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見れなかったもの

2021年5月のお話。

「…うわあ」


「いや何その反応」


「いやね、服の倉庫と化してることは知ってたけどさ」


「うん」


「あふれてるなあと思ってさ」


「まあもう部屋としては使わないからねえ」


「足の踏み場はあるけどもう部屋一面服だらけね」


「タンスに入りきらない分を壁にひっかけたりしてたらこうなった」


神社の裏の家の一角。

かつて千夏の部屋であったそこは、今は服倉庫として大量の服が押し込まれる場所となっている。

今日は久しぶりに優美と千夏の二人でその部屋へと入ってきたのである。


「てか偶に処分してたよね?なんでまだこんなにあるのさね」


「え?いや捨てたのほとんどないよ?たまに入れ替えにくるけど」


「…たまに段ボール的なもの抱えて家に来てるの、あれ服か」


「私の家もそんなに服の置き場あるわけじゃないから…着なくなった服とか季節的に着れない服とか置いとくのにちょうどいいんだよねここ」


「たまるわけだ」


家が近いので、千夏も徒歩で気兼ねなく倉庫代わりに利用しているのである。


「で、なんだっけ?整理?」


「うんまあ、そうかな?とりあえず段ボールに詰めた状態でおいといたまんまの結構あるからさ。タンスの中に詰めてしまおうと思いまして。あ、欲しい服あったらあげてもいいよ?」


「お前のサイズに俺が収まるんかね?」


「分かんないけど。まあでも高校時代のやつとかもあるから、今の優美ちゃんに合うやつもあるかもよ?」


「今の私が高校時代のお前サイズという不具合」


「ま、まあさすがに中学生とかに見られることは無くなってるから…」


「未成年に見られることは普通にあるけどな!」


実際お酒を買いに行くとほとんど100パーセントの確率で、身分証明書の提示を求められるあたりお察しである。


「…おっと、これは」


「あーなつかしい。高校の」


「制服やな」


「別に着なくなってからそんなに長いこと経ってるわけじゃないんだけどね」


「まあでも卒業したら着ない物だからな。なつかしい感覚はあるんじゃない」


「まあね」


「俺は行ってないから知らんが」


「結局優美ちゃん行かなかったからね」


「行ってないけどなんか内情は知ってたが」


「まあ私が友達連れてくるし話すし」


「まあね」


「ただ優美ちゃんの制服ちょっと見たかった気もしなくもない」


「まあ、結局着る機会なんてなかったけどな」


「…」


「どうした」


「…着てみる?」


「は?」


「いやここにこうありますしちょうど」


「いや、いやいやなんでそうなる」


「え?いや見てみたいなあとはなんとなく思ってたからちょうどいいかなって」


「えぇ…そもそもサイズ合うんか」


「まあ多少大きいくらいならどうとでもなるでしょ。小さいと無理だけど」


「普通に着れそうなのがなあ…」


「私はちょっと今だと厳しいかも。あれからちょっと背も伸びてるし」


「出るとこはさらに出てるからな」


「まあ、うん。それも確かに」


「まあいいや。コスプレだなんだやっといて今更この程度で怖気づく必要もないだろ」


「まあね。ハロウィンとか毎回コスプレしてるしね。なんなら毎日巫女服だしね」


「あれは正装だから」


それでなんだかんだ言いながら着てみる優美。


「てかさ」


「うん」


「着てから思ったけど、他人の服着るってなかなか変態的だと思うの」


「いやまあ脱ぎたてとかじゃないから。洗ってるから」


「そういう問題じゃなくてだな」


「まあいいんじゃないですか。私がいいって言ってるんだし」


「そういうもんなんですかね」


「とりあえずね」


「うむ」


「可愛いと思うよ?」


「その反応にどう返せっちゅうねん」


「優美ちゃん高校生で十分通じるね」


「なんかね。変な感じ」


「変?何が?似合ってると思うけど」


「ああ、そうじゃなくてだな。女子の制服着てることに盛大な違和感がな」


「もうスカート穿き慣れたんじゃなかったっけ?」


「慣れたよ?ただ制服は初めてだからな。今までほかの人が着てるのしか見てなかったから、それを自分が着てると思うと変な感じ」


「成程」


「とりあえず鏡鏡と」


「はい」


優美の部屋にも全身鏡はあるが、千夏の部屋にも当然置いてあった。今も置きっぱなしである。


「ほー」


「ね?結構いい感じでしょ?」


「うむ、こういうポニテJKいたら最高だわ」


「だが自分だ」


「悲しいね」


「自分と付き合うことはできないからね」


「まあ今の見た目でやるとただの百合だけどそれ」


「まあ下半身の暴龍は現在家出中だしね」


「帰ってくる見込みは無いけどな」


「まあ今更帰ってこられても感あるけど」


「まあな」


「とりあえずJK優美ちゃん」


「JKつけんな。なんだ」


「一枚写メしていい?」


「写メるの?」


「貴重じゃん?」


「そりゃまあたぶん二度目は無いけどさ」


「撮らせて?保存しとくから」


「いいけど、あとで俺にもくれよ」


「え?ああ、いいよ」


「ポニテ美少女は目の保養になるからな。永久保存しとかにゃ」


「自分だよね?」


「気にしたら負け」


カシャと写メる千夏。


「ただ着といてあれなんだけどさ」


「うん」


「どうせならセーラー服がよかったなと」


「セーラーのが好みですか?」


「まあ、個人的には」


「ほー…じゃあ」


「じゃあ…何?」


「ここに実はセーラー服があるんじゃな」


「なんであるのさ」


「これはコスプレ用。本当の制服ってわけじゃあないよ」


「ほんとに色々ため込んでんだなお前」


「ふふー。服の種類だけはやったらいっぱいあるのですよ。で?着てみる?」


「いや今制服の方着たばっかりだし」


「もうちょい堪能する?」


「その言い方変態臭いんですがそれは」


なお優美の制服姿の写真は大した間もなく茂光、佳苗の目に届くことになる。

さらに数年した後に、後の優美の伴侶の目にも触れることになるが、またそれは別の話である。



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