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はっろうぃーん

「むう、10月も終わりか。早いもんだ」


木々の葉も落ちまくってそろそろハゲになるまで時間の問題といったところである。

本気で寒くなってきたのでストーブ買いたいなと思う今日この頃である。


「優美ちゃん」


「ん、どないした」


千夏である。なんだか上機嫌である。


「今日何の日でしょうか」


「うん?…ああせやな。はっろうぃーんですな」


そう10月最終日ハロウィンであった。


「というわけでトリックオアトリート!」


「同居人にもやるのかよ」


「お菓子くれないとイタズラするぞー」


「持ち合わせがねえな。さあイタズラするがいい」


「なんでそんなに乗り気なんですか」


「ん?別に相手お前だからいい感じ?」


「イタズラいいの?」


「なんでもござれじゃ」


「ふふーじゃあイタズラの時間だね」


「え、アテがあるのか」


「ないと思った?残念あるんだなこれが。というわけでこっち来てください」


「う、うわー。や、辞めるのじゃ。離せー(棒)」


そのまま千夏の部屋に連行される優美。


「そして何故にここ」


「イタズラ道具がここにあるのです」


「ま、まさか初めから体狙いだったのか!こんの鬼畜めえ!」


「違う!違うからね!私そんな鬼畜じゃないよ!」


「知ってら。そんなことできる勇気無いもんな」


「酷くない?」


これくらいはいつものことである。

そうして千夏が部屋の奥から何かを引っ張り出してきた。


「なんやそれ」


「え?ハロウィンといったらやっぱこれでしょ」


「仮装だよなそれ」


「そうそう。いろいろあるから仮装には困らないよ」


「さいですか」


「じゃあイタズラするです」


「いや、待て。これではイタズラというか罰ゲームだろう」


「大丈夫大丈夫。私が無理矢理着せるからイタズラにもなるよ」


「いやそういう話ではなくてだな」


「こうでもしないと着てくれなさそうだし」


「…まあそりゃ着ようとは思わんけど」


「というわけで覚悟するのです」


「はいはい着ますよ着やいいんでしょ」


「駄目。私が着せるとこに意義があるの」


「どんな意義だし」


「美少女を私が剥いていくことに意義がある」


「いやああ!変態よー!」


「ふっへっへ。さあその身を明け渡すのです」


「結局こういうのが目当てかよ」


「優美ちゃんぐらいにしかできないし」


「むしろ外でやってたら引くよ。ドン引きだよ。というか犯罪だよ」


「というわけで」


「くっ、好きにするがいい」


その後千夏の手により着替えさせられた優美。

イタズラなのかは甚だ疑問である。


「むう、何かと思うたが」


「定番だよね」


「悪魔っ子かえ?」


「そうそう。あ、ツノあるよ」


「どうせだし貸して」


「あい」


適当に頭にも小物のツノっぽいものを装着する優美。

正しく悪魔っ子の完成である。


「おーあー?以外といける?」


「うんうん似合ってる似合ってる」


「仮装か。初めてだなやるの」


「前は?」


「したことねえ。俺がこの手のイベントに参加しないの知ってるだろ」


優美のイベント参加率はすこぶる低い。

理由は参加がめんどくさいからである。


「まあたまにはこういうのもいいね」


「ちなみに私はこちら」


「あるんかい」


「当然です」


引っ張り出してきたのは魔女の格好っぽかった。


「魔女すか」


「定番だけどね」


「さしずめ俺は使い魔か」


「だいたいのコンセプトはそんな感じ」


「妾と契約できるとは幸運な奴。貴様には絶対的な変態の力と性欲を与えようぞ」


「いらない。それはすごくいらない」


「まあまあ遠慮なさらず。変態にした後に搾り取るから」


「サキュバスじゃないですか」


「妾と契約したことを恨むが良い。ふはは」


「最悪だこの悪魔」


「悪魔ですしおすし」


千夏の部屋でテンションハイである。

ここなら多少騒いでも声が漏れる心配もないので。


「しかし、これ着せてどうするべよ?」


「え?出かけるよ?」


「うえぇ?マジぃ?」


「マジだお」


「大丈夫かよこれ」


「大丈夫大丈夫。ハロウィンで仮装してても普通だよ」


「そういうもんなのか…?いやそういうもんだけど」


そういう格好で外行くのには流石に抵抗のある優美。


「しかしまあよくもこんな格好で外行こうなんて思ったな?」


「優美ちゃんと一緒なら大丈夫。一人だと流石にちょっと無理」


流石に住宅街でその格好だと目立つので上から別なものを羽織って隠している。


「そういやどこ行くのさ」


「佳苗ちゃんの家」


「川口の?何故に」


「ハロウィンパーティーだよ」


「うおい。そういうこと先に言ってくれ」


「というか普通に遊ぶ約束した時がたまたまハロウィンだったという」


「俺も行っていいんでしょうか?」


「どうせやるなら大人数でって言ってたからいいと思うよ。連れてくからーって言っといたし」


「ほいですか」


そのまま住宅街を歩いていく二人。


「そういや川口の家どこにあるのさ」


「神社よりもうちょっと先」


「そのもうちょっとってどれくらいよ」


「さあ?十分くらい?」


「適当だな」


「あんまりこっち側来ないからね」


体感時間的には15分くらいだろうか。

大通りを越えた先である。


「確かこのあたりらしいけど」


「住宅街が続くのう」


「アパートらしいんだけどね」


「おや、アパートですか」


幸い周辺にアパートは数えるほどしかなかったのでわりとすぐに見つかった。


「ここでっしゃろか」


「たぶんね」


「表札は川口になってるけど」


「じゃあここじゃないですか?」


「そうじゃないの」


「そうだと思う」


しかし不動の二人。


「…いや、早くインターホン押そうぜ?」


「え、優美ちゃん押してよ」


「なんで俺やねん。お前の友達だろうがよ」


「違ったらいやだし」


「俺もやだよ」


といいつつ時間が惜しいのでさっさとインターホンを押す優美。


「あーすいません。千夏と連れです」


「あ、今開けるね!」


ガチャリと扉が開けばそろそろ見慣れてきた顔である川口佳苗がそこにいた。

白い布きれのようなものをかぶっている。

幽霊の仮装、ということだろうか。


「ようこそ我が家へ!さーさーとりあえず入って入って」


「お邪魔しまーす」


「お邪魔―」


奥に入ればこれまた見知った顔が一人。


「む、またあったな」


「おっす」


今を生きる千夏love勢筆頭の斉藤茂光である。


「お前もお呼ばれか」


「ああ」


「よくもまあ女まみれのとこに来るなお前」


「千夏さんが来ると聞いたので」


「以外と積極的やね君」


一連の会話は小声である。

千夏に聞こえないように。


「というかお前なんだその格好」


「…仮装してこいって言われたけどこれくらいしか用意できなかったんだよ!悪いか!」


カボチャ仮面であった。

体の大きさと合っていないため半端なくアンバランスである。


「むう、というか川口ー。俺まで来てよかったんか?」


「いいのいいの。三人よりも四人の方がいいし。あ、今日は夜になるまで家族は帰ってこないから騒いでオッケーだからね」


「お、そりゃいい」


こういう場で中途半端に自制をかけるのは優美には不可能に近い。

見知った仲の人間同士だと知らず知らずに騒いでるのが優美であるので。


「というか二人とも上着脱いだら?」


「あ、そうだったね。優美ちゃん。脱ご」


「せやね」


ぱっと上着を取れば出てくるのは仮装衣装である。


「お、さすが二人ともレベル高い」


「えへへ。そうかな。似合ってればいいけど」


「ぐむむ…むう、なんか千夏以外に見られてると思ったらすげえ恥ずかしくなってきたっ」


「大丈夫だよー。優美ちゃんもばっちり決まってるって」


「な、ならまあいいが」


なんかもじもじしてる優美である。

そしてそんな三人を見つめる唯一の男が一人。


「千夏さん本当にどんな格好でも似あう…」


「そう?ありがとー」


「ちょっと写真とってもいいっすか」


「え?うんいいよー。あ、でもあとで私にも写真頂戴」


「了解っす」


ぱしゃりとケータイで写真を撮る茂光。

千夏の方も軽くポーズっぽいものとってノリノリである。


「どうせだし優美ちゃんも」


「俺はいいよ。後で写真見て顔から火噴きそうだ」


「そんな優美ちゃんが見たいし」


「ひでえなおい」


文句言いつつ写真に参戦する優美。

こっちはポーズとかはしてない。

というか何したらいいのか分からんが本音である。


「というかどうせとるなら全員でとりゃよくねえか」


「あ、そうだねそうしようか」


「茂光。そのケータイカメラってタイマーセットできるか」


「ん、いや、分からん」


「分からんってなんだそれ」


「携帯の機能よく知らん」


「…ったく、ちょっと貸せ」


茂光の携帯を奪い取りカメラ設定をいじる優美。


「…よしできるね。じゃあみんなそこならんで」


「優美ちゃんって機械強い?」


「そんなに。一通りは触れるがね」


と言っても携帯とPCくらいなものであるが。


「じゃあ今から十秒後に撮るぞー。いいかー」


ピピピっとタイマーをつけて急いで並ぶ優美。


「…なんかやっぱ並ぶと俺ちいせえ」


「実感わきますか」


「わりとな」


パシャリとシャッターがおりた。


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