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学園祭2

2部で納まらず3部構成に…

「むう、クラス場所が分からん。聞くか」


とりあえず校内をウロウロし始める優美。

が、校内の構造も複雑だったのでぶっちゃけ迷っていた。


「なんか適当にいねえかな。暇そうなやつ」


大体の人間が呼び込み等々で忙しそうである。

そういう人に声をかけるのは少々気がひける。


「おっと。男子の集団発見。聞いてみよ」


歩いている集団を見つける。

見て回っている最中だろう。

急ぐ様子はないので話しかけても問題なさそうである。


「あのーすいません」


「つーかテス勉してねえヤヴァスw」


「あのー!」


「うおっと、え、俺?」


「えーとはい。そうです」


「え、えっと、なんでしょか?」


「あの、千夏…あー藍澤千夏って知ってますか?」


「あ、転入生の。知ってる知ってる」


「その子のクラス教えてくれませんか?迷っちゃいまして」


「クラスか…1の…なああの子何組だったけ?」


「確か2組じゃね」


「1-2らしいよ。間違ってたらスンマセン」


「いえ、ありがとうございました」


その場を後にする優美。

クラス自体は学年毎にかたまっているので、クラスさえ聞いてしまえば探すのは可能である。


「今の子可愛くなかった?」


「お、なにロリコンに目覚めたか」


「いやそういうわけじゃねえから」


会話した男子の集団の方から声がしたが無視である。

というかなんか聞き慣れてきた感も拭いきれない優美である。


「1-2…ここか。人多いなおい」


ズラーである。

待ちまくりである。

長蛇の列であった。


「…まあ、いいか。どうせ午前で回る予定あるのってここだけだし」


素直に列の最後尾に並ぶ優美。

横入りとか出来る勇気はない。


「…午前中に間に合うかしら。間に合わねえと意味ねえんだが」


暇つぶし道具もないのでぶつくさ呟く優美。


「あれ?優美さん?」


「む」


後ろに振り返れば何処ぞで見たような顔。

以前神社に訪問してきた川口佳苗であった。


「ええと、川口さんでしたか?」


「あ、はい。そうです。来てくれてたんですか」


「ええまあ。千夏に呼ばれたんで」


そこまで話してどうしても敬語での会話が違和感におぼえる優美。


「あの、敬語辞めません?前も言った通り同い年ですし」


「あー…確かに。えーっとそれじゃあ、こんな感じでいいのかな?改めてよろしく優美ちゃん!」


「うん。よろしく川口」


「おおう、まさかの呼び捨て」


「ん?嫌?んなら変えっけど」


「いやいいよ別にー。というか優美ちゃん喋り方そっちのが素?」


「んーまあ俺はもとはこっちかな」


「俺!?俺っ子だったんだ…」


「幻滅か」


「いやそんなことないよー。驚いただけ。というか本当にいるんだねえ俺っ子」


「いましたねえこんなとこに」


まあ元が元なので当然ではあるのだが。


「ん、後さ、この、列ってどれくらいかかりそう?」


「んー、どうだろ。人数多いからなあ…でも回転早いからそんなにかからないと思うよ」


「そっか。あんがと」


「気にしないで―。っと、呼び込みしなきゃ。さぼりだと思われちゃう」


「ん、それじゃまた」


「またねー」


佳苗と別れる優美。


「…女子とまともに会話したのすげー久々な気がする」


優美は女子との付き合いはかなり少なかった人間である。

話せないわけではないが自分から話に行こうとか思ったことは無い。

なお当然彼女もいたためしはない。


「っと、動き出したか」


列がズズズと前に動いていく。

佳苗の言っていた通り一度に結構な人数が交代していく。

数十分以内に入れそうである。


「…じゃあまあゆっくり待つかね」


それからしばらくたった。


「次の方どうぞー」


「あー、やっと入れるわ」


なんだかんだいいつつもやっぱ三十分くらいは待った優美。

優美は待つのがかなり嫌いである。


「おお、意外とマジだった。高校のってこうだからおもしろいよね」


入ってみた感想である。

内装はわりとしっかりしていた。


「いらっしゃいまー…あ」


「お、見知った顔発見」


斉藤茂光であった。

千夏が好きでストーカーしちゃった例の人であった。


「な、何故ここに」


「そうビビんなよ。だれもチクリに来たわけじゃねえから」


茂光はでかい。

大柄である。

だがかなりびくついている。


「とりあえず席案内頼むよ。どこ行きゃいいのさ」


「…ええと、こっちっす」


茂光についていく優美。

だいぶ奥の方の席であった。


「繁盛してんな」


「…だいたいは千夏さんのおかげだ」


「見てくれはいいからね」


「中身もだろ」


「…そういや恋する男子だったっけか。玉砕したんじゃねえのかよ」


「友達から今度こそ千夏さんの恋人になってやるのさ」


「よくやるわ。まあせいぜいがんばれや」


千夏がまだ男子と付き合う覚悟が無いのは言わない方がよさそうであった。

茂光の心が粉砕しかねない。

言わないのもなかなか酷かもしれないが。


「そういやあいつどこにいるの」


「今は裏方作業やってくれてるよ。いかんせん人手がかなり足りなくて」


「まあ、仮にも喫茶店だしな。作る人間いるよね」


「千夏さんが女子力高くて助かった。本当に。このクラス全然作れる人いなくて」


「まあ無駄にあいつスキル高えからな」


「いいことじゃないか。女子力高い女子って」


「まあ今はそれでも違和感はねえわな」


「今は…?」


「ああ、こっちの話。気にするな」


千夏の料理スキルやら洗濯スキルやらはこっちに来てから身につけたものではない。

来る前から身についていたものである。

身につけようと思わずに自然と身についていたというからなかなかのものである。

まあ男子であれそういうのができるのはいいことであるので特に問題あるわけではないが。


「ふうん。あいつのことだから絶対ウェイトレスやってると思ったんだがな」


「最初はその予定だったんだ」


「でも人手不足だったと」


「そういうこと」


「あいつの見た目が活かされてないがいいのか」


「千夏さんが作ってるって公表するだけでも人が集まる集まる」


「どんだけ有名なんだよあいつ」


「とりあえず男子の間じゃだいたい知られてると思う」


「…可愛いは正義だな」


「分かってくれるとは」


「同類だかんな」


「優美ちゃんも可愛い子好きな感じ?」


「ん、まあせやね。というかなんか急にフランクになってねえかお前。さっきまでびくついてたくせに」


「なんか話してると男子と会話してる感じがして」


「そうかよ。まあ俺もそれで構わんけど。というか名前教えたか?」


「千夏さん経由で」


「なるね。話してんのね。というかあいつはさんづけなのに俺はちゃんなのね」


「え、だって千夏さんの妹さんじゃ?」


「ちげえ。断じてちげえから。俺とあいつは同い年。で、たぶんおめえらとも同い年。年下じゃねえぞ」


「え、前会った時から気の強い妹さんなのかなと」


「違います。あいつに妹はいねえ」


と言っても見た目があれなので説得力皆無なのだが。


「というかお前俺と駄弁ってていいのかよ。仕事しろよ仕事」


「あ、そうだった」


「何しとんじゃ」


「話に乗ってた」


「仕事せんかいこの怠けもんめが」


「それではご注文は」


「ん…ココアと…せやね、ショートケーキでも貰うかね」


「お、不人気率がかなり高めのそれを選んでくれるとは」


「ん、不味いの?」


「いや、それは千夏さんが作ったわけじゃないから。というかここだけの話買ってきたやつだから」


「成程な。というか本当にみんな千夏目当てかよ。大人気だなおい」


「非公認ファンクラブあるし」


「あるのかよ」


なかなか学校に影響を与えまくっていた千夏であった。

そして茂光が注文をとって一旦奥に引っ込んでからしばらくした時である。

おーという歓声に近い声が来ていた男子連中から上がる。

奥を見ると千夏がいた。メイド服で。


「ぶっ。ちょ。マジか」


男子からのうけは良いようである。

それを見た優美は思いっきり笑いたいのをこらえているが。

なお似合ってないわけではない。むしろそこは全く無問題である。


「ご注文の品でーす」


「くく…まさかそれ着て今までやってたのか」


「そうだよ。なんか朝来たら全員に無理やり着替えさせられた」


「とかいいつつ結構ノリノリだっただろお前」


「ばれますか」


「ばれますとも。お前との付き合い何年だと思ってやがる」


ちなみに今年で六年目である。


「そういや後で一緒に回るんだろ。どこで待ってればいい」


「あーっとじゃあ教室の前で待っててくれる?」


「ん、了解。とりあえず今は忙しそうだしまたあとでじっくり話聞かせてくれや」


「分かった」


「あんなことやらそんなことまでな」


「一体何を話せと言うんですか」


「ん、何、着心地?」


「着たいの?」


「そういうんじゃないですがね」


談笑しているだけで男子の目線をいやがおうにも集めていることに気付かない二人であった。

優美も千夏も美少女であるが故。

二人合わさって最強に見えるとかいう状況であった。


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