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コタツの上に鎮座する物

「ただいまー」


「む…お帰り」


「ん、あ、ごめん。寝てた?」


「いんや気づいたら寝てただけだし別にだいじょぶ。むしろ起こしてくれて感謝」


安定のこたつむりをしている優美が起き上がる。

先日テレビが入ってきたためにさらに引きこもりが加速している状態である。


「む、なんぞその袋」


「ちょっとね。もらい物なのですよ」


「どっからよ」


「学校で友達から」


「ほう。それで中身は」


「みかんです」


「おおみかん」


「買いすぎたんだって」


「んで配ってたのか」


「そういうことです」


二人ともみかんは好きである。

千夏はフルーツ系統をあまりうけつけなかったりするので

意外と二人とも食べられる果物は珍しかったり。

なお優美は体質的にブルーベリーが駄目である。

こっちは嫌いと言うか食べると高確率で吐くので食べれないのである。


「コタツにみかん。最強だよね」


「よくある冬のリビングの光景だよね」


「こたつむりがさらに加速しますな」


「お仕事はしてよ」


「一応してからこたつむりしてる」


「他の事もやろうよ」


「最近自分の部屋にもあんまり帰らなくなりつつある」


「こたつむりどころか、動いてないのですか」


「部屋の方寒くてしゃあないんですよね。あの障子の隙間から隙間風がたまに入ってくるんだけどこれが超寒い」


若干立てつけが悪いのかところどころ隙間がある。


「とりあえずみかんはここに置いとくね」


「むう、とりあえず籠っぽいのに出しときますかね」


千夏が制服より着替えて戻ってくるとコタツの上の籠にみかんが鎮座していた。

優美の位置は一切変わっていない。

これだけ見るとみかんが勝手に移動したように見えるが実際は優美がやったはずである。

優美が定位置に戻っているだけで。


「ん、みかん出しといたぞ」


「うん」


「とりあえず一個食べてみるですかね」


「そーだね」


そう言ってコタツの中から手を出してみかんを手に取る優美。

さっきまで手までほとんど全部コタツの中にいたのである。


「だいぶ大きいなこれ」


「うん。でかすぎて食いきれない的な事を言ってた。私にこれくれた子」


「だろうな。当社比1.5倍くらい?」


「さすがにそこまで大きくはないでしょ。大きいけど」


「じゃあ1.2倍くらいということで」


「別にそこはどっちでもいいです」


そう言いつつコタツの上でみかんを手でころころする優美。


「何してるの?」


「ん?なんかみかんってほどよく刺激を与えると甘くなるらしいので。実践中」


「そうなの?」


「なんか酸味が分解されるてきなことがどっかに書いてあった気がする」


「へえ」


「ちなみに自転車の籠にぶち込んで町内一周するくらいがちょうどいいらしいな」


「じゃあその程度じゃ何も変わらないんじゃ」


「いいんだよ。気分だ。気分」


そのままみかんを剥きにかかる優美。


「む…手が小さいせいか爪がねえせいか剥けん」


「え、そう?」


「早いなお前」


既に千夏は剥き終わっている。


「むぐぐ…あ、よし剥けた」


「なんかそうやって頑張ってる小っちゃい子可愛いよね」


「もうなんかお前に可愛いと言われることが普通になってる俺がいるぞ」


「可愛いじゃん」


「認める」


「認めるんだ」


「前の俺が今の俺を見たら間違いなくがん見しますね」


「好みなんですか」


「大好物」


「しかし己だ」


「そこが問題だ」


そうこうしているうちに全部剥き終わって中身が露出する。


「白いとこも取ろうかな」


「取るの?」


「時間はありますし。まあ全部取る気はないけど」


みかんの筋的な白い部分をちょこちょこ取っていく優美。

つられて千夏も取っている。


「…」


「…」


「…む、そんなに取る気も無かったのに結構取ってるし」


「あ、ほんとだ」


剥いたみかんの皮の上に置いていた白い筋が結構山のようになっている。

みかんの中身部分は白い部分が減ってすごくきれいになっていた。


「なんかついやっちゃうシリーズだなこれ」


「時間あるときとかよくやったね」


「まあとりあえず食ってみるべか」


「そだね」


とりあえず適当に口に放り込む二人。

当然一部であるが。


「…あ、甘いわこれ」


「うん、確かに」


「おいしいっす」


「ちょうどいい感じなのです」


そっからはあっという間であった。

特に優美などさっそく一個目を完食して二個目に取り掛かっている。


「うんうん。おいしいでござる」


「早いよ食べるの」


「うまいものを放置するのは我が主義に反する」


そのまま二個目を剥いていく優美。


「そういやみかんって変な剥き方とかあるんよね」


「あるらしいね」


「やってみようかな」


「やるの?」


「せっかくあるし。ちょっとやってみたい」


「知ってるの?」


「知らんよ。調べてくる」


そういって数時間ぶりに部屋から出て自分の部屋でパソコンをつれてくる優美。


「ふんふん、こんな剥き方があるのね」


「腕時計みかんは知ってるけど」


「わりとわけわかんない剥き方ばっか乗ってる。いもむし剥きなんだし」


「何それキモイ」


「しかも以外と簡単にできるときた。ちょっとやってみるか」


「やるんだ」


「ちょっと面白そうなので」


とりあえずいもむし剥きをやってみる優美。


「えー上と下を外して切れ込みいれてビローンっとできたできた」


「うわ。けっこう本当にいもむしっぽい」


「意外と気色悪いなこれ」


「でも食べやすそうではある」


「取り外すの楽ちんだよなこれ」


実際その後食べてみたが結構食べやすかった。

調子にのった優美がまだまだ続ける。


「んじゃ次フラワー剥きで」


「またなんかすごそうな名前の物体が」


「見た目がきれいなんだってさ」


「ふうん」


「えー上部三分の一くらいを残してーひっくり返して―っと」


ぶわっと広がるみかん。

普通に食ってる限りではなかなか見ない光景である。


「うお。広がった」


「へーこんなんなるんだ」


「おもしれえ」


「食べれますか?」


「無問題」


そのまま三個目も腹の中に収納する優美。

小さいくせに相も変わらず大食らいである。


「夕飯ちゃんと食べてよ」


「それは問題ないから気にするな。さすがにもうやめとくけども」


千夏も二個食べている。

合計して五個も食べてしまった。

そんだけおいしかったらしい。


「こりゃもう明日には無くなるな」


「あっという間になくなりますね」


「今度買ってこようか」


「そだね」


「コタツにみかんが無いのはさみしい。なんか」


「なんか置いてあるものだよね」


「そして気づくと手が伸びている魔性の物体」


「置いてあるとなんか食べちゃうよね」


「しかも剥き方やら白い部分とったりやらで暇つぶしまでできるとかいうとんでもない物体」


「みかんだけで時間つぶせるっていうね」


「食っておいしいしな。万能ですね」


その後も手が暇になるとみかんを転がしたりしていた優美。

相も変わらず動く気配がない。

こたつの中に入ったまんまぐでーっとしている。

別に風邪をひいているわけではない。

これがデフォルトである。


「…うむ、こたつにもぐってパソコンもいいものじゃな」


「それがここにあったら優美ちゃん本当に動かなくなりそうだね」


「もうここから動かなくても生活できるようにその他の物もここに持ってこようかな」


「不動の優美」


「あ、でも夜ここで寝るの怖いからやめた」


「怖いんですか」


「怖い。ここ神社入り口方向に面してるからなんか嫌だ」


「それそんなに気になります?」


「お前からもちょっと遠いし。途中に空き部屋とかいろいろあるし嫌です」


「本当に怖がりだね」


「ほっとけ。美少女なら許される」


「前からそうだった気がするけど」


なお結局みかんはその日の夜のうちには完全に消滅。

次の日に優美がコンビニまでダッシュして買ってくることとなった。

結局冬の間はみかんが切れることがなかったとかなんとか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] コンビニみかんを買うより、日常食材を週一で大量買いしてヒーヒー言う優美ちゃん・・はしてないかぁ。
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