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封印

2015年2月のお話。

「ったく、一回まともに掃除した方がいいとは思ってたが、なんでここはこんなにごちゃごちゃしとるんだ」


ぶつぶつ独り言を言いながら光がいまいち入らない外倉庫を掃除する優美。

千夏にあそこの掃除しなくて大丈夫なのかと突っ込まれて、初めてみたところ、恐ろしいほどのガラクタの山が優美の邪魔をしている状態である。


「…今更言える話じゃないとはいえ、本当にこの倉庫何ため込んでんだ…。俺らの前に住んでたやつはいったい何を考えてこいつらをしまい込んでいたのやら」


足の踏み場もないほどに床に所狭しと置かれた謎のガラクタたち。

そのガラクタの上にガラクタが積み重なり、それは早速形容しがたいほどに無茶苦茶な状態である。


「…ごみ、ごみ、これもごみ…これは…触らないでおくか」


偶に明らかな封がされているものがあるのでその手のものには触れないでおく。

下手に触ると呪われそうということらしい。


「優美ちゃーん?」


「ん、この声は…川口?」


手を止めて、家の方に戻ってみると縁側からダイレクトに中に侵入を図る佳苗の姿があった。


「ちょ、お前なにやってんの」


「あ、優美ちゃんこんなとこにいた」


「あのな、ダイレクトに不法侵入してんじゃねえ」


「いや呼びかけたらいっつも声するのに今日はしないから寝てるのかなって?」


「寝てたら猶更勝手に上がるのアウトだろうが」


「あわよくば優美ちゃんの寝顔をこうね?」


「こうってどうだ。というか俺が寝てるのは見たことあるだろう。何回か泊まってるわけだし」


今までで既に片手の指で収まらないほどにはお泊り会を開催しているこの場所。

空き部屋で全員で雑魚寝状態もやったことあるため、寝顔程度見られていてもおかしくない。


「いやー私寝るの早くて起きるの遅いから優美ちゃんの寝顔見たことないんだよねえ」


「だからってそれを見るためだけに不法侵入はやめーや。せめて玄関から入れ」


「あ、勝手に上がるのは許されるんだ」


「まあ川口ならいいかなと」


「やった言質とった!これで次回から入りたい放題!」


「やっぱ却下」


「待って待ってそんなことしないから却下はしないでお願いします」


「はいはい」


適当に受け流す優美。

まあもとより佳苗がそんな暴挙に出るとは考えてない。


「そういえば何やってたの?というかどこにいたの?」


「ああ…あれの中。千夏にな、あそこの掃除やってないよね言われたからやってたんだが…」


「見てもいい?」


「どうぞ?きたねえけど」


二人して倉庫に入る。


「うわ暗」


「あんまり日差し入らないんだよねここ。これでも窓解放したからマシにはなったけど」


「なんか…いろいろ置いてあるね」


「謎な物多数」


「見てもいい?」


「変なものには触るなよ」


暗い室内を見て回る佳苗。

その眼が一点に留まる。


「あれ、なんだろこれ」


「おい、あんま触るなと」


何かを引っ張り出す佳苗。


「なんだろこれ」


「…何、ケース?よくわからんが」


「開けていい?」


「…まあ、封印ないしいいんじゃない」


「封印とかあるの!?」


「そりゃまあ、なんかちらほらありますよ?呪われそうだし触ってないけど」


「え、開けるの怖くなってきた」


「なら開けようとするな」


「でも開ける」


「怖いとはいったい」


で、実際に開けてみる佳苗。


「…なんだろこれ、ボードゲームかな?」


「ほーん。何の?」


「すごろく?っぽい」


「ほーん」


「やってみる?」


「え、やんの?」


「だってせっかく見つけたんだし。なんか面白そう!」


「あー…なんかこんな展開からとんでも展開に巻き込まれた映画を俺は知っている気が…」


「え?」


「それから怪奇現象起きないよね?ジャングルに吹っ飛ばされたり、神社がツタだらけになったりしないよね?」


「何の話?」


「あ、通じませんかそうですか。…年代的に知ってる俺のがおかしいのか?」


生まれる前の映画をなぜか知ってる優美であった。


□□□□□□


「ただいまー」


「がああああ!ゴールできねえ!」


「ひゃい!」


千夏が買い物から帰ってきた途端に家に響く優美の声。

何事かと慌ててリビングに向かってみれば、見知った顔がもう一人。


「あああ!私またスタートに戻された!」


「なんでこうも戻るだの一回休みだのそれ系のマスが多いんだよ!クソゲーか!」


「むしろ普通に止まってられるマスがほぼないってどういうことなの」


「あれ?二人とも何してるの?」


「ん、あれ、千夏いつの間に」


「さっきただいまって言ったんだけど」


「ああ…すまん、熱中しすぎて気づかんかった。お帰り」


「それで、何してるの?」


「クソゲー」


「いや、クソゲーって優美ちゃん」


「でも実際これほんとにクソゲーなんだけど。なあ川口」


「ほんとほんと。すごろくなのに戻るマスだらけってひどくない?」


「すごろく?」


「そうそう。倉庫あるやん。あそこの中あさってたら出てきたのよ。で、たまたま川口来たからやってるってわけ」


「でもストレスたまるんだよねえこれ」


「やめればいいのに」


「いやもうなんかここまで来たらゴールしたい」


「なんか優美ちゃんよくわからないとこで謎の意地貼るよね」


「やり始めたら終わりまではやりたいあれよ」


「分からなくは無いけど」


既にゲーム初めて数十分。

そろそろ二人でやるのも飽きてきたところである。


「でだな。ここに予備の駒がまだ2個あるわけだ」


「やだよ。クソゲーなんでしょ?」


「クソゲーってのはな、みんなでやれば怖くないんだ。喋って暇つぶせるからな。というわけで強制参加ね。やれ」


「ひどくない?」


「まあ、本当にやることあるなら別にいいけど」


「まあ…無いけど」


「じゃあ決まりね。犠牲者一名入りまーす」


「これで屍になるときは一緒だね!ちなっち!」


「え、何、屍になるまでやる気?」


「闇のゲームの始まりだぜ!まあだいぶ前から始まってるけど」


「…優美ちゃんさ」


「なんだ千夏」


「ゲーム好きだよね」


「ゲームと名の付くものならなんでもござれ。さあこの駒をくれてやる」


「とりあえず荷物置いてきてからでいい?」


「ほいほい。ちゃんと来いよ」


「分かってるって。そもそもこの家逃げ場なんてないでしょ?」


「まあ横には広いが」


「隠れる場所とか無いから」


「まあね」


「…そういえば優美ちゃん、ちなっち」


「ん、どうした川口」


「いや、横に広いって言ってたけど、なんで二人の家こんなに大きいのかなって」


「…さぁ?」


「え?」


二人すら知らない謎であった。

なおボードゲーム自体が終わったのはそれからさらに一時間後である。



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