学園祭1
3部構成。
冒頭部なので短め。
「むう、学園祭、とな」
「そうそう」
神社内でのとある日である。
チラシっぽいものを優美に見せる千夏がいた。
「お前の学校かえ?」
「そだよ」
「最近部活なくても帰りおせえとか思ってたらこれだったか」
「居残りで準備ナウなのです」
「で、これを俺に見せるということは」
「来てほしいということです」
「…まあ、いいよ。暇だし」
「あれ?」
「あれとはなんぞ」
「いや、もっと渋るかなと思ったけど」
「別に渋る理由もない」
「引きこもりじゃん」
「外に出る理由がないだけだ」
「じゃあ来てくれるの?」
「行ってもいい。特に予定が入ったりしなければ」
「そう。よかった」
チラシの内容に目を通す優美。
「しっかし、簡易的な内容しか書いてないな。いつ開催するかくらいしか分からんではないか」
「まあそれチラシだからね。しおりみたいなのもあるよ」
「あるんかい。そっち見せてよ」
「それがまだ制作が終わってないらしく」
「作るの遅いよ。もう一週間くらいしかないのに」
「まあ私作ってないから知らないけど」
「うんまあ…とりあえず日にちだけメモっとくか」
カレンダーにその日を書き加える優美。
書いておかねば忘れそうなので。
「しっかし学祭か。なつい」
「といっても前学祭があってからそうたってるわけでもないんだけどね」
「いやなんかいろいろあったから少し前のことでも古く感じるとかいうあれよ」
「そんなになんかあったっけ?」
「女になるとか」
「ああ」
「ああってもうなんか忘れかけてないかお前」
「ちょっと」
「おい」
そのままチラシを机に置く優美。
「というか本当にこれ見ても学校の場所と時間しか分からんな」
「まあチラシだからね」
「お前らなにやるん」
「喫茶店っぽいの」
「そうか。食い物オッケーなのか」
「うん。問題ないってさ」
「へえ。金持ってかにゃいかんな」
「まあそこは割り切ってください」
「別にそこまでけち臭かねえよ」
「それで、私午前中だけでお仕事終わるはずだから」
「おう」
「午後から回ろう。一緒に」
「構わんが」
「じゃあそういうことで」
「ん、というか自由に出入りしていい感じ?」
「一応入場するときに手続きいるはずだけど自由だったと思う」
「ん。じゃあ行くわ」
それで当日。
千夏はいつもの時間に学校へと出て行っている。
それから1時間後くらいに優美も外に出た。
「…前出た時よりさみいし。そろそろマジの冬かな」
季節的には少し前からわりとマジの冬になりかけている。
「えーとあいつの学校はっと」
チラシを見ながら進んでいく優美。
「結構遠い…あいつ数十分で着くって行ってたけど、なんだ。走ってんのか?」
優美の歩みはかなり遅めである。
走ってないのもあるが、歩幅がだいぶ小さい。
単純に大きく足を開くのが嫌なだけである。
「…歩いて高校行くのって変な感じね」
優美の元々の高校は地下鉄通学であった。
別に遠かったわけではない。むしろ近い方である。
ご近所に高校が数えるほどしかなかっただけである。
ちなみに千夏は自転車通学であった。
「…あいつ自転車買った方がよくないか。これ遠いぞ普通に」
まだつかないのである。
三十分は経った気がする。
「…まだ二十分か。体内時計がいかれてら」
だがなんだかんだ言っても学校にたどり着いたのは三十分くらい経過した後であった。
本格的に自転車買った方がいいんじゃないかと検討し始める優美である。
「…へーこんな学校なんだ」
校門の前にやってきた優美。
入学の際に色々やったのは優美ではあるのだが、
あっさり行き過ぎて学校に来てすらいなかったのである。
事実校門を見たのも初であった。
「…なんつーか校舎意外とぼろいのね。年代ものかしら」
なお学校の歴史的には三十年くらいらしい。
優美の記憶からはすっかり抜け落ちていたが。
「…まーとりあえず行きますかね。時間も押してますしおすし」
入場手続きを適当に済ませて中に消えていく優美。
「…そういやあいつのクラスどこか聞くの忘れた…」
締めがなってない優美であった。




