表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/206

夜行性

「ただいまー」


返事がない。


「ん、あれ?」


いつもならだるそうな返事がリビング方向から聞こえてくるものだが、今日はさっぱりである。


「ん?」


リビングのふすまを開けてみたが中はもぬけの殻である。

こたつむりがいないのである。


「あれ…」


部屋の方に向かってみる。

これで居なけりゃ結構一大事である。

隠れる場所はあれど優美に限ってそうそう倉庫等に籠っていることはない。

トイレはあるが。


「あ」


優美の部屋を開けてみればはたしてそこにいた。

寝巻きのまま、まだ寝ながら。


「…すぅ…すぅ」


「あれ、まだ寝てる」


完全に寝入っていた。

流石に寝るときまではポニテにしてないので、髪はくしゃくしゃになったまま布団の上に放り出されている。

寝相が悪いせいで若干寝巻きがはだけてアレなことになっている。


「優美ちゃん?」


「すぅ…すぅ…」


「おーい。もう夕方ですよー」


「すぅ…む…ぐ」


ゆっくりと目を開ける優美。


「ふ…あぁ。おはよう」


「おはようの時間じゃないけどね」


「…何時」


「4時」


「…そうか」


寝起きで顔が死んでいる。

普段から覇気のある顔とは言い難い顔の優美だが、さっそく無気力の極みであった。


「…二度寝は駄目だな」


「二度寝したんですか」


「ああ。眠くてちょっとだけと思い」


「ぐっすりと」


「そゆこと」


「着替えてもいないもんね」


「髪縛ってもいねえしな。朝飯食ってから眠気が猛烈に来たわ」


「遅くまで起きてるせいだと思われ」


「やりたいことあったんやもん」


寝たのは5時である。

睡眠時間は実質1時間程度である。

眠くもなるはずだ。


「んぐー。ふはぁ」


思いっきり伸びする優美。

身体中がちがちになっているので。


「起きますかねえ」


「一回も起きなかったんですか」


「快眠じゃった」


ひょこり起き上がる優美。


「あのさ」


「うむ」


「はだけてるよ?」


「む…」


そこを手で直す優美。


「まさか剥いたわけではあるまいな?」


「そんなことしないって」


「分かっとる。冗談冗談」


そのまま着替えようとする優美。


「…うにゃ、髪邪魔だ。縛るか」


ぱっぱと手で纏めてゴムで縛りあげる。

毎日やっていたので流石に慣れた。

千夏が優美の髪弄りできなくなって少々寂しそうではあるが。


「…」


「…」


「…いやあの出ようよ」


「ん?」


「いや、んじゃなくて、なんで思いっきり見てるのさ」


「着替えるんでしょ」


「だから言ってるんです。なんかこの会話前もした気がするぞ」


そのまま千夏を外に押し出す優美。


「なんでー。いいじゃん少しくらい」


「よくない。そんなガン見されて恥ずかしくないはずねえだろ」


「先っちょだけ」


「先っちょで済まなくなるだろうが」


そのまま部屋の戸をぴったり閉じて着替える優美。

別に覗かれても千夏なら嫌ではないが恥ずかしい。


「終わり」


「目の前の扉の先で美少女が着替えてるのに見えないっていうね」


「自分の見とけよ」


「他人のを見るところに意義があるんじゃないですか」


「そこには同意するけどね。だが見せぬ」


「そんなー」


「とりあえず暇ならなんでもいいから掃除手伝って」


「分かった」


「どうせなら巫女服で」


「そういえば最後着たのいつだっけ」


「おかしい。巫女なのに一応職は」


数週間は巫女服の千夏は見ていない。

ブレザーでいるか部屋着かが大半である。

そうしてその日の夜である。


「む、もうこんな時間ではないか」


「あれ、いつの間に」


時計の針4時を指している。

当然AM4時である。

深夜である。

平日なのに。


「いかんな、喋ってると時間の感覚が無くなる」


「ほんとだね」


「しかも起きたのが遅いせいで全く眠くないときたもんだ」


「まだ起きてから12時間しかたってないもんね」


「だが寝なければ。明日がヤヴァイ」


「そだね。寝よか」


「ああ」


リビングの電気をやっと落として自分の部屋に帰る二人。

遅すぎである。


「むぐう、明日起きれるだろうか」


そんなことを考えながら目を閉じると、意外と睡魔が襲ってきて寝てしまう優美であった。

普通に起きていた千夏は当然即刻寝ていた。


「…ぐ、むぅ」


次の日である。

優美が目を覚ました。


「…朝か…?にしちゃ日差しが強い気が…」


優美の部屋は西にある。

なので、朝はあんまり日差しが入らないのである。

今日は朝にしては日差しが入りすぎである。


「…っ!まさか…」


優美の頭が急速に回転し始める。

がばっと起き上がり枕元に置いてあった携帯を開ける。

10:23の文字が目に飛び込んできた。


「…やっべっ!おいぃ!千夏ぅ!起きろおお!」


ものすごい勢いで叫びつつ部屋を飛び出す優美。

向かう先は当然千夏の部屋である。


「千夏っ!起きろ!遅刻じゃ遅刻!」


「ふぇ?」


声に反応して千夏が目を覚ます。

まだなんかトロリとしているあたりまだ目覚めきったわけではないらしい。


「…?」


「今10時過ぎだって!遅刻!」


「え」


近くに置いてあった目覚ましを確認する千夏。

何度見ても10時過ぎであるのだが。

学校に着くべき時間は8時半。

圧倒的に遅刻であった。


「うにゃあ!」


「と、とりあえずさっさと着替えて準備しろっ!大遅刻だ」


そのまま部屋を飛び出し自分の部屋に戻らずに一気に台所の方へと向かう優美。

とりあえず寝巻きなのはお構いなしである。


「えーっと、あ、これでいいね」


冷蔵庫を開けると即刻何かを引っ掴み千夏の部屋の方へ戻る優美。

千夏の部屋に戻ると着替え終わった千夏がいた。


「終わったよ」


「ん、朝飯準備してたらもっと遅くなるからこれ食ってけ」


千夏に向かって放り投げたのは菓子パンであった。

一応腹の足しにはなるだろう。


「優美ちゃんは?」


「俺は気にするな。最悪朝昼抜いたくらいじゃ死にはせん。というかコンビニでもなんでも使うさ。さ、早く早く。四時間目が始まる前には学校にたどりつけよ」


そのまま千夏を急き立てる優美。

千夏の方も全力疾走である。

そのままあっという間に千夏の姿が小さくなってやがて遠くに消えた。


「…がふ、朝から大忙しだぜ」


基本的に二人とも朝は早い。

千夏は6時半くらいには食事の準備等々があるので目覚めているし、

優美は朝一の掃除があるのでそれより早い6時には目覚めているのだ。

なので二人とも寝坊するということはまずない。

片方がしてても起こすので。


「…二人同時に寝坊とは。笑えねえ」


さすがに同時に寝坊してはどうしようもなかった。


「…2時までには寝よ。平日は」


ぶつぶつ言いながら部屋の方へと戻る優美。

こんなことがあっても日が変わる前に寝るという発想に至らないのはさすが優美と言ったところか。

それくらい根っからの夜行性の優美であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ガラケーもスマホもアラーム設定は10個出来ます。 アラームアプリで喋らせる事も。 遅刻対策は万全に。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ