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学園祭3

学園祭回終了

その後しばらく1-2に滞在した優美。


「…さてと、そろそろ行くかね」


あんまり長居してはあれなのでそろそろ退散する事にする。


「ありがとうございましたー!」


1-2の生徒であろう人のそんな声に後ろを向いたまま手を振って答えつつ、部屋から出て行った優美。


「さて、あいつが暇になるまで暇つぶししますかね」


適当に校内をウロウロして、これまた適当に教室を選んでは入って適当に楽しんでを繰り返している。

本当に入りたいのは後回しという訳だ。

そういうのは千夏と回りたいのである。

なんだかんだ言って優美は千夏が好きである。


「むふふ、食い物オッケーだと色々あるからいいよね」


前に優美が居た学校は食べ物関係をやるのは禁止であった。

優美的には初めての事なのである。


「さてと、とりあえず飯だけ食っとくか。腹減ったし」


適当な座れる場所に座って弁当を食べる優美。

なお当初はコンビニ弁当を持ってくる予定だったが、千夏が作ってくれたのでそっちを持ってきた。


「むう、俺も多少は料理出来るようにした方がいいのか」


千夏の料理レパートリーは結構多い。

毎日作ってくれるが、飽きることはない。


「…やっぱいいや。めんでえ」


結局自己完結する優美であった。

その後約束通り相変わらず人まみれの教室前で千夏を待つ優美。


「…遅いな」


「ごめん待った?」


「お、やっと来た。どしたし」


「ちょっと仕事手伝ってた」


「そうかい。まあそのまま居座らなかっただけよしとしよう」


「流石に約束したのに来ないなんてことはしないよ」


千夏は頼み事されると断れない性質である。

かつてはそのせいで学園祭の際に教室から出れなかったりしたとか。


「それで、仕事は終わりか?」


「うん。もうおしまい」


「そうか。じゃあもう時間は気にしなくていいな」


「と言っても4時にはお客さんは退場だけど」


「分かってら。だからはよ行こや」


「そうだね」


ちなみに二人が一緒に学園祭を回るのは、初めてである。

こっちに来てからで考えれば当然と思われそうだが、こっちに来る前ですら一緒に回ったことはなかった。

なにせ学校が違ったのだ。

しかも学園祭の日は同じときた。

一緒に回るなんて出来るはずが無かったのだ。

なので二人ともわりとノリノリである。


「それにしても」


「うん」


「こんなとこでメイド服見るとは思ってなかったぞ」


「私も思ってなかった」


「別にメイド喫茶でもねえしな」


「でもみんながこっちの方がウケがいいから!って感じだったので」


「ノったのか」


「ノリました」


「それで、やったのか。あれ」


「あれって?」


「あれだ。メイドと言えばの定型句」


「何それ」


「お帰りなさいませご主人様って」


「あーそれは無理だった」


「なんだ。やらなかったのか」


「流石に羞恥心的に無理だったよ」


「じゃあ今やってみそ」


「えー…お、お、やっぱ無理。それを言うことを体が拒否してる。口がギューって塞がれてる」


「なんだ。普通に言える俺は羞恥心が死んでるのか」


「恥ずかしくない?」


「ネタならまあ」


「大丈夫なんですか」


「お帰りなさいませご主人様!」


「言っちゃってるよこの人」


「大丈夫だ問題ない」


なお今の声が聞こえた人がほとんど全員優美の方を向いたが、本人は気づいていない。

自覚症状なしも考えものだ。


「それでどこ行くんです」


「行くなら当然これ」


「お化け屋敷ですか」


「定番だよね」


「そだね。というか本当にお化け屋敷は好きなのね」


「昔は入り口の所の耳なし芳一でびびったもんだがね」


妖怪の類は優美は大好きである。

幽霊も好きである。

ただし現実で出会うのは除く。


「学校のお化け屋敷って結構怖いんだよね」


「そうなの?」


「そうだったよ。そうじゃなかった?」


「私が前行ってた学校は真っ暗禁止だったから、あんまり」


「あーそれは確かに怖くなさそう。真っ暗ってだけでも怖さ激増するしね」


「そんなもんなのかな」


「ここの学校はそこんところどうなのよ」


「基本的にお金以外の制限はなかったよ」


「じゃあきっと真っ暗ね。というか行く気満々だったけど、お前行きたいところは?」


「特には」


「じゃあ行くでお」


というわけで歩き出す二人。

向かう先は3-4である。

入り組んでいてよく分からんので、千夏に先導してもらう。


「そういやさ」


「うん」


「さっき妹に間違えられた」


「仕方ない幼女だもの」


「気の強い妹だとよ」


「まあ私ほんわかしてるし基本」


「そんなに俺気強いわけでもないと思うんだがなあ」


「でも喋り方がなんか上から目線っぽい」


「そうか?全然意図してないが」


「なんだろ。不快になるとかそういうのじゃないんだけどね。でもなんか上からっぽい」


「だが妹認定からは逃れられず」


「しかたないね」


そんな会話しながら歩いていたら目的地に着く二人。


「うんうん、これこれ。中見えない真っ暗な感じよね」


窓は黒い厚紙やら新聞やらで覆い尽くされて中は見えない。

偶に絶叫が響いてくるあたり結構怖いらしい。


「だいぶ並んでるね」


「こういうとこは結構回るの早いからだいじょぶだいじょぶ」


実際十分足らずで二人の番が来た。

説明係の説明を受けて、ライトを貸してもらって中に入る。


「うわ、本当に真っ暗。なんにも見えないや」


「むう、明かりつけても微かにしか見えんぞ。ある意味あるのかこれ」


手にした明かりは明かりと言うには心もとなさすぎた。

ぼんやりどころか光ってることが一応分かるとかそういうレベルである。

周りを照らす能力とか皆無である。

雰囲気づくり、ということなのだろうか。


「優美ちゃん歩くの遅いよ」


「馬鹿。こういうのはじっくりゆっくり歩いていくべきだろ。そっちの方が楽しいし」


「さっきから怖いというより優美ちゃんにつっかえてこけそうでそっちの方が怖いんだけど」


足元にも段ボールが敷き詰められているせいでかなり足場は悪い。

よくずっこける千夏にとってのこれは死活問題であった。


「とにかく道中でお花つんで、出口付近の墓にお供えすればいいんだな」


「そう言ってたね」


「じゃあ探すぞ」


「一本道だけどね」


「こういうのって意外と見落とすのよ」


「そういうもんなの?」


「ああ、少なくとも前こういうとこ来たときは見落としかけた…ぎゃああ!」


「ひゃう!?」


ぺちゃりという音と共に絶叫する二人。


「…こんにゃくじゃねえか!」


「おお、昔ながらの」


「くやしい。でもびびっちゃう」


「優美ちゃんの声で驚いた」


「当たったの俺だしな。というかこんにゃくって本当に感触気色悪い」


「なんかぺしゃって音したよ。ぺしゃって」


「十七年くらい生きてるけどこんにゃくにぶち当たったの初だわ」


その後も絶叫が続いた。


「ぎゃあああ!」


「うっ!な、なに、なに」


「な、なんかおった。そこ、そこ」


まあだいたいが優美が叫んで千夏がその声にビビるという場合がほとんどであったのだが。


「むふー。楽しかったでお」


「優美ちゃんの絶叫が一番怖かったよ」


「だって驚くじゃんいきなり出ると」


「いや、驚いたけど。驚いたけど優美ちゃんの声に驚く方が先で基本的に」


「あんだけ叫べば宣伝になると思うんだよね」


「宣伝だったんですか」


「いや、マジの絶叫」


「普通だった」


「昔っからこういう場所入るとこうなるっていうね」


「それじゃ次行く?」


「せやな。ん、その前にちとトイレ」


「いってらー。ここにいるから」


「おけー」


というわけでトイレに向かう優美。


「…女子トイレだよな。そういや」


優美は外に出ない上に、たとえ出たとしても外で用を足すことも無かったので、

明確に男女に分けられたトイレを使用するのは初めてであったりする。


「…ふむ。小便器がねえ。当然か」


そのまま個室の一つに入る優美。


「…謎の罪悪感が浮かぶなこれ」


女子トイレに忍び込んだ気分になる優美であった。


「おもたせ」


「お帰りー」


「つーわけでいきませう」


「そうだね。いこうか」


その後5、6個回ったところで時間が来た。


「じゃあ俺は先に帰るお」


「うん、またあとで」


「そういや帰るのいつになる?」


「後夜祭やってくるからだいぶ遅くなるかな」


「そうか。んじゃませいぜい楽しんで来いよ」


「うん」


「んじゃ」


そうして一人さみしく帰路につく優美。

茜色の空の時間帯へと時刻が回る。


「…良い時間だ」


オレンジに染まった空の下をポニテを揺らしつつ帰還した優美。

神社で遊ぶ子供たちを横目に部屋へと戻る。


「むぐ…疲れた。イベント系は楽しいけど疲れるぜ」


イベントは嫌いではないがあんまりいかない優美である。


「さてと、お掃除しようかな」


巫女服へと着替えて外掃除兼子供の見守りをすることにする優美。

イベントは終わりを告げていつもの日常へと戻っていく。


「まあ、たまにはこういうのも良いもんよな」


掃除しながら優美が呟いた。


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