うむ」
ちなみに今日はクリスマスイブイブである。
「それで何をしようというのかね」
「明日の夜はピザ食べたいよね」
「ピザすか」
「こういう日しか食べれなかったので」
「ん、そうなの?うちはわりとノリで買ったりしてたが」
「ピザの宅配は特別で神聖なものだったのです」
「ピザが神聖ねえ。まあ別に構わんよ」
「パン生地のデラックスピザをですね」
「言っとくが一枚で足りると思うなよ」
「知ってます。二枚は頼むお」
「ならよし」
「一体優美ちゃんはその小さな体のどこにあんなに食べ物押し込むスペースがあるのか」
「異空間にでも繋がってんじゃね」
「どこの某食いしん坊のピンクボールですか」
「まあでもピザですか」
「美味しいよね」
「俺は好きよ」
「私も好きです。というかいっそみんな呼んじゃおうかな」
「呼ぶの?クラス全員?」
「ないない。しげちゃんと佳苗ちゃん呼ぶだけ」
「ん、別に構わんが。二人くらい」
「よーし。呼ぶです」
「くく…茂光が耐えれるか心配だな」
「何に?」
「仮にもここ見た目は女のハウスだぜ。女3に男1。茂光が鼻血出しちまうな」
「あれ?しげちゃんこれってハーレムじゃない?」
「どこのエロゲ」
そうして次の日である。
「呼んだよー」
「そうか。だが1人に見える」
「準備するから一回帰るって」
「…そりゃそうか。まゆっくり待つかね」
千夏が着替えに家の中へと消えていく。
優美は掃除中である。
まあ二人が来るのを待っているというのもあるのだが。
「おー、優美ちゃん久しぶりー!」
佳苗であった。
何気に私服なのは初めて見たりする。
「おいーっす。ん?一人?」
「?そだよー」
「茂光と会わんかった?」
「見てないけど」
「そうか。一体何を準備してるのやら」
掃除の手を止める優美。
「じゃあまあ入ってよ。多分千夏いると思うから。俺は茂光来たらいくから」
「オッケー。ん、でも多分って?」
「自分の部屋で着替えてる可能性が少し。あいつのことだし、服選びに時間かけてるやもしれん」
「へー。こっそり入って脅かしてやろうかな…ちなっちの部屋って?」
「玄関入って曲がった後の4つ目の右」
「ありがとー。ふふふ、今行くぞちなっち…」
なにやら暗黒の笑みを浮かべながら玄関先へ突進していく佳苗。
何度か来たことがあるので場所はもう把握している。
それからしばらくして、
図体でかくて小心者。
茂光が姿を見せた。
「きたか。何やってたんだ」
「いや、ちょっと準備に手間取って」
「手間取るような物があるのか…?まあいい、入れよ」
「お邪魔します」
とりあえず中に入れる優美。
もう特に待ち人もいないのでそのまま続いて優美も入っていく。
「というか毎回思うが仮にも女子しかいない中によく来るなお前」
「千夏さんがいるのに来ないなんてことはできん」
「一途な男だこと…普通少しは躊躇するだろ。女しか居ねえのに」
「でも優美ちゃん男っぽいし」
「言いやがる。まあそれは自覚症状ありだからおいとくが。川口とかはどうなるんだよ。ふつうに女子だろ」
「なんというか友達だな」
「その割り切りっぷりはすげえと思う。いやふつうに」
その後佳苗に部屋に侵入されて、固まってる千夏をなんとかするとかいうことはあったが、そのまま時間は流れて夕飯時である。
「来ましたよー」
「おー、ピザだー…ってなんでピザ?チキンじゃなくて?」
「知らん。こいつの謎の要望だ。文句はこいつに言ってくれ」
「俺は千夏さんの選んだものならなんでも」
「お前は少しは自分で思考しろい」
結局当初の予定よりもはるかに多い量を注文した千夏。
まあもう4人も集まりゃパーティーみたいなもんであるので。
「ま、とりあえず色々やるのは食ってからにするべよ。ふつうに腹減ったわ」
「そうだね。食べようか」
「あ、私一番でっかいのー」
「あ、ちょ、川口おま。それ俺が取る予定」
「ふふふ、先に取ったもん勝ちなのだよ優美ちゃん」
「あ、あの千夏さん。取ってくれたら嬉しいなあ…なんて」
「あ、いいよー」
「あ、ありがとうございます!」
「そらもういちまーい!」
「だから取るのはええっつーの!まだ俺一枚も取ってねえって!」
わーわーである。
ピザとか頼むから余計五月蝿くなった気もするが。
「あー、食った食った」
「うげぇ…ちょっと食べすぎたかも」
「自業自得だろ。アホみたいに取っていきよって」
「だっておいしかったし…それにしても優美ちゃんよく食べるね?」
「めっちゃ食うぞ俺は」
「なのに小さい」
「うっせ。ちょっと最近気になってきたからやめんかい」
「でもその体のどこに入っていくのかがすっごく気になる」
「千夏にも言われたわそれ」
実際問題、食べてる本人も食べたものがどこに消えて行っているとか分かっていないのである。
分かるはずがない。
「次は千夏さんの手料理食べたいなぁ…」
「こんど作ってあげよっか?」
「いいんすか!?」
「いいよー。暇なときでよければ」
さりげなく約束を取り付ける茂光であった。
その後ひとしきり遊び倒した4人。
「…うわ、もうこんな時間じゃねえか。風呂入るぞ風呂」
「喋りすぎた…いつもの気がするけど」
「お前と俺の場合は二人でもそうだけどな」
「お風呂入るの?あ、そうだ!二人も一緒に入ろ!」
「え!ええ!?わ、私は結構です!」
「ん、別にいいんじゃねーの。茂光にゃ先に入ってもらう必要あるけど」
「あ、じゃあ先俺入ってきていいっすかね」
「ん、行って来い。この部屋出て左まがって二番目の右手の扉な」
「了解っす」
さすがに女子勢と男子は一緒に入れないのでこれはしかたない。
「えー、せっかくだから一緒に入ろうよちなっちー」
「え、ちょ、ちょっとそういうのよくないかな、なんて」
「何がよくないのさー、入ろうよー」
「佳苗ちゃんなんか酔ってない?」
「えー、私は普通ですよー。ねえ入ろうよー」
「この家の瘴気にあてられたんじゃね」
「なにそれ怖い。というか優美ちゃん、佳苗ちゃんなんとかして!」
「え、いいじゃないか一緒に入ろうぜ」
「だ、駄目だよ!私が恥ずかしくて動けなくなるって!」
「お?ちなっち恥ずかしがり屋さんですか?大丈夫だってー女同士だしー」
「問題あるんだってばー!」
結局茂光が出てきてから一緒に入ったのは優美だけであった。
いやむしろここで普通に一緒に行っちゃう優美のがおかしいのかもしれないが。
「すまんな。あいつ、人の裸見るのが駄目らしい」
「別にいいのにね。見られ慣れてるわけじゃないけど友達だし。同性だし」
「あ、ああ。まあ確かに」
「…とはいうけど、優美ちゃんタオルまいたりしないの?」
「しねえな。どのみちこの幼児体型じゃ気になるまいて」
「そういう問題じゃないと思うけどなー…」
基本タオルはまいたりしない主義の優美である。
「…それでですね」
「なあに?優美ちゃん」
「何故俺は川口の膝の上に乗せられているのだろうか」
「えーなんか乗せたくなっちゃったんだよ」
「どういう心情よそれ」
「可愛いものを愛でたい心境」
「ああはい。理解。理解はするが俺にやられてもなあ」
「いいじゃん。優美ちゃん可愛いし。小っちゃいからちょうどいいし」
「むう、しかしこれでは体が洗えぬのだが」
「洗ってあげるよー」
「マジで」
「むしろもうここまで来たら逃がさないぞー」
「うぎゃー」
なお内心ガチで絶叫している。
何がとは言わないが色々当たっているので。
むしろ表面平常心でいるところを褒めてほしい。
これでも中身はまだ男子である。
「ぐむぅ…風呂に入ってぐっと疲れるとは思わなんだ」
「なんか言った優美ちゃん」
「いや別に」
「それじゃあ私の体お願いしまーす」
「嘘だろ」
「やってあげたからお返しと言うことで」
「…鼻血出さんようにせねばな」
「ん?のぼせた?」
「いいや。別に。いいのか。やるぞ」
「お願いしまーす」
もうその後は腹をくくってもう楽しんだ。
割り切れば勝ちである。
ただ千夏に従えばよかったなと今さら後悔する優美であった。
予想以上に恥ずかしすぎた。




