中の人
お久しぶりです。
2031年12月のお話。
夢ブレイカーな話なので一応注意。
「うわぁ…人めっちゃいるし…やだなぁ…」
ぼそりとそんなことを呟くスーパーのおもちゃコーナー前のポニテ少女が一人。
「あー…嫌だ人混みは嫌いなんだよなあ昔から…はー」
ぶつぶつ言いながらもその中に歩を進めるのは
まあだいたいお察しお近くの神社から徒歩で歩いてきた優美である。
「えーっとうちの小さいのが御所望なのが…」
携帯のメモ帳をチラ見しながら奥の方へと歩みを進める優美。
流石に幼女に見間違えられることこそ無くなったが、まだまだその風貌は少女で通りそうであり、
こんなでも二児の母親だったりする風には見えない。
というかそれ以前に男であったりもしたが、まあ二桁年以上女をやってればもう些細な問題である。
「…ここら辺か?最近のおもちゃは分からんな」
相変わらずぶつくさ言いながらおもちゃコーナーを物色する優美。
断じて優美がおもちゃを欲しているわけではない。
流石に年的に考えてももうそういうラインではない。
偶に子供と一緒に遊ぶことはあるが。
「…はーサンタも楽じゃねえな」
優美がこんな場所に昼間からいるのには当然理由がある。
というか理由がなければ来ない。
伊達にこたつむりをやっていたわけではないのだ。
「あれ?優美ちゃん?」
「ん?あれ?千夏?」
「やっほーお久ー」
「いやそう久しぶりでもないだろ…」
突然後ろから声をかけられて振り向けば
とてつもなく見知った顔一人。
千夏であった。
「優美ちゃんがこんな寒い中に外出なんて珍しいね。雪降りそう」
「いや実際に降ってるけど。俺とて外に出ないといけない用くらいあるわい」
「え、でもなんでここに?」
「いや、クリスマスプレゼント買いに」
「あーそろそろだもんね」
「そーだよ。サンタの存在が発生し始める時期だよ」
今は12月。
ついでに優美の子供の結衣が3歳になっている時期でもある。
「藤也くんは?」
「とりあえず翔也に任せてある」
「えでも何かあったら不味くない?」
「一緒に来てはいるよ。今はここじゃないところで待ってる。藤也も既に1歳だからな。下手に買ってるの見られると2年後ぐらいにサンタの存在を信じられなくなるかもしれん」
「というか翔也君いるの?平日だけど」
「休みなんだってさ。というか取ってくれたらしい」
「あーそういう。で結衣ちゃんは?」
「結衣は幼稚園」
「あ、そっか」
「そういうこと。で、そういうお前は?」
「私?私も同じ理由だよ?まさか優美ちゃんとかぶるとは思ってなかったけど」
「お前のとこだいぶ前からやってんだろ?結構大変だなこれ」
「まーもう数年続ければ慣れてきたよね。特に今はもう二人とも学校だから昔よりも楽」
「そうかーそうだよなあ」
「こっから毎年だぞー頑張れー」
「頑張るー。とりあえず目的の物見つけねーと」
「何お願いされてるの?」
「なんかね。これ。朝アニメの奴」
「それならこっちじゃない?」
「おーさすが頼りになるわあ」
「伊達に毎年やってないよ。グッズ系でしょ?」
「そーそーそれそれ。近場のスーパー置いて無くてな」
「いつも行くとこ?」
「そこ」
「あそこすぐ売り切れるからねえ。私もサンタ初心者の時は探すの苦労したよ」
「サンタ初心者とかいうワード感。謎いな。今は?」
「どうだろ。サンタ熟練者?」
「サンタは熟練するもの」
「サンタの達人とかになるのかな」
「どこぞの太鼓ゲームみたいな響きになってんぞ」
人混みの中を進む二人。
「ちょー待ってー」
「優美ちゃん人の波もっとうまく避けてよ」
「俺はそもそも人混みの中にあんまり入らないから慣れてねえんだよ!」
「体小さいから回避できそうなのに」
「小さい言うな。そもそも大小関係なしに人混みやばすぎるだろ」
「時期が時期だしねえ」
「こんな時期にこういうコーナーに来るのが久しぶりすぎてやばい」
「今までどうしてたの?」
「まだ二人小さかったし人少ないときに来てたよねこういうとこは」
「そういう?」
「俺が人混み苦手なのもある」
「そっちが7割くらいありそう」
「よく分かったな」
「そりゃ今の話の流れと今までの行動知ってればね?」
「だから混んでる時に来るのひっさびさ。俺が小学生の時以来?」
「前過ぎるってば。これから毎年になるんだし慣れるべき」
「はー頭痛いわ。でもプレゼントのないサンタとか悲しすぎるから仕方ない頑張るか」
「頑張れママさん」
そうしてなんとか目的の物を手に入れてそこを脱出した二人。
「はーもともと買い物好きじゃないけどさ。どっと疲れたよね」
「いまだに買い物好きにはならないのね」
「無理。特に他人の。すんげえ退屈」
「変わってなかった」
「変わるわけないだろ。俺だぞ」
「いやだいぶこうなんか女の子にはなったかなとか思ってたから。家事とかしてるしちゃんと割と」
「もう子の付く年じゃないのがあれだけどな。あと家事に関してはやらないと家でやるやついねえから」
「翔也君できそうだけど」
「できるんじゃね?まあでもあいつ仕事あるしさすがに任せてられねえよ」
「なんだかんだ翔也君には優しいよね」
「仮にも結婚した仲だしなあ…」
そのまま歩きながら翔也が待ってるらしい場所へと向かう二人。
「そういや茂光ってまた子供の前でサンタのふりやってんの?」
「何回かやってもらってるよ?意外と好評」
「そうなのか。適当にネットで見たから教えただけなんだが」
「まあおかげで和弘に至っては完全に信じてるわけじゃないけど信じてないわけでもないってラインで落ち着いてるから、まあよかったと思ってる」
「さすがに高学年にもなりゃ勝手に気づいてくるもんな。まあ完全に無いと思ってないだけましか」
「そういえば優美ちゃん隠し場所大丈夫なの?私結構毎年苦労してたんだけど」
「え、なんかお前の家広いから苦労する要素ない気がするんだけど」
「それがね?和弘が一番サンタを疑ってた時に家じゅう捜索したことがあってから下手に倉庫とか置けなくなっちゃって…」
「それ結局どうしたのさ」
「車のトランクに入れといたよね」
「ああ車か。その手があるか」
「しげちゃんにあの時ばかりはほんとに感謝だったよ」
「結局いまだに俺ら免許すらとってないもんな」
「で、優美ちゃん大丈夫なの?」
「あのクソ広い家に隠せないとお思いで?」
「まあ…隠し場所だらけではあるよね」
「最悪絶対分からん場所あるしな」
「どこ?」
「神社の本殿の中」
「おい巫女」
「いざとなったら神頼みってね」




