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神社合戦

「今日も降っとるな」


「また積もるのかなあ」


「境内掃除が捗るな。嬉しくねえ」


また雪である。

まあ季節的には別におかしくはない。


「まあ階段はもう大丈夫だろ」


「凍結防止剤撒いといたもんね」


「もうあれで凍ってたら知らんよ」


階段には凍結防止剤を撒いてある。

凍った階段を通るのはこりごりである。

二人とも。


「まあ今日は休日だから外に出るようなことないと思うけどね」


「休日=外に出ないの発想をなんとかしようよ」


「やだっ!コタツの中にいる!」


「このこたつむりめ…」


お茶をすする優美。


「しかしこの前はほんと遊ぶ暇なかったなあ」


「凍結騒動でそれどころじゃなかったしな」


「そういえば階段ってどう?」


「少なくとも撒く前よりもマシ」


「もう滑らなくて済むね」


「普通にあぶねえという」


外から子供の声がする。

すっかり子供のたまり場であった。


「外にでも行ってこようかな」


「また子供と遊ぶんか」


「そです。楽しいし」


「まあとりあえずあったかい格好してけよ。この部屋ものっそいあったかいから温度差で死ぬぞ」


「分かってます」


リビングにはコタツ+ストーブであるので物凄く暖かい。

正直廊下に出るだけであまりの寒さに死にそうになる。


「…雪か」


「ん?」


「俺も出ようかな」


「え?出るの?」


「なにその反応。おかしいか」


「こたつむりなのに」


「俺だって出たくなる日もある」


「だから雪が降るんだね」


「どういうことだよ」


「珍しいから」


「いやまあ変な行動するとおかしな天気になるとは言う気がするけどさ」


そのまま境内の方に向かう二人。

案の定というか子供達がいた。


「あ、ちー姉!」


ちー姉とは千夏のことである。

気がついたらついてたあだ名である。

気がつけば子供達が寄ってきていた。


「大人気だな」


「まあいっつも遊んでるしね」


「あれ?優美ちゃんもいる!」


「なんで私はちゃん付けなんですかね。おかしいっしょ」


「あ、ごめん。いっつも私が優美ちゃんって呼んでるからだと思う」


「原因お前かよ」


いつも千夏が優美ちゃんと呼ぶので

一部低学年の子供に呼び方がうつった。


「何してたの?」


「雪合戦だよ」


「む、ここでやってるのか」


「そうだよ」


「ここはダメだ。下手すると参拝客にクリーンヒットする」


「今日は参拝客来ないと思うけどね」


「一応だ。はい全員こっちきてー」


優美が全員を誘導して裏手にやってくる。


「ほいじゃあまあここから出ないように好きに遊んでいいよ」


「いう前から始まってるけどね」


「お手が早い」


裏手の方はしばらく来ていなかったので雪が豊富であった。

子供が見逃さないはずがない。

さっそく雪合戦再開であった。


「いいよねえこういう光景」


「せやな。んじゃま俺はそこの縁側いるからよ」


「一緒に遊ばないの?」


「素手で雪を触りたくはないわ」


「手袋あるよ?」


「用意良すぎだろ。まあ俺は見てる役」


「なんだあ」


そして子供の集団に混ざって雪合戦し始める千夏。

優美は近くの縁側に座ってそれを眺めている。


「とりゃっ!」


「わっぷ」


当てて当てられての大乱闘である。

当たったら負けとかは特にないので永遠と続いている。

千夏もだいぶ雪まみれである。


「うおらっ!」


「ごふっ!?」


「あ」


そんな中、上級生に投げた雪玉が優美にクリーンヒットした。


「お前らなぁ…」


「いや、手が滑って」


「ぜってえ許さんぞぉ!じわりじわりとなぶり殺しにしてくれるわっ!」


ばっと縁側から飛び出す優美。

すでにその手には手袋がはめられて臨戦態勢である。


「う、うわあ!優美姉が怒ったっ!」


「待たんかぁ!100倍返しは覚悟せいやぁ!」


なお別に本当に怒ってるわけではない。

お遊びの一環である。


「くらえやっ!」


「うおっ!?」


優美の手から放たれた雪玉は、優美の身体的にはかなりの速度で上級生の少年を貫いた。


「ふんっ。造作もない」


そう言って仁王立ちする優美。

優美もなんだかんだいいつつ一回乗ると止まらない。


「うおらっ!」


「甘いわ!」


周りにいた数人が雪玉を投げ出すが優美に当たらない。

避けまくっている。


「む…意外と運動神経いいなこの体」


優美は元々はとてつもなく運動音痴である。

短距離走は下から数えた方が早く、

長距離走は周回遅れ当たり前。

投げるボールはやんわりで、

乱戦系のスポーツは手も足もでない。

ぶっちゃけそこらの女子以下であった。

正直今の優美としての方が運動神経はよくなっていたりする。


「ふーっはっはっは!どうした貴様らぁ!その程度かぁ!」


次から次へと飛来する雪玉を避けながら雪玉を投げまくる優美。

外に出ること自体がおっくうなだけで別にこういうことは嫌いと言うわけではないのである。

気が付けば5、6人の人だかりができていた。

中央には優美。


「くらえっ!優美姉!」


「そうだ、そうだっ!そうこなくっちゃなぁ!」


なんか変なスイッチが入っているようだがこれも熱が冷めるまでは収まらないであろう。


「優美ちゃんノリノリだね」


「うん。優美ちゃんあんなに動き回ってるの初めて見た」


千夏らと低学年組、ところどころ中学年以上な感じの集まりである。

こっちは雪合戦はやめて雪だるま作りにいそしんでいた。

なぜか少年漫画よろしくなテンションになっている優美とはえらい違いである。


「できたー」


「わー」


雪が結構あったのでそれなりの大きさの物ができた。

まあまだ雪玉二つのせただけなのだが。


「じゃあ顔とかつけてこー」


「おー」


その後結局日が暮れるまで遊び続けた二人であった。


「…あー、べったべただわ」


「そりゃあんだけ雪合戦やればそうもなるよ」


「悪い、洗濯頼むわ」


「うん、置いといて」


結局すべてが終わったころには優美はべたべたであった。

何回も雪玉ぶつけられてたのを放置したので当然ではあるのだが。

なので今はジャージである。


「というか優美ちゃんはしゃいでたね」


「はしゃぎましたよ。そりゃあ」


「見てるだけって言ってたのに」


「もうやられたからにはやりかえさにゃならんだろう」


「それは無いよ」


「まあ普通に参戦したくなっただけだがな」


「優美ちゃんがあんなに外で遊んでるの初めて見た」


「普段でないしな。出てても見てるだけだし」


「そしてなぜか魔王みたいになる」


「あれが性に合うんです」


「袋叩きされてたけどね」


「あれはあれで楽しいものですよ」


とりあえず今はいつものようにコタツにいる二人。


「そういや気づいたら横の方に雪だるまが大量生産されてたけど」


「あ、うん。なんかね調子乗って作ってたら気づいたらいっぱいできてた」


「多すぎだろう」


それなりの大きさのが5個くらいあった。


「…いや、楽しかったぜ」


「ものすごく楽しそうだった」


「楽しかったしょ?」


「うん。私はいつもだしね」


「やっぱり子供好きですね」


「純粋」


「濁りを知らぬ」


「腐った世の中に汚染されてないからね」


「ねー。俺らはすでに荒んでいる」


「まあなんかここに来て浄化されたけど」


「まあ世の中の歯車からは若干外れたよね」


「今が楽しいからそれでいいのです」


「だな」


なお制作した雪だるまは数日残り続けた。

最終日にはほぼ溶けかかっていて何がなんだか分からなくなっていたが。


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