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関係性

2027年8月のお話。

「…」


夏の昼下がり。

神社の裏の家の中に翔也が一人。


「…」


優美は今は買い物中である。

基本神社に引きこもりっぱなしの優美だが、千夏がいない今はこんな感じで普通に買い物とかに赴くこともあるわけで。


「…」


つまり今は家に翔也一人というわけである。

部屋でなにやら薄っぺらい本片手にごそついていてもそれに言及する人物はいない…はずだった。


「翔也ー入るよー」


「え!優美!?ちょ、まっ…」


無情にも静止の隙すら与えられず横にスライドする扉。

というかなんでこんなに早く帰ってきてるんだとか思わずにはいられない。


「…おう。ごめん。どうぞ続けて」


「…」


静かに横に閉まる扉。

翔也も男である。この家では結構な頻度で夜のそういう行為は行われているようだが、翔也の男はそれでも満足できていなかったようで。

まあ、つまるところ、何してたってナニしてたわけである。

で、今見られた。


「まま、待って!いや待たなくていいけど静かに去らないでええっ!?」


□□□□□□


「はいお茶」


「あ、ありがと」


「いや何をそんなに緊張してらっせる?」


「い、いや、さすがに僕も見られて平常心はきついよ…」


「そういうのは隠れてやりんしゃい」


「知ってる!隠れてたけど見つかったよ!というか扉を開けるまでにタイムラグが無さすぎなんだって!」


「確かに。だけど帰ってきたときにちゃんとただいまーって言ったぞ?」


「き、聞こえてなかった…」


「ほーう。それほどまでに熱中していらしたか」


「ご、ごめん」


「何を謝る必要がある」


「いや…優美いるのに」


「俺は一向に構わんというか、性欲ある人間なんてそんなもんじゃないの?気にしないよ?」


「ありがとう…でいいのかなこれ」


「さーね?で、何読んでたのさ」


「え!?今ので話終わりじゃ…」


「別に怒る気は無いけど、内容は気になる」


「そ、そっちの方が拷問だよ優美…」


「いやだって夫が何読んでそういうのやってるか気になるじゃん。さーさー持ってくるのです。というか翔也の部屋に行こうそうしよう。さすがに他の奴に見られたくないし」


配慮があるのかないのかよくわからない優美にさらわれるように部屋に赴く翔也。


「これ」


「…まーたマニアックっぽいの買ってんのな。というかほんとに巫女もの好きなのね?」


「そ、それに関しては優美のせい…」


「ほーそうかい。まあ俺も好きだから気持ちは分かる」


ぺらぺらと中身を読んでいく優美。


「…幼女みたいねこの娘」


「…えっと、うん」


「…男っぽい性格してんな」


「…そ、そうだね」


「…俺?」


「いやいやいやさすがにそれはないでしょそれは」


「にしては似過ぎだろ!ポニーテールまで一緒だぞ!どうなってやがる!というかさては翔也さーん、似てたから買いましたねえ?」


「そ、そこまで似てるとは知らなかったというか表紙見て買ったというかその」


「お?現実の俺じゃ足りんか?お?」


「そ、そういうことじゃないよ!優美のことは大好きだから!だけど最近ちょっと足りなかったというかその」


「…くく、なんだ翔也。足りねえってか?うれしーこと言ってくれるじゃあないですか」


というとスッと着ている巫女服に手をかける優美。


「え?ちょっと優美?優美さん何してるんです!?」


「まさか、んなこと言って今更怖気づいたとか言うなよー?覚悟決めろぉ!」


「ちょっと待ってぇ!気が!気が早すぎだからぁ!」


「おらぁ!とっととズボン脱げぇ!」


この後滅茶苦茶襲われた。


□□□□□□


「よーっす。来たぞー」


「いらっしゃーい」


数日後。

千夏の家を訪れた優美。


「お前の家来るのなんか久々だな」


「優美ちゃんの家に行くことは多いんだけどね」


「まあ俺が外に出たくないだけなんだが。暑いし」


「相変わらずですね」


「歩きたくないでござる」


「ついに動くことすらしたくないと」


「家でクーラーの中で昼過ぎまで寝て、ひたすらパソコンやって風呂入って寝る。これが最強」


二人が顔を合わせればどうでもいい話に花が咲くのはいつも通りである。


「そういえばこっちの家のお前の部屋入ったことないよな?」


「そうだっけ?」


「確か最初来た時にチラ見しただけだわ。見せてよ」


「いいけど、何にもないよ?」


「いやこうエロ本とか隠してあるかもしれないじゃん?」


「男子高校生か」


「冗談はさておき、ちょっと覗いてみたいだけさね」


「んー別にいいけど」


というわけで千夏の部屋へ。


「…ふーん」


「どしたの?」


「いや、あんまり変わらんなあと」


「そりゃどういう意味ですか」


「いや置いてあるものがさ。こう神社の家時代と大して変わってないなと」


「まあ使うものほとんど一緒だしね」


「そこのタンスの中は…聞くまでもないか」


「はい。服しか入ってないです」


「ですよねー」


部屋の中をぐるぐるしながら見て回る優美。


「お?これは?」


「…優美ちゃん目ざとくない?」


「明らかに本棚に一つだけ表紙がおかしいもんがありゃそりゃね?」


引っ張り出したのはそういう本である。薄い奴である。


「何々、やっぱこういうの読むん?」


「いや…読むというかぁ…」


「というか?」


「…その、書いてる」


「…ふぁ!?マジで!?」


「うん。絵の練習ずっとしてたでしょ」


「してたな。ペンタブあげたような記憶あるし」


「で、自分でもそれなりに納得いくラインになってきたから試しに書いてみようかなって」


「ほーほー」


「で、今普通に何個かネットとかで買える状態になってるってわけです」


「なるなる。ほへー。ついにお前の絵描きもここまで来たか」


「まあ大して収入とかあるわけじゃないけど買ってくれる人はいるみたいね」


「ほーん。で、内容は?やっぱエロなの?エロなの?」


「連呼しないでよ。…まあ、そうだけど」


「ほー。じゃあちょっと中身を拝見」


「え?読むの?」


「あかん?買った方がいいか?」


「いや別にいいけど…」


「じゃあ遠慮なく…」


ページをぱらぱらする優美。


「…幼女巫女男っぽい…これもしかしてモチーフは…」


「だからここで読むのって聞いたのに」


「いや内容知らんがな」


とそこまで読んで。


「…ん?」


「どうしたの?」


「いや…どこかでこれ見たような…」


「え?見たことあるの?」


「…っ!」


蘇る先日の家での出来事。

翔也とわちゃわちゃやった日の出来事である。


「…マジか」


「え?」


「あ、ああ…いや、なんでもない…」


結びつく関係性。

このことは墓場まで持っていこうと決めた優美である。



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