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勉学に励まない

「むう…」


「うーん…」


リビングにて首をひねる二人。


「うがあ!あーもう読めん!」


「それ?」


「これだ。そも俺は古典がダメなのに字の形状が把握できんとか無理ゲーだっつーの!」


「字が流れてるもんねーそれ」


「はあ、学校行かなくなってからこんなことすることになるとはな」


今優美が唸りまくっているのは倉庫から引っ張り出してきた古い書物軍団である。

ここ数週間から一ヶ月読み取ろうと格闘しているわけだ。


「畜生。学校で習った知識じゃ読めねえっつーの」


「でも文法とか覚えてないんでしょ?」


「俺の古典読み取りスタイルはフィーリングだ。文法なんざ知るけえ」


「その時点で学校の学習方法からずれてると思うよ」


優美は別に国語が出来ないわけではない。

ただ覚えることが嫌いなので文法とかが大嫌いなのである。

のくせしてゲームの雑魚敵の名前は全員覚えていたりする。


「もうほんと不親切なこと。こんなところ連れてくるなら説明くらいしっかりして欲しいもんだな」


「そう?」


「重要だろ。しかしここが何なのかが分かるものがこれくらいしかないんだよねえ」


「頑張れニート」


「ニートちゃうし。一応仕事してるし」


なおこの手のことは優美に任せっきりである。

時間を持て余しているのは優美なので仕方ないと言えば仕方ないのだが。


「むう…まあ少しは読めたんだけどな。全然かかった時間と読めた量が比例してないぜ」


「何かわかったの?」


「一応な?」


「なんだった?」


「ここの御神体はお狐様らしいね」


「九尾ですか?」


「そこまでは知らん。だけど狐様なのは確定っぽいね」


「尻尾もふもふ」


「願ったら叶うやもな」


完全に何もわからない状態に比べれば、目覚ましい進歩である。


「俺のお祓いとか一応効力発揮してるっぽいけど、お狐様が力を貸してくれてたのかもな」


「会ったらお礼しないとね」


「油揚げでいいだろうか。今度買ってこようか」


ふーと息を吐く優美。

休憩であった。


「なんか今なら狐様が目の前降臨しても受け入れる自信がある」


「私も」


軽い超常現象くらいならもはや驚かないことうけおいである。

いや仮にも御神体が降臨することが軽いかはともかく。


「しかし狐ですか」


「そうだよ。もふもふ」


「しっぽもふもふ」


「ふもふも」


「柔らかいんですかね」


「柔らかいんじゃないでしょうか」


「ふもっふ」


「それちげえ」


「でも触ってみたいよね」


「もしも九尾ならなおさら。天上のさわり心地らしいし」


「何処情報ですか」


「さあ?どっかで読んだ気がする」


一旦机の上の書物たちを積み重ねる優美。

なお優美の部屋の机の上はこの状態のまま放置されている本類が大量にある。

散らかしてるわけではないのだが汚い。


「うう…」


「でえ、お前はさっきから何をうなっとんじゃい」


「分からないから」


「何があよ。つか何してるのよ」


「学校。宿題、お分かり?」


「ああ、納得。そうだよね。宿題あるよね。当然」


美少女だろうがなんだろうが宿題は出る。

当然である。


「いいよね優美ちゃん宿題無くて」


「俺を恨むな。学校に行きたいと言った己を恨め」


「こんなにでるとは聞いてない」


「何の教科?」


「数学。明日までに問題集の大問20個分終わらせてこいってさ」


「うわあ20は結構辛い」


この手の問題集の大問20個というのは結構量的には多かったりするので侮れない。

一日でやろうとするとなかなか骨である。


「今何問目よ」


「大問5」


「おいおい」


「数学は苦手なのです」


「いやまあ知ってるけどさ。そこ一回やってるだろ。仮にもここに来る前って高校三年生前だったわけですし」


「私の一年の時の数学は教師のせいで棒に振ったに等しいのです!というか数学嫌いになったしむしろマイナス」


「うむ。ひどい」


「さすがにあれは無いですわ」


「むう、あれなら教えるけど」


「教えてくだちい」


「りょ。見せて」


内容を見てみれば三角比である。

サイン、コサイン、タンジェントである。

高校生が大嫌いな単元その1である。


「ふむ、久々に見た。数学だわー」


「数学なんです」


「嫌いな古典以外に最近触れてなかったからいい感じの息抜きになるのだわ」


「なるんだ」


「超難易度問題は息抜きにならないけど」


「むしろそれやって息抜きになってたら怖い」


「でもこれくらいなら息抜きなのだわ」


「じゃあ教えてくだちい」


「はいよ」


優美は数学は得意である。

少なくとも好きではある。

ここに来てからもそれは変わっていない。

やっていないだけで。


「ここはこうするですよ」


「ふむふむ」


「んでこうやってこうやってこうやってドーン終わり―ヒャッホー!」


「え、え、なにしたの今」


「公式を使うですよ」


「ど、どれ?」


「面積求めるやつ」


「あ、あれ」


「そうそう。それ」


「理解」


「じゃあ次に進むです」


「はい」


「というか案外覚えてるもんね。さっぱりやってなかったけど」


「一回身に沁みつけば忘れないもんじゃないんですか」


「そういうもんかね。やっぱり。ところどころは忘れてるけどさ」


優美はもしここに来ることが無ければ教師になる予定であったので、人に教えることは好きである。

何度か前の高校で模擬授業をさせられた時も率先して前に立った人である。

なお大学の授業みたいだと見ていた友達からその時言われた。

まあその段階では誰も大学に行ってないので実際の所は不明ではあるが。


「ふむ、応用問題か。よし死のう」


「待って。死なないで」


「応用は嫌いなのです!だれだあんなにいっぱい組み合わせたアホは」


「でもこっからそういう問題ばっかです」


「ぐふう、マジ勘弁」


計算は好きだが、応用問題は嫌いであった。

昔からである。

文章題考えたやつは死ねな人であった。


「むう、とりあえず大問の中に小問が無いのだけが救いだな。これで(1)とか(2)とかに分かれてたらやる気完全になくすわ」


「でも一問に時間かかるのです」


「だから嫌いなんだよな」


とりあえず解き始める二人。

今度は優美もすいすいとはいかない。

千夏はもっとであるが。


「うにゃあああ、、めんどい!めんどくさいぞ!」


「そうなの?」


「これめんどくさいだけだよ!計算がめんどいだけだよ!あーもうこの手の問題一番嫌いだよっ!」


時間をかけさせるためだけの問題は嫌いである。

特に数字がでかいだけのやつは。


「…よし、電卓を使うぞ」


「え、いいの」


「こんなめんどくさい物を真面目にやる方がアホなのです。計算力何ざ小問集合でもやってた方がつくのです。というわけで電卓だ」


「でもこの家電卓無いよ?」


「ねえのかよ」


「うん、無かったと思う」


「マジかよ。さすがに今度買ってこよう」


「うん」


「じゃあPC連れてくる―」


PCをもってくる優美。

めんどうなだけな計算はPCに計算させてろよという考えが優美である。

好きな計算は楽に解ける基礎問題である。

まあ応用もなんだかんだ言いつつも解けないわけではないのだが。


「うむ、なんだこの数字は。この問題集作った会社馬鹿なの?馬鹿なの?」


「馬鹿なんじゃないかな」


「ならしかたないな。よし次」


そんなこんなで結局一時間は格闘しただろうか。


「満身創痍。疲労困憊」


「お疲れ様」


「むう、なかなか手ごわかった」


「でも一時間でおわるんだ」


「そりゃ分からん問題なんざ考えてもどうせ分からないだろうから即刻答え見るからな。早くもなるさ」


その証拠に優美の隣には答えがスタンバっている。


「でも助かった」


「覚えてる範囲なら教えるのでいつでも言うがいいのですよ」


「分かった。聞きに行く」


「…むう、いかんな。ひさびさにやらにゃ忘れとるだろうし。自分で問題集でも買おうか」


「なんなら私の進めてくれてもいいのよ」


「お前の練習にならんから駄目」


「うえー」


「当たり前だろ」


手助けはしても代わりにやるのは認めないのが優美のスタイルである。


「…というか本当に勉強から解放されたな。ここに来てから」


「世の歯車から抜け落ちた気がする」


「それね。社会の歯車から外れた気がするんよね」


「少なくともここにいれば安泰だもんね」


「あるいみ理想の生活だなこれ」


「若干暇だけど」


「むしろ暇があることがうれしい」


「前の生活だと無かったもんね」


「全然でしたな」


「今は有り余るくらいあるもんね。特に優美ちゃん」


「ああ、暇すぎて悟りを開きそうなレベル」


「それは暇すぎるでしょ」


「でも昼間やることって、掃除と札とPC、あとはせいぜい同人誌読んでるかってもんだしなあ」


「何か暇が潰せる物がいるのかな」


「そうだな。なんか欲しいとこだな」


「テレビ買うのです」


「…そういや無かったな」


あんまり昔からテレビに依存していなかったせいで、

無いことを忘れていた二人であった。


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